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かなしい本?うれしい本?<さいごの毛布>

さいごの毛布 著者:近藤史恵さん

家の近所にある八百屋の店員さんは東南アジアの人らしい男性で「いつもありがとうねー」と明るく片言の日本語で話しかけてくれます。

先週も犬を連れて野菜を買いに入ったら、「犬となかよしね」と声をかけられて、「そうなの。犬が好きでこの前も犬の本を読んだの」と話したら、「それは、かなしい本?うれしい本?」と聞かれて「うーん。かなしくもあったけれど、気持ちよく終わった本だよ」と答えたら「それはよかったよー」と笑顔で返してくれました。

店員さんは本が好きみたいだけど、まだ日本語の本は難しいみたい。彼には詳しく説明できなかったですが、今回は犬たちに交わる本の「さいごの毛布」をご紹介します。

バイト生活をしていた智美は、オーナーの麻耶さんとテキパキと行動する碧さんがいる老犬ホームの「ブランケット」で働くことになります。老犬ホームと聞くと、高齢になった犬を引き取って生活の世話をするという印象がありますが、高齢犬だけでなく、芸能人で普段不在な人の犬や、元の飼い主が亡くなって預けてくる人など事情は様々です。

私が救われたのは、最期の時を迎える犬の話だけでなく、前述した様々な飼い主の背景と、犬の世話をする側の麻耶さん、碧さん、そして智美自身の家族がからんでの人間模様が描かれていることです。

なぜ老犬ホームをつくって世話をすることになったのか。その理由の次に、犬たちをどのように迎えていくか。しかし、犬が好きだけではやっていけない経営事情も露呈します。

この人は誰?と一瞬謎めいた人物が登場してミステリー要素もあり、著者の近藤さんはグイグイ引っ張り、ラストは智美が「ブランケット」で得た成長の証が現れて読後感がすっきり。

また1人、好きな作家さんが増えました!

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