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違和感は消え去る <星のように離れて雨のように散った>

星のように離れて雨のように散った 著者:島本理生さん

この本は、1人旅での持ち込みや読書カフェでじっくり読むのにぴったり。ゆっくりと時の移ろいを感じながら、自分の心と向き合える本だと思います。

正直に言うと、最初読み始めた時は、主人公である春(女性)の気持ちがわからなくてページをめくる手が止まってしまいました。人と交わることに恐れをなしている心情がよくわからなかったのです。しかし、少し読み進めると、登場人物のセリフ一つひとつに目が留まり、心情の奥底に引き込まれていきました。次第に、春の行動理由と経緯を一つずつ丁寧に記述され、また心情の変化が2つの方法で書かれているのが興味深いです。

1つ目は、大学院生の春のまわりの人々。恋人の亜紀くん、大学院での仲間の篠田くんと売野さん。そして作家の吉沢さんとの関わりでそれぞれ、恋愛関係、友情関係、師弟のような関係から今までの自分自身と向き合うことになります。

2つ目は、春が宮沢賢治の「銀河鉄道の夜」の論文を書くことにより、失踪した父親と重ね合わせて過去を振り返り、春がやっと心の重しを解いた時に発する言葉が身に沁みます。

人は孤独だから同化したがる。でも、それなら対話の意味などなくなってしまう。
私は完全に同化してしまうこと、異なるものが同じ場所に存在することの区別がついていなかった。それは、「銀河鉄道の夜」に対する違和感となっていたのだ。

自分だけではなく、相手も感じていた恐れを知った春。そして、心情を見事に露わにしてくれた著者の島本さんにエールを贈りたいです。

ここまでたどり着いてくれてありがとう。

最後まで読んで本当に良かった!

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