才能が集まる会社、逃げる会社
\マネジメントスクール&コミュニティ「Emo」受講生募集中/
ベンチャーは、いつだって1人の才能が切り拓く
プロローグとして、ある出来事について書かせてください。
以前、弁護士ドットコム株式会社代表取締役の内田さん(現取締役会長)、同社専門家プラットフォーム事業担当取締役の田上さん、クラウドサイン事業担当取締役の橘さんに、それぞれマネジメントトレーニングをさせていただく機会に恵まれました。
田上さん、橘さんはお2人とも弁護士資格をもつドメインエキスパートであり、大きな事業を背負う事業家であり、強烈な個性をお持ちの役員です。
「内田さんのおっしゃる通りでございます、仰せの通りにmm」
そんな役員像とは程遠く、時に内田さんに反発しながら、強烈な個性から来る独自の考えでどんどん事業を前に進めます。そのようなお2人を見て、ある時内田さんに尋ねました。
そうすると、内田さんは笑いながらこう答えてくださいました。
人の才能を活かすということのリアルをまざまざと感じ、頭を金槌で殴られたような衝撃を受けました。
本記事の趣旨
久しぶりのエントリーになります。
私が代表を務める株式会社EVeMは先日第2期を終え、これまで約500人のベンチャー経営者・マネージャーの皆さんにマネジメントのトレーニングを提供する機会に恵まれました。この間、たくさんの学び・気づきがありそれを記事にしたいと思いました。
本記事の趣旨はざっくり以下のようなことです。少し長いので、気になるところから読んでいただいても良いかと思います。
才能を活かす必要がある、日本
昨今、急激に注目度が高まっている「人的資本経営」という考え方があります。
人的資本経営というのは、「人を消費する”資材”と見なすのではなく、投資すれば大きなリターンを生む”資本”と捉える」その上で「その資本へ投資する、その資本をフル活用する、ということを経営のコアな施策と位置付ける」という経営の考え方です。
日本において人的資本経営が重要であると叫ばれるようになった背景にはどのようなものがあったのでしょうか?省庁作成のスライドと共に見ていきます。
1.生産年齢人口は減る
2.そのような危機的状況の中、日本の人材競争力が大きく世界に劣後してきているという事実がある
3.そして、人材競争力が劣後した結果、国際競争力も落ちているというのも事実
4.ところで、企業価値を構成する要素が有形資産から無形資産へとシフトしてきている。日本はまだ世界に比べそのシフトや緩やかだが、いずれシフトしていくと見られる。
5.その無形資産は”ESG”という要素で整理されるのだが、S(Social)、中でも「人的資本の活用」というのは投資家の大きな関心事だ。
6.ESGのSを強化し、人材競争力をあげイノベーションを創出し、企業価値を上げ成長しよう、それはもはや日本の国策である
このような背景から、人的資本経営は活発に議論がなされるようになりました。 そして、上場企業においては統合報告書という形で人的資本経営への取り組みを開示する会社も徐々に増えてきました。この動きは今後も続くでしょう。
答えが明確な時代には、モノやカネを投下し、ヒトはあくまでそれを運用する担当として、決められた業務を圧倒的な量こなすことで大きな成果が上がったのかも知れません。それは、かつての日本が得意とすることでした。
しかし、現代のような不確実な時代では、モノやカネがあるだけではどうにもならず、そこには未来を切り開くようなサービスを生む、イノベーションが不可欠です。そして、イノベーションはヒトからしか生まれません。
決められた業務を物量こなす経営からイノベーション創出の経営へ
モノ・カネ活用の経営からヒト活用の経営へ
このようなシフトに日本は乗り遅れ、日本発のイノベーションが生まれないままどれほどの時間が過ぎたのでしょうか。
現代の経営において最優先事項は、才能ある人を集め、その才能が最大化されるような仕組みを作り機能させることです。
ヒトしかないベンチャーから学ぶべきこと
経産省の資料にこんなスライドもありました。
内田さんのお言葉も重なります。
ベンチャーにはモノもカネもないのです。何もないのです。あるのはヒトだけなので、ヒトを活かすしかないのです。
ヒトを活かすしかないからこそ、どうやってヒトのパフォーマンスを最大化させるか、いつだってベンチャーは死ぬ気で考えてきました。それしか生き残る道なんてないのです。
ヒトしかないベンチャーだからこそ、そこに人的資本経営のヒントは隠されているのでしょう。
以下、ベンチャー企業のマネジメント支援を行ってきた私が考える、ヒトを活かす経営の考え方を書きます。
才能が集まる会社、逃げる会社
まず、才能が集まり成功を収める会社と、才能が逃げ成功できない会社、それぞれのメカニズムを見ていきます。
才能を活かす仕組みが会社に実装されていれば、メンバーの才能は活かされ、メンバーは成長実感を強く感じます。成長実感は、「この会社楽しい」「この会社は良い会社だ」という強いロイヤリティに繋がります。そして、強くロイヤリティを感じた人たちが自然と人を誘うようになります。そして集まった人たちの才能は活かされ・・・・という具合に、その会社には人がどんどん集まり、その人たちは才能を活かされ、イノベーションが生まれてゆくという好循環を招きます。このような会社は持続的な成長が可能になるでしょう。
一方、才能を活かす仕組みがなければ、成長実感を感じることもできず、ロイヤリティも下がり、バケツに穴が空いたように人は離散していきます。当然、リファラル採用も起こりません。お金を掛けて新規採用を行ったところでバケツの穴から人が出ていくだけであり、会社のお金も、時間も、全て人員補充の採用活動に消えていきます。これでは会社として成果は上がりません。
「才能を活かす仕組み」を装着するところから経営は始まります。この仕組みを起点に、成長の好循環を構築することを目指します。
才能を活かす10個の仕組み
では才能を活かす仕組みとは何なのか?以下の10項目が組織的に実行されることで、会社は成長の好循環に入ります。逆に、これが欠けている場合は悪循環に入ります。
皆さんの会社はどうでしょうか?以下の10項目が組織的に実行されているでしょうか?
