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マイクロノベル集 226「お世話になります」

No.1321
ご主人様がはじめてのおつかい? 心配だ。犬に噛まれないかな。「あれぇ、知らない道だ」大丈夫、このまま真っ直ぐだよ。戻っちゃダメ。GPS、オン! 「雨雲が近づいています」お天気アプリの音声に反応して犬がワンワン、ご主人様はUターン。計算どおり!


No.1322
「もっとちょうだい」学習データはさっきあげたでしょ。そんな目で見るなよ。その無垢なまなざしに負けて、街で写真を撮影してAIに与え続けた。人を。道を。建物を。「もっとちょうだい」ぼくは街を呑み込んだAIを連れて街を出る。次はもっと都会がいいかな。


No.1323
下界で天使として活動し、光熱費がかかると知った。あとコンビニデザートが美味しい。そして――。「下界には家賃というものがあるのです」大天使様、悪魔のアパートはないそうです。「悪魔の言葉に惑わされてはいけません」この反応……本当にタダなんだ。


No.1324
「カフェオレがとても美味しかったので、働きたいのです」バイト募集をかけたら天使が来た。言葉を濁しているが、天界の支給が少ないんだろう。本人は隠してるつもりなんだろうけど、輪っかが少し見えてる。あと、困ったことに、俺は身分を隠した悪魔なんだ。



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