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大アジア思想活劇ーー仏教が結んだ、もうひとつの近代史

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教談師・野口復堂、神智学協会・オルコット大佐、スリランカ人仏教徒ダルマパーラ、そして田中智学などなど、十九世紀から二十世紀の正史、秘史を彩る人物たちがアジアを股にかけ疾駆する近代…
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2023年5月の記事一覧

25 オルコット再来日と蜜月の終わり 拒絶された「仏教十字軍」|第Ⅱ部 オルコット大菩薩の日本ツアー|大アジア思想活劇

25 オルコット再来日と蜜月の終わり 拒絶された「仏教十字軍」|第Ⅱ部 オルコット大菩薩の日本ツアー|大アジア思想活劇

オルコットの日本再訪

最初の来日から二年後の明治二十四(一八九一)年十月末、神智学協会会長ヘンリー・スティール・オルコット大佐は再び日本を訪れた。しかし二年前、「十九世紀の菩薩」とまで称えられ、熱狂的な歓迎を受けた光景はそこに再現されることはなかった*64。

信じがたいことだが、セイロンの仏教関係者はオルコットの訪日について日本仏教界に連絡することを忘れていたという。また折悪しく仏教界は名古屋

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26 フォンデス もう一人の白人仏教徒|第Ⅱ部 オルコット大菩薩の日本ツアー|大アジア思想活劇

26 フォンデス もう一人の白人仏教徒|第Ⅱ部 オルコット大菩薩の日本ツアー|大アジア思想活劇

神智学協会と日本仏教を断ち切った男

オルコット二度目の来朝(一八九一年)は前回とは打って変わって寂しいものとなった。その背景を探ってゆくと、日本仏教の神智学協会への信頼が、ある時期から大きく揺らいでいたことが見て取れるのだ。そこでキーパースンとして登場するのが、「もう一人の白人仏教徒」である。皆さんは我が『大アジア思想活劇』冒頭、野口復堂が明治二十年代初頭の仏教・キリスト教の紛争を語ったくだりに

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27 シカゴ万国宗教大会 仏教アメリカ東漸|第Ⅲ部 ランカーの獅子 ダルマパーラと日本|大アジア思想活劇

27 シカゴ万国宗教大会 仏教アメリカ東漸|第Ⅲ部 ランカーの獅子 ダルマパーラと日本|大アジア思想活劇

「ランカーの獅子」カルカッタに拠る

インド・日本・イギリスとあちこちへ行きつ戻りつしてきたが、ここからは「ランカーの獅子」ダルマパーラと日本の関係に向けて少しずつポイントを絞りながらお話を進めていきたい。

さて、24章で触れたように、明治二十四(一八九一)年十月三十一日、ダルマパーラはブッダガヤで『国際仏教会議』を開催し、ガヤーの神権領主マハンタからの大菩提寺奪還に向けて気勢をあげた。しかし会

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