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エッセイ。

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出会ったものや考えたことについての文章。思想や思考。看護師としての文章も。
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記事一覧

小さな背中の大きな人

先日、山手線に乗った。

乗った瞬間に感じる違和感。
乗客の空気と異臭。
ひとりの男性が座って眠っている。
彼の上着は汚れている。
彼の横は2席空いており、彼の前に立つ人はいない。
私と一緒に乗り込んだ女性は「くさっ」と言って車両を変えた。

たしかに物凄い強い臭いで、介護の現場に行っておりこの臭いに慣れているはずの私でも吐き気をもよおした。

私に、何が出来るのだろうか。

寝ている彼の手から杖

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やりたい事を汚したくないだけなの

湿った生温かい風と鼻のむずむずと纏う衣の変化に春を感じる。肌で感じる、というやつ。

今年の桜をめでる機会は設けられず、でも今目の前で花びらが舞っていて、今年も桜が終わったんだなとあぁ綺麗だなの反対側の気持ちが同時にあって、そういうのがなんだか切なくて、その切なさが季節の変わり目の合図なのかなと考ている。

感じる。春を。

新しいこと。をスタートすること。

春。

新しいことに関わることになっ

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おばあちゃんの哲学

「あんた、まだまだ若いわねぇ」

風の強い日だった。これから雨が降るらしいよ、でも今はまだ日差しもあって暖かいおだやかな午後。この部屋は暖かい。目の前にいる陽気な人たちの体温のせいもあるのだろうか。おばあちゃん達は日本茶を啜りながらわいわいと話している。

役者の仕事だけでは食べていけない私は、四年間の大学生活を無駄にしない為に卒業間近にせっせと勉強して勝ち取った看護師の資格を無駄にしては罰が当た

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真実の在りかが分かったような気がする

「ひとがひとり死んだのに、勉強させてもらっただなんて、自分はどんだけの人間なんだよ」

現役でバリバリ看護師をやっている友達が私ともう一人の友人に宛てた長文のLINEには仕事で起こった出来事の全容が順序立てて記されていた。医療の現場で働く彼女は毎日重めの責任をおんぶしながら働いている。

私はそれが重くて荷物を降ろしてしまった。看護師を辞めてしまった。しまったと言ったけれど、いや、おんぶする事で背

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