マイクロノベル集 315「毛にまつわる話」
No.1721
奇妙な依頼人が現れた。「逃げたオレの髪を探してくれ」よほどひどい扱いをしたんだろう。だけど依頼は解決しなくちゃ。なあに、この名探偵の虫眼鏡から逃げられるものなどない。「ぎゃあ」あっ、依頼人の髪を焼いちゃった。臭い! 「それでも好きだ!」
No.1722
あの子、髪が動いてるよね? くねくねしてまるでメドゥーサみたい。髪型なんて、話す相手によってまるで別人みたいになる。特にアイツの前では気合いが違う。「今日も可愛いね!」ああ、そういうことね。んじゃあ、わたしの前ではリラックスしてるってことか。
No.1723
「お前はまだ幼い。わからないこと、迷うことがあれば、私に訊きなさい」そう言い聞かせたのが半年前なのに、お前の成長ぷりってすごいな。舐めるな。もう私の十倍はあるんだぞ。「ジョンはタマお姉ちゃんが大好きだもんねー」犬だとは知らなかったんだよ。
No.1724
夫はカッコよくてモテるから、呪いをかけておいたの。私を裏切った時、頭髪が減っていくように。こどもが生まれて、呪いが発動したわ。「よーし、肩車で保育園まで行くぞー」「デザート買ってきたよ」カッコよくないけどめちゃ優しいの。私はどうすれば……。
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