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金魚を売る不思議な電気屋さん

  「僕の昭和スケッチ」21枚目

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<画/もりおゆう 原画/水彩 サイズF5>

ひどく暑い日が続いた夏だったが、季節が変わっていくのはいつもどこか淋しい。今日は、夏の商店街の記憶。

昔、柳ケ瀬通りの南の入り口の角に電気屋さんがあり、毎年夏になるとその店先で金魚が売られていた。

青い縁取りの美しいホーローの洗面器の中で、涼し気に泳いでいた大小様々な金魚達…

ワキン、リュウキン、デメキン、黒い奴、赤い奴、でっぷり太って自慢げに尾を揺らす奴。棚に30個程ずらりと並べられた洗面器の中で、金魚達は夏を謳歌していた。

なぜ電気屋さんが金魚を売っていたのかはよく判らないが、その風情は柳ケ瀬の夏の夜の風物詩になって店頭を賑わせていた。

だが、いつの日か金魚はいなくなり、街も変わり、角の電気屋さんも今はない。


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