オークチップテイスティング

オークチップテイスティング

日本でもオークチップが解禁されてもうしばらく経ちます。

個人的にはオークチップは安価でかつ私の好物であるバニラ香や樽香がしっかり付くので大賛成なのですが、使うのはなかなか難易度が高いそうです。

以前インターンシップで働いていたワイナリーもトライはしてみたがどうにもあまりうまくいかなかったそうで。

そのときの状況を詳しく知っているわけではないのでそこに関してはあまり書くことができないのですが、幸いにもフランスにて「オークチップテイスティング」というものをする機会に恵まれたのでその時のことをレポートにまとめます。


オークチップとは

そもそもあまりワインに馴染みのない方はオークチップとはなにかというところからはじまると思うのですが、いかがでしょうか。

このブログを読んでくださっている方に説明するのも野暮かと思いますが、ワインをなぜオーク樽で熟成させるかというと香りと味わいの側面でいい影響があるからなのです。

香りはオークの種類や内側の焼き加減によってバニラやチョコレート、コーヒーのような香りを与えると言われています。

この甘い香りはなんともクセになるので、一度気にしてワインを飲んでみてください。

また味わいの面では、酸化と抽出の影響で渋みが抑えられます。

もう少し抽象的な表現を使うと、味わいがまろやかになったり口の中での広がりが大きくなったりするのです。

たまに樽で寝かせることで渋くなることがありますが、それはタンニンが樽にもあるからという風に考えて頂ければと思います。


そしてそんなオーク樽の代わりに使われるのがオークチップです。

オークチップは樽で寝かせることで起こる酸化という側面の影響は見込めませんが、バニラやチョコのような甘い香りをつけるという効果や渋くしたり、まろやかにしたりという効果は得ることができます。

そしてそれは樽で寝かせるときと同様に木材の種類や焼き加減などによって違いが出てきます。

酸化という側面でも実はMOX(マイクロオキシジェネーション)といった方法を取れば樽使用の有無に関わらず意図的な酸化を促すことができます。


前置きはこれぐらいにしておいてオークチップテイスティングの中身を見ていきましょう。


オークチップテイスティング

まずこちらではオークチップの利用を試すためのトライアルキットが販売されているようです。
詳細はこちら

éが文字化けしてますね。英語ページもあるので是非。


セットの内容は11種類の木片、その説明の2点です。

こちらのワイナリーではBag in Boxを用いてワインと木片を投入して熟成させていましたが、その辺りは少量かつ酸化の影響を受けないような状態を維持できれば特に指定はないと思います。

もしかしたらこのBag in Boxもセットに含まれているかもしれません。

箱の外装(トップの画像)を見る限りオプションかもしれませんが用意はあるのでしょう。

もちろんワインは付いてきません。
余談ですが、日本でこういうキットとワインのセットで売っていたら面白そうですよね。
というか取り寄せれるなら是非大手にはトライしてほしいですね。


それはそうと、バッグに所定の木片とワインを入れて待つこと数か月。

今回のテイスティングは2か月だったのですが、そのあたりの長さはワイナリー側の裁量で自由に決めればいいと思います。

こんな感じで並べます。

この箱の中の銀のバッグには同じワインを入れます。

それに違う種類の木片を入れているイメージです。

ちなみに1つめは木片が入っていないもの、つまり比較用のワインになっています。

そして各々の箱に木片の特徴が書かれています。

例えばある箱にはバニラの香りをつけると書いてあり、違う箱には香りはつけないがまろやかさが増すなんて書いてあったりするのです。

そして何がすごいって結構その通りになるワインも多かったんです!

香りがつかないっていうやつでは香りはつかないけど、味わいは確かに比較用ワインと比べると違うとか、バニラのやつはありったけのバニラの香りがしたりとか。

ちなみにこの木片を入れたワインはかなりその個性が際立つので単体で美味しいと思うことはほとんどなかったです。

これはあくまでもテイスティング用キットですからね。

トライアル版です。

そのためこの箱から100mlのメスシリンダーに好きな割合でワインを配合していきます。

20mlを3番目から、60mlを5番目から、7と8番目から10mlずつってな感じです。

それで思うような味わいができるまでトライしてその割合を決定します。


そしてそのあと作りたいワインの量に対しての特定の木片を購入します。

そしてその購入した数量分の木片をタンクの中に入れて、最後にアッサンブラージュ(この場合は全部を混ぜる)することで100mlシリンダーに作ったワインと同じ味わいのワインができるという流れです。

オークチップってほんとに一辺2cmの立方体ぐらいのサイズだったりします。
下の画像は先のサイトの官能評価の例を拝借してきたのですが、2か月、3g/Lという量で効果を測定していることから、如何に少量の木片で効果が得られるかがわかるかと思います。


このオークチップをうまく使って香りや味わいに樽と同じような効果をもたらした上でうまく酸化状態も管理出来たら、オーク樽の良さを安価に手に入れることができます。

それにオークチップは樽のように木を浪費することもありません。

オーク樽は元々味わいの面だけでなく、輸送や貯蔵の側面でも必要とされていたものでした。

そういうことも考えると、輸送や貯蔵ではオーク樽である必然性というのは薄れてきており、仮に味わいの面でもオーク樽に劣らないような技術ができてくれば、生産者、消費者、環境すべてにプラスに働くのではと思います。

個人的には今後もっと広まってほしい技術の1つですね。

以上フランスよりオークチップテイスティングでした。

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奥村 嘉之/WineHacker
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