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仲道竹太朗
2021年8月19日 06:04
しんしんと降る粉雪が、地面に柔らかく積もっていく。その雪を照らしているのは、道の両脇にある家々のイルミネーションだ。 ここはどこか外国郊外の住宅地だろうか? レンガの建物一軒一軒に、豪華なもみの木が飾られている。窓からは暖かい色が覗いていた。 そうだ、今晩はクリスマス・イブ。でも、外には人っ子一人いない、静かなクリスマスは初めて見た。哀愁を感じざるにはいられない。思わず見とれていたけれど、よ
2021年8月16日 17:20
大輔の寝室の真ん中に大きく置かれていたのは、重厚なカプセル。一瞬の時間で睡眠できるその「ファストスリーパー」は、「猛烈社員」の異名をとる彼にとって、今は欠かせない。それで浮いた時間を仕事に回すことをしてきたからこそ、若くして係長の座を手に入れる程までになった。 大輔はいつものように、無言でハッチを開こうとした、その時だった。「おじさん……」 廊下からの声の方を向くと、そこには少女がいた。姉
2021年8月15日 07:03
俺は金髪美少女が好きだ。 だからクラスメイトの下北・セリス・夏美を見た時はとてつもなく興奮した。まさに俺のどストライクを突いたその容姿はハーフ特有のもの。いつ目に入れても痛くない。 以前は彼女の人気者っぷりには困惑していた。だからこそ、知り合いの博士から「明晰夢実現機」を譲り受けた時の嬉しさときたら半端なものじゃなかった。この機械は寝る時の夢をいつもはっきりとした夢に返る事ができ、起きた後も
2021年8月10日 19:02
昨日の交通事故は、僕の彼女である優香を脳死に至らしめた。デートが終わり、家路で別れた直後に、それは起こった。ああ、どうしてもっと一緒にいてあげられなかったんだろう。 でも、後悔するのはやめた。 彼女は脳のバックアップ保有者、すなわち専用の機械に脳の記憶を保存する実験の被験者であったからである。 病室に、彼女がベッドで横たわっている。安らかに眠るその頭には、数多くの配線。それはベッド隣にある