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ハンバーガー&ホットドッグ/アメリカに憧れた頃

 イラストエッセイ「僕の昭和スケッチ」71枚目

ホットドッグとハンバーガーを初めて見たのはアメリカのアニメ作品「ポパイ」の中。

ハンバーガー_ポパイ2

ポパイと言えばホウレン草ですが、そんな不味そうなものには目もくれず僕らが注目したのは、何と言ってもホットドッグとハンバーガー!

「なんて美味そうな食べ物だろう!」
僕らはみんなそう思いました。

それもそのはず、戦後15年経ったとは言え給食ではまだ脱脂粉乳のミルクが出ていた時代です。一般家庭では生活の中にお肉なんて滅多に登場しない代物でした。食卓に乗るのは、サンマ、アジ、塩鮭、サバ、イワシ…ようするに魚ばかりでした(当時は魚が安かったのです)。

その僕らが見たのがアメリカアニメの中で頻繁に登場するホットドッグとハンバーガー!

それは、もう夢の食べ物でした。
何しろ1960年代初頭の日本ではまずそんな食べ物は売っておらず、いわんや僕らの住む地方都市では聞いた事もなかったのです。

ハンバーガー

<画/もりおゆう©  原画/水彩 サイズF5>

それから10年以上が過ぎ…

ようやく僕が高校になった頃、僕の育った柳ケ瀬の街にハンバーガーショップが初めて登場しました。それは、本当に衝撃でした。今考えると不思議な事に、それはマクドナルドなどではなく、普通のハンバーガーショップでした。それが、赤と白のアメリカンな内装と共にある日街角に不意に現れたのです。

「カッコイイな〜」、口から出たのはその一言。

さっそく入店し恐る恐る注文すると、それは不思議な半透明の紙に包まれていて手に持つと熱く、目を丸くしました。

まるで、ポパイが目の前にいるような気分。

食べてみるとナツメグ(ハンバーグに入れる香辛料)の初めての香りと味に戸惑いはしたものの、衝撃の美味しさ!

ぶっ飛んだのを覚えています😋

ホットドッグについては、やはり同じ頃にパラパラと出始めていましたが、どれも「違うな〜〜〜」という感じでした。野菜とか、余計なものが入っていたり、パンが柔らか過ぎたり、逆に固すぎたりしたのがその原因でした。

それが、ようやく納得のホットドッグに出会ったのは、時も随分流れて「ドトール」のホットドッグ(ジャーマンドック)を食べた時でした。パンとソーセージとマスタードだけで出来上がっていて、パンの美味しさもこれぞと膝を打つ言うものでした。

僕達がポパイを見て憧れた時から、日本人の食生活は目眩く移り変わって行き、ハンバーガーやホットドッグが夢のような食べ物だとは今や誰も思いません。

けれど、僕らの世代はハンバーガーやホットドッグを夢と一緒に食べていたのです。


*ポパイはアメリカのマンガ家エルジー・クリスラー・シーガーによるコミック作品. 日本では1959年から1965年までTBS「不二家の時間」で初放映.
ポパイの画像はcopyrightsASIAより転載.


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