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ソーシャルリスニングにおける、AIの使いどころ

みなさん、こんにちはソーシャルリスニングBlogです。
今回は、以前にも少し触れた「ソーシャルリスニングとAI」について考えてみたいと思います。

以前の投稿では「テーマ」と「コンテキスト」というフレームワークで、SNSデータを分析する際にAI活用をどう考えるべきか、という点に触れました。

今回も関連した話題ではありますが、少し確度を変えて、このトピックの解像度アップに取り組んでみたいと思います。

ソーシャルリスニングは大きく2つのパートに分かれる

まず、改めてソーシャルリスニングとはどういう営みなのか、を考えましょう。

SNSデータからビジネス活動に向けた示唆・ヒントを得る場合、基本的なプロセスは以下になるかなと思います。

① データを集める
② データを整える
③ 特徴を発見をする
④ 発見の意味を洞察する
⑤ ビジネスへの活用をまとめる

更に、これらの工程を大きく2つに分けると、①~③と③~⑤に分類できます。※③は両方に含まれる形です
前者の①~③は、データを直接扱って解析と呼ばれるようなデータ分析系の作業が中心になるステップです。また、後者の③~⑤は、そのデータから何が言えるのかを読み取り洞察して、ビジネスへの示唆・ヒントへと昇華させていくステップになります。

そして後半は非常に属人的で、分析者の「個のスキル」が問われる世界だと思っています。
このあたりに関しては、他投稿で色々と触れていますので、ご興味あれば是非ごらんください。

AIは前半パートが活きる道

そして、本題のAIなんですが、ソーシャルリスニングにおいての活用どころは、前半のデータ分析パートだと思います。データを集め、クリーニングし、何かしらの基準・ルールで分類し、そこから何かの特徴を抜き出してくる。この部分の工程をAIという「作業自動化プログラム」で人力を最小化していくことが重要です。

細かい話をすると、この部分の効率化(省力化)には必ずしもAI(人工知能、機械学習)を使わなくてもいいんですが。ルールベースの仕組みであっても、自動化・効率化・省力化になれば目的は達成しているので。
ひとまずここでは、仮にルールベースであったとしても、「人がやっていた手作業をプログラムが代理して同等のアウトプットを出す何か」という事でフワッとした意味で”AI”と呼ぶことにします。

実際には、機械学習プログラムって言うほど精度出ませんからね。特にリサーチの世界で求められる精度を考えると、現時点で民生品として使用できるAIに十分なクオリティのものって非常に少ないと思います。
実際には、機械学習モデルとルールベースモデルを組み合わせたものを「AI」と呼んでいるのが現実なんじゃないかと思います。

後半パートでのAI活用は限定的

さて、話をソーシャルリスニングに戻しましょう。

ツールや人工知能といったメカニカルや仕組みが活きる領域は、前半のデータ分析ステージまでで、それらを最終的なビジネスへの示唆に昇華するのは、人のチカラがないと無理だよね、というのは、海外のソーシャルリスニングメディアでも繰り返し謳われています。

https://thesilab.com/how-to-find-answers-when-words-arent-used/

一方で、最終的に分析のゴールに行きつくための「後半のパート」をツールやAIなどで何とかしようとすると失敗するケースが多くなります。
正確には失敗すると言うよりも、そもそも手も足も出なくて分析が一歩も前に進まないか、「こんな投稿がありました」「あんな投稿がありました」というファクトの整理で止まってしまいます。

実は、クライアント様の中でソーシャルリスニングを自前で行おうとするときの最も大きなボトルネックの1つ、とも言えるかもしれません。
議場会社のリサーチ部門の皆さんは、ソーシャルリスニングだけをやっている訳ではないので、そこまで時間をかけられないと思います。また、従来型リサーチのスキルを身につけなくてはいけない中で、ソーシャルリスニングのスキルをゼロから育てていくというのも現実的ではない、という事情もあるのだと思います。
そのような環境の中では、「効率的に」「経験値がなくても」「簡単に横展開できる」ことを求めてしまうので、分析の後半パートでもツールを使ってサクサクと形にできることを期待してしまうのは仕方のないことかもしれません。

ソーシャルリスニングの種類によってバランスは色々

さらに言うと、この前半のデータ分析パートと、後半のインサイトパートは、実は取り組むソーシャルリスニングの種類によってもそのバランスや、インサイトパートにどのくらい時間とエネルギーをかける必要があるかが変化します。

※ソーシャルリスニングの種類に関してはこちらをご覧ください。

一言でソーシャルリスニングと言っても、実は分析目的や必要なスキルセット、取り組むためのマインドセットもかなり違います。

「ソーシャルモニタリング」であれば、基本的には数字情報やKPIを追うことを目的にするので、データ分析パートの作業で90%は完了します。

「ソーシャルトラッキング」はKPIを負いつつ、その原因(因果関係)を分析することになるので、データ分析パートで答えが出るのは70%くらい。

そして「ソーシャルインテリジェンス」では、消費者のニーズやインサイトを投稿から分析・洞察することが求められるので、データ分析は全体の40%くらいで、半分以上はインサイト分析パートの作業になります。

ソーシャルリスニングをある程度の解像度で見ていないと、モニタリングもインテリジェンスも同じようなイメージで取り組もうとして、「うーん、どうして上手くいかないんだろう」といった袋小路に入ってしまうこともあるのかもしれません。

人が活躍できるようにAIを使い倒す

なんだか、ソーシャルリスニングにおいてAIなんて大して利用価値がないんだから人の分析が重要だ!みたいな雰囲気でてきましたが、言いたい事は逆で、「人が人にしかできない分析にしっかり時間をかけられるように、AIを最大活用していく」というのがソーシャルリスニングではとても重要だという事です。

AIのような自動作業ツールを使わない場合、人がひたすら目検していく、とか、何百件もコーディングする、といった方法がとられることがあると思います。これはこれで、人がコンテキストを読みながらデータに向きあうので素晴らしいことなのですが、とにかく時間がかかるので扱えるデータ量には限界があります。
そこでAIのような自動作業ツールをうまく使うことで、人海戦術では対応できないようなデータ量を扱ったり、人力を超えたスピードで結果を出し高速でトライ&エラーを回す、などができるようになります。

もちろん完全に人の手がかからなくなる、という事はさすがに現実的ではないと思いますが、人の手のかかり方を最小化しつつ、AIを使い倒すことで更に人が人らしい作業に時間を使えるようにしていきましょう。

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