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販売において「人」がますます大切になる理由

販売によってお客さまに提供するサービスは「商品」の提供以外に「人」が提供するサービスがあります。人はすなわち販売員です。販売員が何よってサービスを提供するかと言うと、主として接客を通じて提供します。

ではこの接客においてこれからの時代、提供することが必須になるモノとは何か、私の経験をもとに考えていきたいと思います。

私のキャリアの始まりは百貨店でした。最初に携わったのが生活雑貨の売場。そこでは高級な食器やインテリアも扱っていました。

そんなある日、先輩社員からドイツのマイセンという高級食器を外商員と同行して売ってこいと指示を受けました。外商員が担当するお客様は百貨店のお得意様であり、いわゆる高所得者です。年間を通してある程度の購入が期待できます。

経験を積んでこいということかと思いましたが、当時の私はそもそも商品知識が乏しく、そんな価格が高い商品を売る自信がありませんでした。

それでも最低限の知識をと思い、マイセンの仕入先の方やまた図書館などでマイセンについて勉強して基本的な知識を頭に入れました。

そうして後日、外商員とお客様の所を回ったのですが、結果として1点も売れずに終わりました。やっぱり商品知識がないと売れない。心からそう思いました。

話は変わります。

それからほどなくして、あるご年配のご夫婦から電話で売場にお問い合わせがありました。

その内容は「マイセンの子供の人形が欲しい」というものでした。話をお伺いしていくと、そのご夫婦はお二人とも体が弱いこともあり、子宝に恵まれず、その代わりにマイセンの子供の人形を集めているとのことでした。

そんなお話を聞いた私は電話の切った後、早速、マイセンの子供の人形を仕入先に問い合わせて、その仕入れ先が持っている子供の人形をすべて取り寄せすることにしました。そしてそのご夫婦に連絡をして、ご来店頂くようにお願いしました。

ご来店当日は、カウンターに用意していた人形をずらっと並べました。そして人形をご夫婦にご覧頂きました。

最終的に春夏秋冬をテーマにした人形4体をお選び頂きました。人形は1体25万円です。なのでその合計は100万円です。

さらに外商の顧客になりたいとおっしゃって頂きました。

そのご夫婦は、すでに別の百貨店の外商のお客様だったのですが、「その百貨店ではここまでして貰えなかった。その百貨店から乗り換えます。」とおっしゃって頂いたのです。

人形の売上金額よりも、お客様のお役に立てたこと、そして当時の勤めていた百貨店の外商の顧客になって頂けたことがとても嬉しかったことを覚えています。

それでは、前半と後半の話で、同じマイセンの商品が前半は売れなかった、後半は売れたのですが、どこが違うのでしょうか。

前半後半の話の間はそれほど時間が経っていないので、私が持っていた商品知識はあまり変わりません。ほぼなかったと言っても過言ではありません。

違った点は、お客様との間に「信頼」を築けたかどうかの違いだと思います。接客においては理論やテクニックも大切で、それは否定しません。実際、私もお仕事の中でそれらをお伝えしますし、大切ですとお伝えしています。

ただ、他店との差別化、継続的にご利用頂くには、お客様からの「信頼」が何より大切になると思います。

戦後の物(商品)がない時代は、同じ物が大量生産され、物だけで売れる時代、その後、物がある程度行き渡ると、機能性やデザイン性で差別化をするようになりました。また、百貨店やスーパー、そしてセレクトショップなどでは品揃えで差別化を図ってきました。

そして現在は、差別化してきた物や場も行き着く所まで来ていて同質化してきています。つまり、それぞれの差がなくってきています。また、ECの台頭、さらにこれからはリアル店舗でも無人、あるいは少人数で運営する店舗が増えていき、人との関係がより希薄になると考えられます。

そうすると、何をどこで買うか以上に誰から買うかが購入する大きな判断基準になってきています。つまり「人=販売員」が大切になります。

それが意味することは、販売員がお客様の「信頼」を得て(言い過ぎかも知れませんが)ファンになって頂くことが、今後の接客において必須の条件になるということであり、人で売る「ヒト提案」が大切になるということです。

この「信頼」を得るための「ヒト提案」については、従来から、リピーターや顧客が多い販売員は自然と実践してきていることですが、人間関係が希薄になってきている現在だからこそ、改めてその大切さを見直す必要があります。そのことで、同質化した現在において、他店との差別化することができ、そしてお店を継続的にご利用頂けるようになると思います。


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