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マイクロノベルちょいす 079「自由だねぇ」

No.1372
「ベランダに猫が来たから」彼女は洗濯物を取り込む。ふてくされた顔の黒猫が座っていた。「この子が来ると絶対に雨が降るんだよね。ミルクをあげて」人慣れしていて、撫でても大人しい。「早くミルクをあげて」あっ、遅かった。猫は洗濯物の山に飛び込む。


No.1377
ビニール袋がビル風に舞っている。あっちへふらふら、こっちへふらふら。なかなか落ちない。風と共に去らぬ。ははは、どこへ行こうというのかね? 「あのぉ、マルイデパートってどこですか?」礼儀正しい袋だなあ。どこの有料レジ袋なんだろう?


No.1398
くだらないわ、バレンタインなんて。お菓子屋が流行らせたイベントじゃない。そんな物で結ばれた赤い糸は全部噛みちぎってやる! 「ほう。赤い糸をたどり、よくぞ神の世界まで来たな」あら、イケメン。「チョコの酒があるが、飲むか?」ご一緒いたします。


No.1402
ぼくたちミニロボットのお仕事は、人間の指示通りにミニチュアを並べること。こっちに家を。あっちに自動販売機を。夕焼けもセットしてノスタルジックな感じに。はい、チーズ。え、自販機に隠れてピースしちゃダメ? じゃあ夕焼けの中でこっそりやる。


No.1406
ぼくは子供の頃から悩んでいたんだ。なぜヒーローは戦うのか。「そこに敵がいるからだ」「正義」「愛」「あなたのご命令とあらば」なるほど。ぼくはヒーローのおもちゃと悪党のおもちゃを別々にしまうための箱をお母さんに買ってもらった。大人だからね。



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