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【鎌倉のカフェからワールドミュージックを発信】中世ヨーロッパ音楽 シンプルシステムフルートとファンタジー(2)

ザ・ムーンノーツ(The MoonNotes)というユニットは、実はレーベルが出来るだいぶ前から、メンバーや形を代えつつ活動していたユニットだ。

いわゆるケルト音楽という範疇の曲をテーマとして、あくまでシンプルシステムフルート(筒に6つの穴が開いた笛)とギターを中心とした器楽ユニットである。

レーベルが発足してからは、そのコア・メンバーである私、黒澤とギター&パーカッション、エンジニア、デザインとなんでもこなす、なかもとまさおの二人による、機動性に富み融通の利く、いわばレーベルの顔としての、代表的なユニットとして4枚のアルバムをリリースし、数々の現場をこなしてきた。


実は、元来中世ヨーロッパ音楽を専門として来た私にとっては、ケルト音楽はいわばライフワークともいえる分野なのだ。

そもそも、ケルトとは同一の言語体系に属する話者たちによる文化圏を示すもので、民族でもなければ単一の文化でもないので、人々には伝えにくいこと、この上ない。

西ヨーロッパの先住民であったといわれる彼らは、やがて古代ローマ帝国によって追い散らされ、ヨーロッパ西端の一部地域にその文化を留めるほどに衰退することになる。現在ではアイルランド、スコットランド、ウエールズ、マン島、ブルターニュ等の地域でゲール語族の言語が使用され、音楽をはじめとする独自の文化が大切に守られている。

中でも、アイリッシュ音楽は日本でも人気が高く、高揚感を伴うダンスチューンや独特の音色が印象的なバグパイプなどでよく知られている。
それゆえに、ケルト=アイリッシュ音楽と捉えられることも多く、私がケルト音楽のレクチャーコンサートやアルバム制作等を行うモチベーションにもなっている。

実は、アイルランド人やスコットランド人には歴史的にも移民が多く、ヨーロッパ西端以外にも、世界のさまざまな場所でケルト系の音楽は根付いているし、その地の文化と融合して、新たな音楽を生み出してもいるのだ。

だから、あえてそうした多様なケルト音楽を素材とし、自分たちなりの表現でシンプルにその魅力を伝えていきたい、というのが、このユニットのコンセプトである。

とはいえ、さまざまな異文化のエッセンスを貪欲に取り込み、進化し続けるというのもまたケルト音楽の真髄であり、ただ既成の曲の旋律をなぞるだけではもの足りないのも事実だから、自分たちなりのリズムの解釈や独特のリフ、アドリブ・パートの挿入、複数の曲の組み合わせ方などに工夫をこらしている。


また、笛の種類もアイリッシュフルートからルネッサンスフルート、ファイフ、ティン・ホイッスルなど、時にはベーム式のモダン・フルートを使うなど、臨機応変に使い分けを試みているし、ギターも珍しい9弦(6コースの一部が複弦)ギターやバリトン・ギターを使用し、特に9弦ギターはそれをさらにケルト系音楽に特徴的なDADGADという調弦方法でチューニングを施している。

そうした私たちの企みや仕込みが、どれほどその音楽の魅力を伝えるのに有効に作用しているのか、は当人たちは比べる尺度を有していないので知る術もないのだが、初めて聴いた人でも、何だか懐かしい、聴いたことがあるような、親しみやすい、という反響をいただくことが多いのは事実である。


私の推察だが、これはきっと戦後日本の音楽教育の現場で、文部省唱歌などとして多くのスコットランド民謡やアイルランド民謡が採用されたことに起因するものと思われる。

そうした旋律が元来内包する郷愁や哀愁、詩情などが日本人のDNAを揺さぶるのであろう。

今回リリースされる2枚のアルバムには、2曲を除き、有名な曲は収録されていないのだが、いろいろな意味でケルト音楽の入門編として適した内容になっていると思うのでぜひとも肩の力を抜いてお楽しみいただきたい。

そして願わくば、ここから深淵なケルト音楽や文化の世界に想いを馳せてほしいと思う。


ライター 黒澤邦彦(tacto rustico label/Founder, Musician)

黒澤邦彦(中世音楽家、民族楽器演奏家、作・編曲家、プロデューサー)
30年以上にわたる中世ヨーロッパ音楽家としてのキャリアに裏打ちされたマルチ・インストゥルメンタリスト。管弦打楽器をさまざまに操り、ブラジル音楽、ケルト音楽、アラブ音楽、アフリカンゴスペル、など多岐にわたる分野で活動中。
これまでに『AEORUS』『NRP Records』両レーベルから計7枚のリーダーアルバムを発表したほか、Final Fantasy IXの音楽制作などにも携わる。鎌倉を拠点とする極私的レーベル『tacto rustico』にて異なるジャンルの24枚のアルバムをリリース。


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【鎌倉の街からワールドミュージック】

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湘南の腹ペコミュージシャンは、みーんな大好き。江ノ島電鉄線・鎌倉駅より徒歩2分にある、隠れ家的なカフェ・ワンダーキッチン(WanderKitchen) のマスターの、民族音楽レーベル『Tacto Rustico』の作品を、studio iota labelより一挙250曲リリース!

今回はトラディショナルなケルト音楽の入門編と、新しい応用編のアプローチを2作同時にリリースです。

第一弾は「ケルト音楽の郷愁」「ケルト音楽の新しい地平」で検索!

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ぜひ焚火動画と一緒にご鑑賞下さい🙌


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【studio iota label】

日本の音楽レーベルstudio iota labelではCDの制作・販売、WEBコンテンツの発信、企業のWebライティング、動画BGM製作、アーティストやお店などの写真撮影、作曲・編曲事業、レコーディング・ミックス事業などを行っています。

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