マイクロノベル集 340「草草草草」
No.1856
家の鍵がない。いつもバッグのここに入れているのに……そう考えているわね。わたし、人間の意思を読み取れる植物。いまリビングにいるの。鍵はテーブルの上よ。つまりあなたは、鍵をかけずに一日中出かけていたの。早く入ってきて。さすがに暑さが限界なの。
No.1857
草が風で揺れている。見た目はいいが、あれは熱波というやつだ。地球は狂っちまって、まともじゃなくなった。水は酸だし、土は毒を持つ。俺たちがまだ使えるのは火だけだ。この肉を外に〇．五秒、放り出せ。コンマ一秒間違えるなよ。消し炭になっちまう。
No.1858
これは木モドキ。普通の木と違って、こいつは内側が生きている。じゃあ外側はなにかって？ 樹皮みたいななにかだよ。でも、使い途がある。こうやって剥がして、お前がさっき転んで擦りむいた膝小僧に貼る。どうだ、痛みがなくなっただろ。早く治ると良いな。
No.1859
俺は別の宇宙からやってきたお前だ。あっちは日当たりがよくてな、お前より大きく成長したぜ。そう、つまり俺はお前だが、お前より強い。この場所を明け渡してもらおう。「は～、草むしりは腰に来る～」わーっ、変な歌を口ずさむ巨大生物が俺を引き抜く！
※noteだけで読める、このマイクロノベル集の続きはこちら。
この記事が参加している募集
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか？