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ファクトを積み上げた先に見えるもの

みなさん、こんにちは。ソーシャルリスニングBlogです。

前回は、ソーシャルリスニングを行う際にSNSデータにどう向き合うべきか、というテーマを取り上げました。

すごく大事なことなんですが、すこしテクニカルな側面が強かった気もしました。
そこで今回は、普段クライアントさんからお聞きするお悩みごとを意識した内容にしたいと思います。

普段、ソーシャルリスニング関連でクライアントさんとお仕事する中で、悩みとしてよく聞くのは「自分たちでやっても、こんな風にならない」どんな風に分析しているんですか?という相談です。

今回はここを分解してみましょう。

分析に深みが出ない問題

上記にあげたクライアントさんの相談ごと。悩みの正体は「表面的な分析で終わってしまう」ということかなと思います。

クライアントさんの中で、自社が契約しているツールを使い色々分析する結果、”こんな発言がある、あんな行動がある”という内容になってしまう。
「こんな行動をする消費者がいるぞ」
「あんな言葉を使う消費者っているんだ」
「消費者はこういったエピソードをもってたりするんだなー」
自前のソーシャルリスニングがこういった分析になるケースって多いんじゃないかと思います。

でも、本当は自分たちがやりたいソーシャルリスニングはこういうのじゃない…!!

と感じていらっしゃるクライアントさんは多そうですね。

「こんな発言がある、あんな行動がある」も間違っていないと思いますし、これもある種の分析のはずです。
でもこれだと「表面的」と言うか、「想定の範囲内」と言うか、「分析しなくても言えそう」な感じがしてしまう。

こういうのを博報堂さんのデジノグラフィでは、「ダヨネの壁」と表現されていました。分析結果を見せても「そーだよねー」と言われてしまう、データ分析者への返答として最も膝に来るやつです(笑)

(ちなみに、Noteはアフィリエイトできないので、これは純粋な参考情報です!)

やはり、せっかく一生懸命分析したのだから、社内の人が
「おーなるほどー」
「へーそういうことねー」

と唸ってくれるような分析がしたい。

ファクトの整理まではできる

さきほど取り上げた「こんな発言がある、あんな行動がある」分析は、別の言い方をすると
ファクトの整理」
ってやつです。

ソーシャルリスニングをする際によく利用されるテキストマイニングも、できるのはファクトの整理です。

また、タイムラインをひたすら眺めてスクショを並べても、これも結局はファクトの整理になってしまいます。

たまに、気の利いた投稿に出会うことができて「あ、もしかしたらこういうモノが欲しいって言っているのかも」みたいケースもありますが、でもなんか表面的な気がしてしまいますよね。


「欲しい」を分解する

こういった時には、”人が何かを欲しがる”という行為を「便益/ベネフィット」と「欲求/ニーズ」に分けて考えるといいかもしれないです。

「消費者が何を欲しているのか」を考えようとすると、すぐに「ニーズはなんだろう?」「ニーズを理解しなくては」という話になるんですが、ニーズ=欲しがっている、をもう少し高い解像度で考えることをお勧めします。

便益とは、消費者が直接的に探している「機能」や「特徴」です。
電子レンジを例にすると、電子レンジ内に入っているものの種類やサイズを見分けて自動で温め方を設定してくれる機能が欲しい、みたいなことです。

SNS投稿に言語化されているのは「便益」です。
「〇〇があるといいのになー」
「〇〇があって超助かったー!」
「○○ができないなんてがっかり…」
などなどは、すべて「便益」が語られてますよね。

一方で、その便益を欲するに至る背景となっている欲求が「ニーズ」です。
同じく電子レンジのケースなら、忙しい生活の中で家族との時間をもっと取りたい。そのためには調理や下ごしらえにかける時間や手間、認知負荷をできるだけ小さくしたい、みたいなものが考えられます。


言葉にできない

そして、とても大切なのは、このニーズ・欲求はSNS投稿内で言語化されていることはまずありません

このニーズ/欲求は、本人の中には確実に存在します。それによって彼ら・彼女らの行動がドライブされているのですが、このレイヤー/抽象度の欲求をメタ認知して、しかも、それを言語化できる消費者はそう多くないです。

そして、冒頭にあった「分析の深さ」「表面的でない分析」「ダヨネの壁」といった問題は、分析者がここに触れられるか、が重要になるような気がします。
(「分析」ってこういう”深さ”方向とは別の形もある気がするので、すべてがコレだとは言わないんですが、けっこう大きなポイントになる話だと思ってます)


推論で見えないものを見る

便益は言語化されてるが、欲求は言語化されない。
言語化されないものを読み取るのが分析者の「洞察」ってやつですね。

「洞察」と聞くと、なんだか分かったような分からないような、煙にまかれた感じしませんか?(笑)
出来る人はできるし、出来ない人はできない、みたいな「センス」の世界の話のように思えてしまいます。

しかし、私自身は、洞察はセンスではなく「推論の技量」だと思っています。

一般的に推論には3種類あると言われているようです。
①帰納法:Aはこうである。Bはこうである。ゆえに、Cという事が言える。
②演繹法:Xという前提がある。その上で、Aがあるという事は、その結果はCになるであろう。
③アブダクション:Xという前提がある。その上で、Aがあるという事は、Cという背景・仮説が得られる。

※ちなみに、推論に関しては、これが分かりやすかったです。

この辺の定義は色々あると思うので、ここでは厳密性には目をつぶっていただきたいです(笑)。

ここで重要なのは「アブダクション」で、ある事実(投稿)を見た時に、そこから「こんな背景があるのでは?」「ここからこんな仮説が見えてくるよね」に発想を広げることです。

紙面の関係で、洞察(推論)に関して詳細に立ち入ることは今回できないんですが、このステップを踏まない限り、「表面的」な「ファクト整理」に終わってしまい「だよねー」と言われる「深みのない」分析になってしまう危険性が高いです。

その仮説で他も説明できるか?

そして、その推論で出てきた仮説を、他の色々な投稿内容と照らし合わせていきます。
別の言い方をすると、ある投稿から推論した仮説(人はこんな時にこう感じて、こう考えるから、このように行動するんだ、という仮の理論)で、他の人の言動を説明できるか、の作業を繰り返します。

この繰り返しで、最初に掲げていた仮説は少しずつ形を変えて、軌道修正と微調整が進みます。

ソーシャルリスニングの分析は推論なのでスタートは仮説なのですが、このように複数人の言動(投稿)によってバリデーションされることで、結論に行きつく、といった感じですね。


まとめ


お疲れさまでした。今回は長くなりました(汗)。

今回のポイントをまとめるとこんな感じです。
①ファクトの整理が全てのスタート
②でもファクトの整理だけでは表面的
③便益から欲求を推論する
④仮説検証を繰り返して深みへ

やはり大事なのは、「洞察(推論)」です。ここの”ジャンプ”が無いまま、ただファクトを並べても深みをだすのは難しいと思います。
これが、テキストマイニングやAIの限界とも言えるかもしれません。



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