見出し画像

なぜ企業のグラフィックデザインは統一性がないのか

グラフィックデザインやブランディングにおいて統一性は一貫性を伝えるためにも重要なことです。しかし、一方で統一性は重要だとわかっていても、なんか微妙にテイストが違う。などズレがあったりして統一性がないままにいろいろと発信してしまっている企業をよく目にします。それはなぜなのか考えてみました。

  1. ディレクター不在
    ディレクターというとテレビや映画、デザイン業界でよく耳にする肩書きですが、他の様々な業界にも必ずディレクターが存在しています。それは管理者や指揮者を意味します。どういう方向性で目的地を目指して、決め事がぶれていないかなどを全体を見る役割です。
    中小企業や小規模の企業とお仕事しているとその役割をクライアント自らがしているケースがあります。例えば、webサイトはここが安いからここに発注。看板は看板屋さんに。チラシはこの人に作ってもらおう。など、こうするとクリエイティブのディレクションができて入れば良いですが、大抵はできていないことがほとんどです。なんとなくどこかでみたことがあるものでなんとなくロゴが配置されているだけなど企業のブランドイメージそっちのけで仕上がってくることもあるのではないでしょうか。

  2. ブランドイメージが共有されていない
    ブランドイメージなんてなんとなく共有できていると思っている方は要注意です。何かしらにしっかりまとまっていないとそれぞれの解釈でブランドイメージができてしまい、「うちのコーポレートカラーって青でしょ。」「いや水色だよ。」と漠然とした理解のまま、「青のイメージでチラシつくってください。」的な発注をし結局仕上がったものが青だったり、水色だったり、紺だったり、微妙なずれが生じて、「時間がないからこのままで行こう」とブレた状態のアウトプットが増えていき、統一性のないデザインが出来上がっていきます。

  3. 飽き
    なんかそろそろ飽きたから変える?と「飽き」を理由にイメージを変えてしまっていることも少なからずあるのではと思います。変えていくことは良いことですが、その理由が大事です。「飽き」のような気まぐれ的に変えてしまってはせっかく積み上げてきたイメージを簡単に崩してしまうことになります。イメージを変えるにしても幹は変えずに枝葉を変えるようにするなど戦略的に変えていくことが重要です。

では統一性を出すにはどうすれば良いか。
それは1〜3を改善することで統一性がでてきます。

  1. ディレクターに相談する(ディレクションできる人に相談する)
    デザインの発注を作業者(看板屋さん、印刷屋さんetc…)に直接するのではなく、まずディレクターに相談することをおすすめします。ディレクターを挟んで作業者に発注することでディレクターがディレクションをし、全体が統一されたデザインになります。デザイナーさんの中にもディレクション業務ができる方もいらっしゃるので、そういった方にお願いすることをおすすめします。私自身、フリーランスでグラフィックデザインをしているので、クライアントさん側から紹介された印刷所さんや様々な方々とやりとりをし、ディレクションをすることが多々あります。

  2. ブランドイメージを共有しておく
    ブランドガイドラインやブランドブックを作成しておくことがおすすめです。可視化し、内容をまとめた資料を一つ作成しておけば、社内、新入社員、取引先などに共有でき、共通の理解がしやすくなります。

  3. 軸と遊び
    先ほども書きましたが変化は重要です。その中で何を軸としてブラさず、何を遊びとするか決めておくことが重要です。例えば、誠実さイメージの軸はブラさず、たまにユーモアを挟む。「普段は誠実というフリ」が効いているので、たまに出るユーモアがとても印象的になるのではないでしょうか。(逆に普段ユーモアたまに誠実も良いと思います。)それをどのように運用していくかをディレクターと共に決めていくことがおすすめです。

以上のことから、全体を見る人がいないと統一することは難しいです。
まずはディレクター(ディレクションできる人)*1に相談してみる。という流れが企業のブランディングや統一されたビジュアルにとって重要だと考えています。
*1デザイナーの中にもディレクションできる人がいるので、あえてここではこう書きます。

いまだにデザイナーに相談するときはなにか発注するとき。と思われがちですが、まずは相談してみることで、デザインの統一性がとれることはもちろん、自分達が考えていたこと以外のことにも気付けたりします。「今こんなこと考えてるんだけど、デザイナーとしてどう思う」という関係性が私の考えるクライアントとデザイナーの理想の形です。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?