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#古典がすき

名残惜しさを押し殺して帰る子供たちの姿に「いきの構造」の一端を垣間見た

名残惜しさを押し殺して帰る子供たちの姿に「いきの構造」の一端を垣間見た

「いき」とは男女の異性関係において見出される構造であり、その構造について「媚態」「意気地」「諦め」のプロセスを通じて「色気」の正体を語ったのが明治から昭和の時代を生きた高等遊民・九鬼周造の著作"「いき」の構造"である。

稚拙な説明を容赦いただきたいが、「媚態」とは好きな異性に近づき好意を示すこと、「意気地」とはもっと好きな異性に近づきたいけれど強がって近づかないツンデレになること、「諦め」とは好

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30代後半の主人公の悲哀が少し理解できる田山花袋著「蒲団」

30代後半の主人公の悲哀が少し理解できる田山花袋著「蒲団」

群馬県が誇る文豪・田山花袋の代表作「蒲団」を読んだ。30代も半ばに差し掛かり、すでに男性としての魅力は失われ生活に華がない、とは言え既に結婚もして子供も授かり、これから徐々に老いていくのだろうと有る意味男としての人生を諦めかけていたごくごく普通の男性が主人公である。ところが、こうした華のない生活が突如として一変する。自分のことを「先生、先生」と慕ってくれる可愛い一回り下の女性が寄ってくるのだ。自分

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