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ハラハラドキドキ、サスペンス小説6選|誉田哲也、中村文則

4月と5月は「仕事意外で画面を観たくない!」となって読書にはまりました。ちょうど知人からの勧めもあって、家でも電車でも会社の昼休みでも、暇さえあれば小説を読んでいました。映画でも小説でも、人の闇を描きつつ、どこか希望を抱けるような内容が好きです。ジャンルで言うとサスペンスが多い。

読了が何冊かたまったので、あらすじと簡単なコメントと共に、読んだ本を備忘録として残してみます。

♢♦︎♢

月光 / 誉田哲也

《あらすじ》同級生の運転するバイクに轢かれ、姉が死んだ。殺人を疑う妹の結花は同じ高校に入学し調査を始めるが、やがて残酷な真実に直面する。衝撃のR18ミステリー。

中央公論新書(https://www.chuko.co.jp/bunko/2013/04/205778.html)

《感想》静かで淡々としていて、けれどとんでもない胸糞ストーリー。誰も救われないです。明らかに胸糞なんだけど惹かれる文章で、一気に読み進めました。本作は私にとって初の誉田さん作品でしたが、続けて彼の作品を4作読むほど。タイトルの「月光」は、ベートーヴェンのピアノソナタ「月光第一楽章」。この曲を聴きながら読むと、さらに話に没入できます。ちょっとというか、かなり大人な内容です。誉田さんの作品では(まだ4作品しか読んでいないけれど)一番好きですが、読む人を選びそう。苦しい話。


ソウルケイジ / 誉田哲也

《あらすじ》多摩川土手に放置された車両から、血塗れの左手首が発見された! 近くの工務店のガレージが血の海になっており、手首は工務店の主人のものと判明。死体なき殺人事件として捜査が開始された。遺体はどこに? なぜ手首だけが残されていたのか? 姫川玲子ら捜査一課の刑事たちが捜査を進める中、驚くべき事実が次々と浮かび上がる…。

光文社(https://www.kobunsha.com/shelf/book/isbn/9784334746681)

《感想》こちらも苦しくて、途中からやりきれなさがすごかったです。頼むから、誰か一人でも救われてほしい…。誉田さんの作品の中では『月光』と争うくらい好きです。工務店の主人、そこで働く男の子、その恋人など、登場人物はみんな暗い部分を抱えているのに表には出さない。リアルでも小説でも、人のそういう”強さ”が好きです。弱みを簡単に見せない人には魅力がある。

グロい描写は苦しかった。ちょうどご飯食べ終わったときに読んだので、少し気持ち悪くなりました。同時に、文字だけでこれほどリアルに情景を浮かび上がらせることができるのはすごいとも思いました。

もし本作(だけじゃなくて姫子シリーズ)を読むなら、第一弾「ストロベリーナイト」から読むと良いと思います。刑事・姫川玲子の過去がぼかされていて、もどかしくなったので。


ストロベリーナイト / 誉田哲也

《あらすじ》溜め池近くの植え込みから、ビニールシートに包まれた男の惨殺死体が発見された! 警視庁捜査一課の警部補・姫川玲子は、これが単独の殺人事件で終わらないことに気づく。捜査で浮上した謎の言葉「ストロベリーナイト」が意味するものは? クセ者揃いの刑事たちとともに悪戦苦闘の末、辿り着いたのは、あまりにも衝撃的な事実だった。

光文社(https://www.kobunsha.com/shelf/book/isbn/9784334744717)

《感想》これもグロい。『ソウルケイジ』といい、「誉田さんの作品って必ず一冊に一箇所は飛ばしたくなるようなグロい描写があるのか!」と思ってしまうほど。けれど、「ストロベリーナイトってなに? 気になる!」とページをめくる手が止まらないまま、一気に読了しました。ちなみに「ストロベリーナイト」の実態には、言葉のような甘さは全くありません。ドラマも観たことないって人は、新鮮な気持ちで楽しめると思います。


掏摸 / 中村文則

《あらすじ》東京を仕事場にする天才スリ師。ある日、彼は「最悪」の男と再会する。男の名は木崎、かつて仕事をともにした闇社会に生きる男。木崎は彼に、こう囁いた。「これから三つの仕事をこなせ。失敗すれば、お前を殺す。逃げれば、あの女と子供を殺す」――運命とはなにか、他人の人生を支配するとはどういうことなのか。そして、社会から外れた人々の切なる祈りとは…。

