長良川画廊

長良川画廊店主

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長良川画廊店主の美術館鑑賞記 13 靖国神社「遊就館」 平成20年7月

靖国神社「遊就館」は、靖国神社境内にあります。 地下鉄東西線の九段下駅1番出口を出て、そのまま九段坂を靖国通りに沿って歩き始めると、すぐに靖国神社の「大鳥居」が見えてきます。前回の「永青文庫」で触れましたが、坪内祐三さんの『靖国』(新潮文庫)には、このあたりが山の手と下町の境界がもっともレアリテを持って体感で出来ると記してあります。 《東京の西北に位置する台地に武家屋敷が並び、東南の低地には多く町人が住んでいた。この明確な住み分けが山の手・下町の二分割だった。この台地(山の

    • 長良川画廊店主の美術館鑑賞記 12    白隠和尚 ― 禅僧の書画 ― 平成19年5月

       お久しぶりです。前回からもう半年過ぎてしまいました。この間、生活がこれまでと特に変わったわけではなく、東京出張のときは、一日の休みを利用して美術館に足を運ぶことも以前と同じです。体調も特に気になることは無く、以前の頭痛も近頃はさほど気にならなくなりました。また、家族や老人の域に入っている親にやっかいな問題が起こったということもありません。一つトッピックスとしては、わたしの息子(前妻の子)が去年の11月から東京の画廊に丁稚に行くようになったことです。この息子、高校に入るまでは

      • 長良川画廊店主の美術館鑑賞記 11   ソウル国立中央博物館 平成18年12月

         前回は、〈私は骨董品の世界にとんと不案内で、書画屋である以上全くわからないでは 体裁が悪い〉と書きましたが、「書画」も「骨董」の内ではないのか、同じ美術の世界ではないのかという声が聞こえてきそうなので、そこら辺りの話をちょっと書いてみます。  私の仕事を一括りで「美術」と言うと一番広い概念のような気もします。しかし、わたしのまわりの方々を見渡しますと「美術」などとはよっぽど縁遠いと思われるようなお顔の方が多く、それは偏見としても「書画」の世界でポピュラーなもの、例えば「勝

        • 長良川画廊店主の美術館鑑賞記 10   日本民藝館と柳宗悦 平成18年11月

           今年の六月初めにある美術商の方から一冊の本を勧められました。『愉快な骨董』という尾久彰三さんの本です。恥ずかしいことですが私は骨董品の世界にとんと不案内で、書画屋である以上全くわからないでは体裁が悪いのですが、書画だけでも手一杯で、勉強しなければならないことが四方八方にあると言い訳をして、今でもそうですがどちらかと言うと見て見ぬふりをしてきたのです。しかし書画に通じた人は骨董の世界にも通じると考えるのが自然でしょう。ともかくそんな反省と後悔する気持が相まってその『愉快な骨董

        長良川画廊店主の美術館鑑賞記 13 靖国神社「遊就館」 平成20年7月

        • 長良川画廊店主の美術館鑑賞記 12    白隠和尚 ― 禅僧の書画 ― 平成19年5月

        • 長良川画廊店主の美術館鑑賞記 11   ソウル国立中央博物館 平成18年12月

        • 長良川画廊店主の美術館鑑賞記 10   日本民藝館と柳宗悦 平成18年11月

          長良川画廊店主の美術館鑑賞記 9   川合玉堂「玉堂美術館」 平成18年5月

           ホリエモンが塀の外に出てきました。 世を変えようと志すものは、より良い方向にですよ、一度くらいはぶち込まれたほうがいいのです。彼にそんな志しがあると言っているのではないですが。それにしても否認したら保釈が許可されないなんておかしな話です。それ自体検察に有利な自白を強要しますよ。だいたい無罪の可能性のある人間を検察が何ヶ月も拘留することがおかしいのです。私はそもそも検察も裁判所も国民のためにあるなんて寝ぼけたことを思ってはいませんので、要するにそれが権力というものですからそん

          長良川画廊店主の美術館鑑賞記 9   川合玉堂「玉堂美術館」 平成18年5月

          長良川画廊店主の美術館鑑賞記 8 矢橋六郎展 平成17年10月

           今回の美術館マンスリー、以前にまして間隔が空いてしまいました。またまた言い訳がましいのですが、10月17日の夜、やれやれ今日は忙しかったと和食屋さんでビールを一口飲んだ後、急にフウーと意識が遠のくような気がして、倒れたのではないのですが、気持ちが悪くて、胸がざわめくというか死が隣にやって来たというか、言葉では表現が難しいのですが、動悸とか目眩でもなく、不安な気持ちと言うのが一番近いように思いますが、そんな状態になって、その日は家に帰って早く横になり、次の日もどうも頭が重いの

          長良川画廊店主の美術館鑑賞記 8 矢橋六郎展 平成17年10月

          長良川画廊店主の美術館鑑賞記 7 難波田龍起 平成17年7月

           今月は衆議院選挙があって自民党が大勝しましたが、この先日本がどうなるのか、私にはわかりません。日本がどうなるかより、私がどうなるかです。前回の岡本太郎から、突然の「ウートレ」ですから、それも、一階の長良川画廊を二階に引っ越して、一階を「ウートレ」にしょうというのです。天井をぶっ壊して、コンクリートを剥き出しにして、一応、コンテンポラリーな雰囲気に大改装・・。家賃が23万円、工事費にどれだけかかるやら。このところ、期待より不安の方が大きくなってきました。「ウートレ」で何をやる

