400字小説 | オトナになるまで忘れてやらない
卒業式が終わり、薄暗い部屋の中で、
「バカ……」
何度目だろう。両膝に顔を埋め、何度も後悔の念を唱えている。時折、両膝の隙間から見える影は、座っている彼の後ろ姿。
普段はお茶らけているけど、部活ではいつも最後まで必死に頑張るそのギャップに引っ込み事案な私とって、「光」であって……一緒にいたかった。
「言わなきゃ振り向かないよ」と、友達に散々言われたけど、こんな私だから、言いたくても言えなかった。常に周りの空気に合わせてしまうから。弱虫な壁を、壊すことができなかった。
その結果がこれだ。自分で抑えこんでいた土砂降りの涙が流れていく。
忘れない……忘れるもんか。大切にしたい気持ち、独占したい気持ち、悲しい気持ち。すべてを教えてくれたキミ。
わたしがいつか、オトナになるまでは。
※動画版(TikTok)はこちらから。
初稿:2023年7月6日掲載
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