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Shiho & Yuki Relay Essay

週2回(月8回)、物書き女子・小澤志穂とユキガオのエッセイをお届けします。エモく、柔く、ぴりりと生きたい。
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2018年2月の記事一覧

凍てつく寒さも忘れて、ただそのときを待っていた

凍てつく寒さも忘れて、ただそのときを待っていた

2、3年前の大晦日。

私は旅仲間とすごく無謀な年越しを計画した。

年越しを愛知県の山にあるゲストハウスで過ごし、そこから車で3時間の海辺で初日の出を見よう!それから、フェリーに乗って伊勢神宮に初詣をするというものだった。

今考えれば、絶対にしないような旅。

その時は、なぜかこの人たちとなら楽しそうというわくわく感しかなかった。年越しの旅の計画を話すと、誰もが「え、本当にそれやるの?」とドン

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顔を上げれば涙はこぼれないんだって

顔を上げれば涙はこぼれないんだって

空を見上げると、やけに星がまぶしい。真っ黒な夜空に、オリオン座が大きく手足を広げて輝く。

頬も耳も痛い。そう感じるくらい、キンとよく冷えた日。空気が澄んでいるとこんなにも星が見えるのか、と少しだけ驚く。

「あぁ、上手くいかないなぁ。上手くいかない。なんでかなぁ」

誰もいない夜の駐車場に、私の声だけが響く。誰かに届けたいわけじゃない。心の中に収まりきれなかった思いが、声になって漏れた。

どう

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拾ってきた小さな命は儚くて

拾ってきた小さな命は儚くて

小学生の頃、いつも学校が終わるとランドセルを家に置いて一目散に遊びに行く公園があった。何の変哲もない、滑り台とブランコ、砂場があるステレオタイプの公園だ。

いつものように学校の友人と公園で待ち合わせをしていると、ミーミーというか細い鳴き声が聞こえて来た。声がする方に行くと薄汚れた段ボール箱の中に、子猫が数匹いた。まだ、目も開いていない、ちまっとした子猫。

いつからここにいるのかしら?母猫は?

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猫が大好きなんだとずっと思っていた。

猫が大好きなんだとずっと思っていた。

「犬派?猫派?」と聞かれたら、「ネコ派」と即答する。

◯◯派で分けてしまうことを無粋に感じる人もいる。それでも私は犬より猫の方が好きだし、それをごまかすつもりも隠すつもりもない。

もともと猫が好きだったけれど、その中でも特別に好きな猫がいた。私の心の中には、その猫がずっと住みついている。

私の腕の中でだんだん硬く冷たくなっていったあの子のことは、きっと一生忘れない。何度も名前を呼んだことも、

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失敗して、痛い思いをして上手くなる

失敗して、痛い思いをして上手くなる

スキー、スケート、スノーボード…私はウィンタースポーツが苦手だ。ウィンタースポーツというより、寒い冬が苦手なのだ。

中学にあがるまでは、家族で毎年冬に岐阜県や長野県のスキー場に出かけた。寒がりの私は、スキーウェアの隙間から雪が入り込むのが憂鬱だった。ソリで勢いよく坂を滑ったときは、顔面に雪化粧をして号泣したのが懐かしい。

大学生になると、冬はみんなスノーボードをしに行った。

なんで、板に足を

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白銀の世界で、恋に落ちる音を聞いた

白銀の世界で、恋に落ちる音を聞いた

「ゲレンデでは恋が芽生えやすい」

そんなことを最初に言ったのは誰だろう。

吊り橋効果ってやつだろうか?それとも、ウインタースポーツが上手い人はかっこよく見えるっていうゲレンデマジック?

とにかく、ゲレンデってやつは恋に落ちやすいシチュエーションらしい。

でもそれで恋に落ちちゃったりしたら単純明快すぎて、哺乳類どころかもはや単細胞生物なんじゃないかという疑惑が湧いてくる。

まるでDNAに「

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こっそり入れた手紙をあの人は、読んでくれたのだろうか

こっそり入れた手紙をあの人は、読んでくれたのだろうか

「元の友達に戻ろう、僕たち。」

名古屋の地下街にあるカフェはいつも混み合っていて、順番待ちのお客さんで列が通路に出ていることも多い。なかなか空席が見つからずカフェ難民になるのが日常茶飯事。

やっとの思いで席を見付けてひと息ついたところ。当時お付き合いをしていた人に突然切り出されたまさかの別れ話。

私は頭が真っ白になった。

え、今?

何て言ったの?

とても気まずそうな表情で目を合わせてく

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幸せそうなみんなの笑顔が苦しかった

幸せそうなみんなの笑顔が苦しかった

※今回のエッセイは、定期購読者以外でも無料で全文読むことができます。月8回のエッセイと別に、特別版として無料公開!

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結婚したい。

ていうか、結婚式を挙げたい。

純白のウエディングドレスを着て、厳かな雰囲気のチャペルでバージンロードを歩きたい。

お色直しではカラードレスって決めてるの。色は…ピンクもいいしオレンジも

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好きじゃなくてもいいから嫌いにならないで

好きじゃなくてもいいから嫌いにならないで

「あなたが他の人を好きでも、この気持ちはなくならない」

「私のこと、好きじゃなくてもいいから嫌いにならないでほしい」

好きです、の答えを聞くのが怖くて矢継ぎ早にそう伝えた。

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この言葉は私のオリジナルではない。当時流行っていたテレビドラマ『ストロベリー・オンザ・ショートケーキ』のセリフだ。

ドラマの中で深キョンが言ったそのセリフを、どう控えめに言っても冴えない中学生だった私は

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