田舎
私自身には、田舎と言える場所は、無い。生まれは神戸だが、父も母も既に他界し、誰も住んでいない実家はあるものの、そこに行くことは、よほどのことがない限りないし、いわゆる、盆と正月に帰省したり、親戚が集まったりするような場所が、無いのである。
だが、家内の母が、まだ存命で、兵庫県の、それこそ、田舎に、ひとり、住んでいる。
義父が亡くなったのが、2018年。義父は、一人っ子。家内は、姉妹の長女。そして、義妹は、隣町に住んでいる。
親戚はいるものの、直系の家族が既に田舎におらず、姉妹ともに関東に住んでいることから、義母に、いずれこちらに来るようにと話をしていた。そして去年の年始から、田舎をどうしていくかを相談しようとしていたところで、世の中の事情が変わった。
その義母が、唯一、楽しみにしているのが、孫に会うこと。そして、娘たちに会うこと。だったのが、村から一歩も出なくなり、私たちも、村へは、むやみに入り込めないため、その趣向が、変わってきたのだ。
それは、どういうことかというと、娘たちの希望を聞いて、それに沿ったお取り寄せをして、娘たちの家庭に送ってくることが、最近の義母の楽しみになっているのである。
義母は、あまり、パソコンも、スマホも、操らない。電話で申し込めるものについては、自分でさっさと申し込みを、する。
ネット申し込みになるときは、大抵、私に、ミッションが、家内から、下される。
私は、もちろんのことながら、指示通りに手配をするのだが、クレジットカードで決済をするので、後日、義母から現金が届く。
お分かりだろうか。いつもの、切り上げだ。
しかも、丁寧に、4,038円のところ、5,000円入れている、と、書いてある。
心の中の、リトルkojuroが、呟いた。
お義母さん、いつものごとく、丁寧で、しかも、切り上げだな。
ありがたい話だ。手数料にしては、金額が、大きいからね。
しかも、全額、払ってくれているなんて。
恐縮だね。
家内は、いまだに、田舎のお米を送ってもらう。そして、そこには、なんだかんだと、お役立ち品のおまけが、入っている。
律儀で、優しい人なのだ。昔気質の。
ようやく、2回目の緊急事態宣言は、首都圏を含めて、ようやく解除された。
だが、第4波という次の波が来ていて、いまや、東京よりもむしろ、関西の方が警戒感が高まってきている。
田舎には、まだ、帰れない。
田舎の義母を思うたびに、1日でも早く、世の中が落ち着いて、本当の意味での、日常が戻ることを、心から願っている。
もう、私たちには、義母ひとりしか、親が、いないのだ。
少しでも、親孝行を、したいと、思っている。
心の中の、リトルkojuroが、ちょっと首をすくめて、呟いた。
お取り寄せも、払ってもらっているんじゃあなあ。
本当の意味での親孝行は、まだまだ、できていないな.....。
また、今日も、田舎から、宅配物が、届いた。
お義母さん、いつも、ありがとうございます。
そして、いつも、ごめんなさい。
きっと、近いうちに帰って、足の裏のマッサージと肩たたきを、させて頂きます。
心の中の、リトルkojuroが、呟いた。
結局、いつも、マッサージだな。