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【アフリカンリズムの考察】日本人にとってのリズムとは同調、アフリカ人にとってのリズムとは対話。
アフリカで太鼓の演奏を始めると「相手が終わってくれない限り自分からは終われない感覚」になります。
自分なのに自分が止められない。
言うなれば「走り始めたら自動制御の音楽マシン」。
30分くらいはあっという間に経ってしまいます。
それは、繰り返される「対話」だからではないか?と考えたのです。
…
全日本人にとっての一番の基となるリズムと言えば「一本締め~。いよ~ぉっ、『パン!』」あとは3.3.7拍子。
これは同調ですよね。リズムとリズムがガッチリ噛み合って終わりを告げる。その続きが想像出来ませんよね。
それに対して「対話」であるリズムはエンドレスです。
「これな~に?」「な~にこれ?」のような繰り返しなので、留まる事を知りません。
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ドゥルマ族の【ンゴマ『Sengenya (センゲーニャ)』】を学ぶメインミッション
僕が東アフリカで学んできた Sengenya(センゲーニャ)で使われるベースになる楽器、Upatsu(ウパツ)とChapuo(チャプオ)を例に触れていきましょう。
楽器について
「Upatsu (ウパツ)」
リズムの基準になります。
今回は缶を叩きましたが、金属製のものなら多分なんでも。
![00 ウパツ](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/57587864/picture_pc_4b240e71594b4e0858367441eea8a89a.jpeg)
他の村ではトタン叩いていました。のちに訪れるギリアマ族では「ダバ」と呼ばれます。
「カカカカカカカ…」と打ち続けられるウパツ。もしかしたら彼らには「ウパツウパツ…」と聴こえるのかも知れません。
「Chapuo (チャプオ)」
メロディーのベースを作ります。 長細い両面太鼓が大小2台。
より長い方が若干音程が低く一番の基礎メロディーを奏で、短い方がその間を縫うようにメロディーを奏でます。
『インターロッキング』とここでは呼ばれています。
![00 チャプオ](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/57587918/picture_pc_e19c3cb6192c4bce0ce6978489090268.jpeg)
・左側に低い音程面『Dumbo(ドゥンボ)』(サウンドDin)
を置き手の平半分ほどで叩く(コンガのOpenと近い感じです)
・右側に高い音程面『Lukwakwa(ルクヮクヮ(右手))』(サウンドKa, NGa)
エッジを指先のみで叩く完全に高音重視。
どちらも名前がサウンドを表してますよね!
リズムについて
Sengenya(センゲーニャ)に代表される曲5拍子の曲「Yandaro」では以下のようなアンサンブルです。
Upatsu 「kakakakaka kakakakaka」
1st chapuo「Din ganga Dinganga」
2nd chapuo 「naganDiga nganDiga」
文字にするのが難しいですね。
日本語に例えるなら1st「これな~に?」2nd「な~にこれ?」を延々言い合っている感じです。
Sengenya(センゲーニャ)の入れ子式のリズムに迫る
さて、ウパツと呼ばれる金属製の皿や缶をその辺の木で叩き、テンポとグルーヴを作り、
チャプオと呼ばれる両面太鼓を2台もちいて、ベースになるメロディーを編み込んでいきます。
文字通り編んでいく。
それを「インターロッキング」と呼んでいます。
特にSengenya(センゲーニャ)には5拍子の曲があり、その入れ子式のリズムが
「これな~に?」「な~にこれ?」
とお互いに会話し続けるわけです。
インターロッキングとは
基本的には互いに反対の、しかも相手のスペースを見つけて間を「縫うように」メロディーを奏でます。
2つのChapuo(チャプオ・太鼓)がステレオで左右の耳からやってくる訳です。
ミニマルビートと呼ばれる短い長さのリズム、メロディーを周期的に叩き続けるので、トランス感がハンパない!!
よく太鼓叩き、アフリカというと「ドラッグやってるでしょ?」と言われてしまう事が多いんですが(実際にドバイの検問通過で徹底的に取り調べられましたからね)、この際ハッキリ言いましょう!そんなもの必要ありません(笑)!
本当に気持ちの良いビートを奏でる太鼓奏者は、演奏するだけでいつだってトリップできるのです♪
特にこのSengenya(センゲーニャ)の音楽のトリップ感がハンパない!「うわぁぁぁぁぁぁぁ」と叫びたくなる鳥肌モンのステレオ感です。
原始的な太鼓の大胆なアイデアとチューニングとは!
Sengenya(センゲーニャ)では、音程・メロディーが重視されます。
太鼓類をもちいてメロディー、なかなか珍しいと思います。
演奏前に念入りに音程をチェックし、演奏中も音が変わってくると水で濡らしたり皮の真ん中をバン!と叩いてピッチ(音程)を調節します。
余談ですがギリアマ族のブンブンブ(太鼓)は、くり抜いた木に皮を貼りつけてあるだけの仕組み。要はチューニング(音程調整)する構造は持ち合わせていません。
したがって、どうやってチューニングするかと言うと…
直接火にかけます(笑)!!