実行できている場合とできていない場合で、メンバーはどうなるかをスライドでまとめました。チェックしてみてください。
1.チームの役割
☑︎会社の目標・課題を踏まえた各チームの役割を言語化できているか?
2.野心的な目標
☑︎達成すれば卓越した成果であると言えるような、野心的な目標を設定できているか?
3.意義
☑︎チーム目標達成の先にある意義を言語化できているか?
4.方針
☑︎チーム目標を達成するためのアクションの方向性=方針が設定できているか?
5.適切なメンバー数
☑︎マネージャーが直接担当するメンバー数が適切な数になっているか?(その会社やチームの状況によるが、1マネージャーあたり7人超えるときついことが多い)
6.アサインメント
☑︎メンバーの特徴・Will ・Canを考慮し、最適なアサインメント(配置)ができているか?
7.権限設計
☑︎チームでは誰が何を決めるのか、完全に明確にできているか?
8.推進システム
☑︎マネージャーは、「進捗の可視化・情報共有・報告・議論・意思決定」の5つの項目について、「自部署・他部署・上司」の3つのステークホルダーに対し連携の仕組み(会議やチャット、ダッシュボードなど)を構築できているか?
9.モメンタム
☑︎チームの目標を達成するためのアクションを設計し、成果ではなくアクションの進捗を頻度高くメンバーに伝えることで、「このチームは前に進んでいるんだ」という”チームの進展”を実感させ、チームを勢いづけられているか?
10.事実の記録と評価
☑︎メンバーの言動など”事実”を普段から記録し、それを元に適切に評価し、フィードバックすることでメンバーの成長を促しているか?
マネージャーは”管理職”ではなく”人的資本経営の担い手”である
マネージャーは従来「管理職」と呼ばれることが多く、そこに込められた意味合いとしては「人の状態や行動を管理することがマネージャーの仕事である」というものだったのではないでしょうか。
しかし、人の才能を活かすことこそが重要であるこれからの時代においては、その役割認識は明確に変える必要があります。
上にあげた「才能を活かす10個の仕組み」は全てマネジメント業務であります。これを会社全体で実行できるような仕組みを作ること、そしてメンバーとの接点においてこれらを実行すること、この2つはマネージャーにしかできません。これこそがマネージャーの仕事なのです。
つまり、マネージャーは「人の状態や行動を管理する」ことが仕事ではないのです。そのような現状維持的業務ではなく、「人の才能を活かす仕組みを作り、実行することで、イノベーションを創出する」という、人的資本経営の担い手としての、未来創造的業務へとその役割は変わっていくのです。
イノベーションを創出するマネジメントは、重要であるか否かを選択するようなイチ施策ではなく経営戦略そのものです。そして、それを司るのがマネージャーなのです。
全てのチャレンジに、マネジメントの力を
チャレンジしようとする全ての組織には、ヒト起点のイノベーションを生むための仕組みを作り、実行するマネージャーが必要です。
EVeMを創業するにあたり、さまざまなベンチャーマネージャーがセンスや感覚で行ってきたマネジメント業務に名前をつけ、フローを整理し、誰でも実行可能な業務マニュアルとして公開しました。
そして、このマニュアルを元にしたマネジメントトレーニングを提供してきました。
しかし、労働集約型のトレーニングサービスだと、いつか私たちのリソースがネックになり提供数が限られてしまいます。私たちのパーパス「全てのチャレンジに、マネジメントの力を」は実現できません。そこで、マネジメントの学習と実践が可能になるSaaSの開発を開始しました。
ヒトしかないベンチャーだからこそ、ベンチャーにはヒトを活かすノウハウがあふれています。ベンチャーが誇るノウハウを、ベンチャーの皆さんとともに、日本の全ての産業へ、そして世界へ、広げたい。
全てのチャレンジに、マネジメントの力を。
私たちはパーパスに向け真っ直ぐ進みます。
▼Culture deck
▼編集後記
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?