河出書房新社(https://www.kawade.co.jp/np/isbn/9784309412108/)

《感想》私に理解力がなくて、オチがあまりわからなかったです。というか、本作には明確な”答え”がないらしいです。雰囲気は好きだから、もう一歩先を理解したかった。

面白いと感じたのは、前半と後半で雰囲気がガラっと変わるところ。前半はスーパーで見かけた見知らぬ子どもにスリを教えるのだけどゆったりとした時間が過ぎる反面、中盤で怪しい男「木崎」と出会って以降は絶えず緊張感が漂います。一冊の本でこれほど雰囲気を変えられるのかと驚いたとともに、一気に最後まで読み進めました。


王国 / 中村文則

《あらすじ》お前は運命を信じるか? 社会的要人の弱みを人工的に作る女、ユリカ。ある日、彼女は出会ってしまった、最悪の男に。世界中で翻訳・絶賛されたベストセラー『掏摸』の兄妹編!

河出書房新社(https://www.kawade.co.jp/np/isbn/9784309413600/)

《感想》『掏摸』の感想と同じく、理解力が足りないようです。雰囲気は好きです。中村さん独特の、人が持つ”陰”の部分を、嫌な気持ちになることなく、でも確かに描く感じ。『何もかも憂鬱な夜に』っていう、タイトルからして暗さ満点の作品もあります。


歌舞伎町セブン / 誉田哲也

《あらすじ》歌舞伎町の会長の死体が発見された。病死と判断されたが、怪しい出来事が続く。不穏な空気の中で広がる「歌舞伎町セブン」という言葉。「リュウ」という人物が鍵を握っているらしい。会長の死の真相は…?

《感想》こちらも『ストロベリーナイト』同様、面白かったけれど、『月光』には叶いませんでした。誉田さんの4作品を短いスパンで読みすぎたから、衝撃が少なかったっていうこともあるかな。本作も、ラスト3/4あたりでグロい描写があります。


明日なき暴走 / 歌野正午

《あらすじ》じつはディレクター長谷見のヤラセだったTV人気企画「明日なき暴走」内の若者たちの無軌道な行動。それを知らぬ若いネクラ美容師が若者たちと交錯し殺人鬼に変貌、凶行を重ねる。長谷見は視聴率アップを狙い暴走の末、職務停止に。だが彼は警察の裏をかき殺人鬼にコンタクト、なお映像に収めたい……。大どんでん返しに読者は戦慄し言葉を失う!

幻冬舎(https://www.gentosha.co.jp/book/b13325.html)

《感想》こちら読み切れていません…。というのも、TV番組を作るとか、ヤラセというテーマにしっくりこなかったから。歌野さんの作品は好きですし、本作も”どんでん返しがすごい!”とのレビューを見かけるので、再チャレンジしたいです。歌野さんの作品で、過去に読んだものだと、『葉桜の季節に君を想うということ』『春から夏、やがて冬』(どちらも文春文庫)です。特に前者が有名で、「騙された!」と思うはず。叙述トリックがすごい作品。騙されたい人はぜひ手に取ってみてください。


出版禁止 / 長江俊和

《あらすじ》著者・長江俊和が手にしたのは、いわくつきの原稿だった。題名は「カミュの刺客」、執筆者はライターの若橋呉成。内容は、有名なドキュメンタリー作家と心中し、生き残った新藤七緒への独占インタビューだった。死の匂いが立ちこめる山荘、心中のすべてを記録したビデオ。不倫の果ての悲劇なのか。なぜ女だけが生還したのか。息を呑む展開、恐るべきどんでん返し。異形の傑作ミステリー。

新潮社(https://www.shinchosha.co.jp/book/120741/)

《感想》「新しい切り口の本だ」というのが、真っ先に感じたことです。著者・長江さんがとあるルポルタージュを手に取るのですが、それはとある理由から出版されなかった、いわくつきのもの。エピローグを読めば続きが気になるでしょう。

ただ注意点は、本作はフィクションであること。私はノンフィクションかと思って途中まで読み進めていました。そしてこちら、後味がかなり悪いです。最後の最後で、とある登場人物の頭のおかしさと行動に気持ち悪さを感じました。そういう後味悪い作品を求める人は好きだと思います。

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