斬新なアイデア!というか本来こういうものか!と思わせる大胆さ。
アフリカはケニアの太鼓は作りがとても原始的な事、そしてアフリカの暑さゆえに太鼓の皮が乾いてどんどん音程が変化していくんですよね。
逆に雨も多いです。亜熱帯ですからね。
カラッと乾いた音のする西アフリカに代表されるDjembe(ジャンベ)と比べると、東アフリカのNgoma(ンゴマ。音楽,ダンスの総称)は対照的。
それぞれの善し悪しがありますが、湿った音が個性も強くてクセになる感じですね~。
![画像5](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/57589010/picture_pc_9284665788034a23e172051bf92ecd84.png?width=800)
インターロッキングしているとテンポ感はキープされる
Sengenya(センゲーニャ)の入れ子式のリズムは、手とリズムが編み込みになっているので、テンポもリズムの位置もズレたくてもズレようがありません。
これは分かりやすく同じ太鼓同士だから掴めた感覚です。
実際のバンドアンサンブルでも、異なった楽器をお互いに持ちつつ、相手の音と自分の音が混ざり合ってひとつのものを形成しているという感覚が掴めれば、ポピュラーミュージックにも応用できると感じました。
エピソードとして、僕がひとりで練習している時、子供がやってきて太鼓を叩き始めたんですよね。
でもすごく小さい子だったので、僕の叩いているリズムと若干噛み合いませんでした。
そしたらすぐ叩くのを止めちゃったんです。
要は音楽はアンサンブルとして存在し、相手との対話が成立しないと楽しさを感じられないのかなと感じました。
僕のリズムが 現地の色、言葉になっていなかったのはもちろん感じていましたから、僕のリズムがいけなかったのかも知れませんが、とにかく音楽として音が響かないと皆演奏を止めてしまう。
これは今後の生活でも感じた事でした。
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Chapuo (チャプオ)の演奏の難しさにも直面します。
両面太鼓で両側叩きますから、腕の動きが左右の運動なんですよね。
ドラムやコンガなどは上下運動ですので重力が有効に使えますが、横運動ってのは日常にほぼない動きですから非常に疲れる。
演奏姿勢はイスに座ってひざの上に太鼓を置き、太鼓の余った紐を股に巻きつけ固定するという原始的な方法。
太鼓が揺れるわ、足が疲れるわ、
腕は肘をかなり引いた状態で叩き続けるので、こちらも大変疲れます。
音の出し方も、やはりコンガとは違います。
特に利き腕ではない左手でベーストーンを出し続け、しかも右手の高音を出す時に左手は左面をミュート(押さえて止める)しなくてはなりません。
ミュートをしないと高音側の音を出した時、低音側の音がまだ伸びているので音が重なりあってしまうんですよね。
ピアノやベースなどで考えたら当たり前に、音が重ならないようにする事なんですけど、ドラムって楽器は基本叩いたら放置の楽器なので、その止めるという動作がやたら難しい!
でもこのミュートを覚えると感覚がかなり変わります。止めないとかなり気になるようになって、耳が良くなります。
ミュートする際に音が鳴ってしまってはダメ。
静かにそっと置いてミュートする。割に、またすぐさま叩かなくてはならない。
右手のハイトーンは左手と同じではなく指先(第一関節部分までだけ)太鼓の端を「Ka!」と勢いよく叩く。
これが痛いのなんの。指は反り変えるし、これ続けたら関節やられる~!と思うほど。
そして肝心の「歌う音」。
これがしっかり出ていないと土俵にも上がれません。1秒たりとも全く気が抜けない割に最低でも15分は続くし…。
胸筋が滞在中の2週間ですっかり大きくなってしまうのではないかと思うほど疲れました。
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…
ウパツとチャプオのベース楽器を使って様々なミジケンダの曲を学びました。
「5拍子」という大変不可解な曲に圧倒されましたが、他の曲はちゃんとシンプルに4/4拍子です(安堵)。
それでもなおインターロッキングは健在。なるほど!と思うロックやポップスでもよく聴くリズムもあり、色々な関連性を想像すると面白くなります。
特に僕らの聴くロックやポップスは西アフリカのリズムの影響が色濃いですから、
東アフリカであるケニアの音楽にも関連性があると思うと、
どこの国であれ、人が衝動を受けるリズムには、共通するものがあるのかも知れませんね。
□ライター Zin ” Atrevido” Hitoshi
神奈川県横須賀市育ち。 ドラマー,パーカショニスト。
ブラックミュージックに傾向し、リズムのルーツを探る。2018年よりメキシコ移住。横須賀市久里浜でRAGドラムスクールを主催。 YAMAHA Popular Music School講師として、14年の講師活動。ドラムプロショップGATEWAYにてキッズスクール講師として10年の指導活動。
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