咀嚼
長男は、タコとイカが、苦手である。なぜかというと、噛んでも噛んでも、なかなか噛みきれなくて、飲み込むタイミングが、分からないからだという。
私は、タコもイカも、好きである。どちらも美味しいし、握りのネタにもなっていて、だいたい、タコもイカも、回転寿司に行くと、私は、必ずと言って良いほど、注文する。
長男がよく、言う。
それは、コジが小さい頃から、あまり噛まずに飲み込む癖がついているからなんだと思うよ。
そうなのかなあと思い、多分そうだと思う。
先日、街中にでなければならない要件があり、食料品売り場に行った。普段は、あまり食べないのだが、あまりにも美味しそうだったので、ちょっと、こういうものを買ってみた。
立派なタコだ。そして、ちょっと、値段が張った。だが、思い切って、買ってみた。
翌々日の夜になり、ちょっとアルコールもつけて、食べてみた。
アルコールは、なぜか、飲んだことの無いようなカクテルだったが、まあ、いいだろう。
すると、えっ、えっ....
美味しい。確かに、美味しい。
だが、噛みきれない.....。
必死になって、咀嚼する。数限りなく、咀嚼をする。それでも、なかなか、飲み込めるまでに、ならない。
はじめて、長男の気持ちが、よく、わかった。
私は、本物のタコを、知らなかったのだ。単に。
すると、家内が言った。
あのさあ、私、もう、食べられないのよね。
そして、出してきたのが、噛みきれなかったのであろう、タコの足だ。
心の中の、リトルkojuroが、静かに呟いた。
そうか、足は、3本あったと思ったんだよな。
しっかり、取られていたか。
むむ、しかも、これ、噛んだ後が、しっかり残ってるぞ.....。
聞くと、家内も、次女も、チャレンジしたものの、噛みきれず、少ししか食べられなかったと言う。
家内は、私の方を、じっと、見つめている。
私は、信条として、いかなる食べ物も、粗末には、しない。食べられると判別された食べ物は、きちんと、余すことなく食べられるべきなのである。
そして、また、咀嚼の時間が、始まった。
そして、数十分後、なんとか、食べ切った。
そして、お腹が、一杯になった。
食いしん坊の私が、珍しいなあと、自分でも思ったが、咀嚼を繰り返しながら、ゆっくり食べると、満腹中枢が刺激されて、満腹感が増すのだと聞いたことがある。なるほど、人間の脳は、大したものだ。
そう思ったのも束の間、心の中のリトルkojuroが、言った。
いやいやいや、コジ、忘れてるだろ。
実は....。
夕食前に、あまりにもお腹が空いて、ヨーカドーのフードコートで、ちょっとしたおやつを平らげていた事実を、すっかり、忘れていたのだ。
しまった.....。忘れていた.....。
心の中の、リトルkojuroが、呆れたように、静かに呟いた。
今日は、タコ三昧だな。しっかりと。
■追記■
本日と、明日は、私がnoteでフォローさせて頂いている、磯貝剛さんのカバー画像、「タコ」と「イカ」を、使わせて頂きます。
磯貝さんは、画家でいらっしゃいます。そして、小説家です。私は、磯貝さんの「箱」という作品を読んで、ファンになりました。独特の世界観があり、その世界に、私が興味を抱いたのは、ひょっとしたら、私が妖怪好きというのも、少し関係があるのかも知れません。
磯貝さんのカバー画像、絵が、いいな、と、思ったので、いつか、使わせて頂こうと思っておりました。そして、ようやく、使わせて頂くことができました。明日は、「イカ」を、使わせて頂こうと思っております。
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