          長良川画廊店主の美術館鑑賞記 7 難波田龍起 平成17年7月

          長良川画廊店主の美術館鑑賞記 6   岡本太郎 平成17年7月

           先月は、東京出張中の20日が唯一の休日でした。生憎、月曜日に重なってしまい、ご承知のように、月曜日は日本中の99パーセントの美術館は休日で、どこか開いてるところはないかと調べたところ、東京近郊では唯一、青山の「岡本太郎記念館」が開館していました。それにしても、どうして、月曜日に一斉に休まなければならないのでしょう。世間には、月曜日が休みだという人も大勢います。パリなら、ルーブルが火曜休館で、オルセーは月曜休館です。せめて、東京国立博物館が月曜休館なら東京国立近代美術館は火曜

          長良川画廊店主の美術館鑑賞記 6   岡本太郎 平成17年7月

          長良川画廊店主の美術館鑑賞記 5   村上華岳展

           今月の美術館マンスリーは「村上華岳」と以前より決めていたのですが、なかなか都合が付かず、最終日の夕方、ちょうど文人会という交換会(オークション)が京都安井の金比羅さんであるので、それが終わってから、雨が鬱陶しく降っておりましたが、交換会で買った掛け軸を小脇に抱えて見に行ってきました。  この展覧会では年代順に作品が展示してあり、初期の代表作「二月の頃」「夜桜之図」から華岳芸術の原点と言うべき国画創作協会時代に描かれた「裸婦図」そして多くの仏画と山水画、書など華岳の全貌を知

          長良川画廊店主の美術館鑑賞記 5   村上華岳展

          長良川画廊店主の美術館鑑賞記 4   曾我蕭白展 平成17年4月

           最近「閉塞感」という言葉をよく聞きます。「異質」であるべきだと前回書いたことも私が「閉塞感」を感じているからかもしれません。「閉塞感」というのはこの時代この社会に感じるということです。ではその正体は「何か」ということですが、私はその「何か」というのは、難しいけれど大体見当が付くのではないかと思います。問題は閉塞した「何か」を打ち破ってその先に何があるのかということです。それが一番肝心なところです。それが見えないということが「閉塞感」の根本のように思います。さて今回は話題の「

          長良川画廊店主の美術館鑑賞記 4   曾我蕭白展 平成17年4月

          長良川画廊店主の美術館鑑賞記 3   長谷川等伯展 平成17年3月

           私は最近つくづく実感するのです。「異質」であるべきだと。今、世間はライブドアの話題で持ちきりですが、私はライブドアの堀江貴文という人を哀惜を込めて応援しています。彼は最も通俗的なビジネスの世界にあって金を稼ぐことで幸せになれる人ではありません。彼は「異質」なのです。彼は「異質」な存在として、社会に対し自分の言葉が発せられる。普通の言葉で話ができる。それは容易なことではないのです。彼の生い立ちなのか、生まれながらの才能なのか、彼は「異質」である「個」として、この「今」を生きよ

          長良川画廊店主の美術館鑑賞記 3   長谷川等伯展 平成17年3月

          長良川画廊店主の美術館鑑賞記 2    戦後60年 無言館 遺された絵画展 平成17年7月

           私は時折美術館に行って、感動したり嬉しかったり、時には衝撃を感じたりするわけですが、それを私は見る上での大事な価値基準にすればよいのだと考えています。芸術的に優れているとか、新しい表現方法であるとかの基準は、表現というものの本質からすれば小さな問題だと思っています。表現とは結局、表現者の心の告白であり、魂の成すわざです。東京ステーションギャラリーの『戦後60年 無言館 遺された絵画展』を見ました。この展覧会は長野県上田市にある『無言館』の収蔵作品を中心にして、太平洋戦争に召

          長良川画廊店主の美術館鑑賞記 2    戦後60年 無言館 遺された絵画展 平成17年7月

          長良川画廊店主の美術館鑑賞記 1  「岡倉天心と日本美術院」展、「痕跡―戦後美術における身体と思考」 平成16年11月

           私の仕事は言うまでもなく美術品を商うわけですが、特殊といえば特殊な仕事かもしれません。美術(芸術)という精神活動の果実といったものに経済的な価値を見いださなければならないのですから。時には、否、往々にしてそうですが、良いものが相応の価値を与えられるとは限りません。売れるものを売れば良いというこになりますが、多少でもその精神活動に畏敬の念を持つものにはそう易々と割り切ることはできないものです。もちろん今でもつまらないものを売ることはあります。しかし、できる限り自分の内にある思

          長良川画廊店主の美術館鑑賞記 1  「岡倉天心と日本美術院」展、「痕跡―戦後美術における身体と思考」 平成16年11月

          このうそ寒い世の中へ  新型コロナウイルス感染の流行で思うこと

          第1回 2020年5月14日  新型コロナウイルス感染の流行が拡がり、学校の休校閉鎖、美術館、コンサートホールなどの催物の中止、そのほか多くの集会が中止となり、市民は外出や移動を控えるようになった。それら社会活動が制限されることによって、小売業者、サービス業者を中心に多くの自営業者、企業の経営を切迫させ、派遣労働者のような非正規労働者の雇用の打ち切りが起こっている。これらはすべて政府や行政による自粛要請により、それに多くの市民、団体が従うことによるが、元を正せば、政府よりも

          このうそ寒い世の中へ  新型コロナウイルス感染の流行で思うこと