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コルクとスクリューキャップの比較テイスティング

前回の栓の選択というところに絡んだお話です。

夢は家に飲んだワインのコルクでアートを作ることです。
どうもおくむらです。

いつもは論文とかデータを重視しているので堅い文章になりがちなのですが、今回は経験に基づく話をします。

こういった話の方が読者の方にとっては面白いのではないかなとは思いますし、書きやすいのですが、こういった方向性を多くしてしまうと、重い方をそっちのけでやってしまうのであまり多くしすぎないようにします。

今回は題名にもなっていますように、コルクとスクリューキャップの違いというものを見ていきます。

コルクとスクリューキャップの違い

皆さんはどれぐらいこのトピックについて関心があるのでしょうか。

日本の感覚でいうとスクリューキャップはまだまだ安ワインのイメージなのでしょうか。それとも変わってきているんですかね。

いずれにせよ世界のワイン業界はスクリューキャップ側に少しずつではありますが傾いているといっていいでしょう。

スクリューキャップの利点として挙げられるのは

コルク臭が起きない(厳密にはワイン自体には混入する可能性はある)。
酸化しにくい。
開けるときに楽。
出荷後のクオリティコントロールが楽。

といったものが主に考えられます。

現状ワインの科学はボトルの首の部分の気体の量や、コルクやスクリューキャップの空気の透過性といったところに足を踏み入れています。

そういった中で、コルクは天然コルクや合成コルクだけでなく、その中間的なものや高品質の天然コルクを作った後の破砕コルクを固めて作るものなどもでてきています。

何年ぐらい熟成させるワイン用なんていうラインナップの作り方をしているコルクもあります(DIAMコルク)。

こういった背景からボトルの栓の選択肢はかなり多様化しています。

一方で日本の生産者の元にはいいクオリティのコルクが入って来ないなんていう噂も聞くので、実は日本では選択肢は少ないのかもしれません。

それはそうと、そういった多様化の裏には生産者のワイン造りの科学化があります。

どの栓にすることで自社のワインが最大のパフォーマンスを発揮するのかということを考えながらコルク1つを選ぶのです。

そのときの空気の透過性というのは天然のコルクでは一様にはなりません。
そういった点でスクリューキャップは品質の担保が簡単なのです。

一方でスクリューキャップがメジャーになってそこまで時間が経ったわけではないので、長期熟成に関しては未知の部分もあると思います。

そのため長期熟成型のプレミアムワインにスクリューキャップが用いられる日は、すぐには来ないと思いますが、環境やクオリティのことを考えていつの日かなくなる日が来るかもしれません。

ここまでが導入です。

ここまでは一般的に言われているスクリューキャップとコルクの違いを書いています。

ここからはお世話になっているワイナリーさんで行ったテイスティングの時の話をします。

違う栓の比較テイスティング

このワイナリーはかなりの生産量があり、ボトリング時期に応じて栓を変えるということをしているそうです。

その栓の選択のために行うテイスティングに参加してきました。

これを毎月しているらしく、今回はボトリングしてから12か月のワインだったそうです。

テイスティングはもちろんブラインド。

もちろんワイナリーの銘柄ですから、どのワイン、どのヴィンテージなんてことは全てわかっています。

ただわからないのはどういった栓で閉じられているかだけ。

もちろん飲んだ段階で栓の種類などわかるはずがありません。

そんなテイスティングやったこともありませんでしたし、なによりコルクの名前なんてほとんど知らない。

ここでテイスティングの実況をしても仕方がないので、ネタ晴らしをすると、コルクの種類はずばりDiam1、Twintop、Screwcap、Diam3の4種類でした。
といってもピンと来ない人が多いでしょうか。

Diamはかなり有名なコルクメーカーで、TCA(コルク臭)が出ないコルクの製造法を確立すると共に、この後ろの数字を製品の品質保証期間として様々なタイプのワインメーカーから支持されています。

このナンバーは30まで、つまり30年はコルクが劣化しないという保証を付けたDiam30まであります。

Twintopではコルクの上下はナチュラルコルクの素材を用い、その間は圧搾コルクを使用したものになっています。

これはコルク会社の最大手AMORIMがリリースしているコルクの一種で、日本ではあまり採用されていないかもしれませんが、きた産業株式会社のレポートにはしれっと出てきています。

あまりこれといった情報はつかめなかったのですが、恐らく純粋な圧搾コルクや合成コルクより酸素透過度が低いのだと考えられます。

Screwcapはどこのメーカーだとかいう話は聞きそびれましたが、スクリューキャップです。

テイスティング結果

そしてなんとこのテイスティング結果がですね。

2種類のワインを4つの栓でテイスティングをした後に総評と自分の好みを言うのですが、
どちらもスクリューキャップを一押しにしていました。

というのも自分は白ならヴィオニエのようなアロマティックなワイン、赤ならそれなりにしっかりと樽の効いた赤がスキなんですね。

それで一番アロマティックなやつを選んだわけです。


それがどちらもスクリューキャップ。

これすごくないですか。
スクリューキャップもですけど、私も。


どちらもスクリューキャップの特性を汲み取って、好みとして捉えることができています。
スクリューキャップであることによって香りの揮発、酸化が防がれます。
そのため香りの強さという部分で差が出てきます(Intensité OlfactiveとIntensité aromatique en bouche)。

また意図的に少し残しているというガスもスクリューキャップで少し多めというジャッジをしてしっかりと捉えています。

しかし、なぜスクリューキャップのワインの色が濃く映ったのかは不明です(Intensité Colorante)。

さらにGas感やアロマの強度という点ではTwinTopもScrewCapの次点に評価を置いており、これもまた恐らく酸素透過度を反映しているような気がします。

しかし実はこの結果がわかるまでは少しビビっていました。

というのもこのテイスティングのコメントをするのは順番的に最後で、他の4人の感じたこととはかなり異なっていたからです。

4人の好みとは全く合わなかったですし、特に社員の方はそのワインがどうあるべきなのかということも考えてのジャッジなので、総評にもかなり差がありました。

さらに4人ともプロなので、さすがに自分のジャッジはおかしいのか?とも思わされました。

しかしここでは私は意思決定には参加しないテイスターだったので、自著にも書いたように、しっかりと「スキ」なものはどれかということを貫きました。

そしてこの結果です。


スクリューキャップ万歳。

意外と自分の鼻と舌も捨てたもんじゃないなぁなんて思いましたとさ。


もしソムリエや造り手の方で、栓の違いの判別は簡単だよっていう方がいらっしゃいましたら、
あ、そうなんですか、図に乗ってすいません。
という感じなのですが、少し気分の良かったテイスティングでした。

そして意外と栓の違いがワインに及ぼす影響も捨てたものじゃないので、造り手の方々は時間こそかかりますが、色々な栓を順次試していかれてはいかがでしょうか。

参考資料:
http://www.kitasangyo.com/e-Academy/wine/wine_closure_column.pdf
https://www.amorimcork.com/en/products/catalogue/twin-top/

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