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朦朧シャトルラン

7月2日日曜日。2級建築士の試験に落ちた。
落ちた、というよりリタイアという方が正しい。

約半年の努力が水の泡になった。
と同時に、長い事身につけていた肩の荷がようやく降りた。


昨年の10月、Rと別れてうつ病が回復期に差し掛かり始めた頃
親の会社に転職することを見据え、社会復帰のリハビリがてら宅地建物取引士を受験した。
そして、合格を手にした。
死にたいと思うことはだいぶ減った頃だったが、それでもうつ病真っ最中で
宅建に合格したのは、我ながらよくやったと思う。

いくらステータスや他者からの承認が得られようと、自分の中に目的や意義を見出せない物事に関しては全く打ち込めない甘ったれな性格な僕。
今まで資格試験というものに全く必要性や興味がなかったが、この時は
「ただでさえ迷惑をかけているのに、これで試験に落ちたら(社会的に)死ぬ」という9割の強迫観念と
「受かったらうつ病の自分の事を、自分も周りも少しは受け入れられるようになるかも」という1割のかすかな希望を燃料に走り切った。

受かった時、めちゃくちゃ嬉しかった。
めちゃくちゃ自分を褒めた。「すごいな、お前」
合格発表の日、脳内はお祭り騒ぎ。神輿を担ぎながら10kmくらいウィニングランをしていた。

ただ、のぼせ上っていた僕は一瞬で現実に引き戻された。

「よかったね。じゃあ次は建築士受けよう。」


この時、僕は燃え尽きてしまった。

我が家の会社は建設と不動産をしており
(過去の記事にも書いてあるが)大学で見事に建築系へのモチベーションが無くなってしまった僕は、継げるなら不動産部門を継ぎたいと思っていた。
その意向を確認したところ、「継ぐなら先代と同じく建築士の資格がないと箔がつかない」とのこと。

先述した通り、僕は自分の中に目的や意義を見出せないと打ち込めない性格である。
それに加え、(経験した方にはわかってもらえると思うが)うつ病を患うと精神のスタミナの燃費がアメ車並みに悪くなる。
好きな物事でさえ取り組むのがやっとなので、そうでない物事になると燃費の悪さに拍車がかかる。

だがこれと言ってやりたいことも見つかっていないし、何かに取り組んでいれば病気の事を考えずにいられる時間を作れるかも。
僕の中に受ける理由は見当たらなかったが、断る理由も見当たらなかったため、提案を飲んだ。

今振り返るとこの約半年で、僕に必要な意義や目的を見出すことが出来なかったのだろうなと思う。


「働ける場を設けてもらっている立場で甘えたことを言うな」
「病気のせいにして逃げているだけだ」
そう言われても仕方ないと思う。し、どこかでそう叱咤する自分がいる。
実際に自分でも甘えなのかそうでないのかの判断をしかねてる。
なので異論は認めます(今は受け止めるキャパがないのでぶん投げていきますが)。

うつ病や不安障害をはじめとする精神疾患に罹ると、必ず「無理をしないように」「自分に優しくしましょう」「逃げるのは悪いことじゃない」などと言われるが、そもそもそれをスムーズに受け入れる事のできる人間は精神疾患には罹っていないと思う。

クーラードリンクなしで、溶岩地帯でシャトルランをしているような状態だったが、それでも試験まで何とか勉強を続けた。
最悪1問しか解けなくても、ほぼ毎日机には向かっていた。

試験当日。
他人に囲まれ密室にいる不安感。同じ場所に8時間以上いなければならないプレッシャー。勉強していたのが嘘だと思うくらい開かない引き出し。
それらがトリガーとなり、発作を起こしリタイア。

書いていて情けなくなる。
今回の出来事を書くべきか迷った。僕より辛くて苦しい思いをしている方や僕より遥かに努力をしている方がたくさんいる中で、眠たい事を口走っているかもしれない。

それでも、書く。都合の悪い黒歴史も、呆れられるような出来事も。
いつか病気を克服し、自分の記事を読み返して
「なんか試験に落ちたことでウダウダ言ってるわ~、恥ずかし」
なんて笑い話にできる日が1日でも早く訪れる事を願いながら。



なんて四の五の言いましたが、また来年頑張ります。






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