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脳卒中者における歩行持久性の評価指標

こんにちは!
理学療法士のyukiです。

早速ですが、MCIDという言葉を聞いたことがあるでしょうか?

臨床での結果を解釈する上で、測定誤差、というものから免れることは基本的にできません

どういうものか簡単にいうと、測定者間もしくは測定間ごとに多少の数値の誤差が出てしまうということです。

例えば、運動機能評価であるFugl-Meyer Assessmentが今日は21点だったが、明日測ると23点だったなどの誤差は当たり前にあります。

逆にいうと、これを点数が良くなった、運動麻痺が改善した、と解釈するのは少し危険です。


では、どのぐらい改善していれば、臨床的に意味のある改善を示したと認められるのか、この指標にMinimal Clinically Important Difference(MCID、エムシーアイディ)と呼ばれるものがあります。


これは、各評価ごとに検証がされています!

例えば、FMAに関しては以前、下記のような記事でも評価法とともに記載しています。↓

FMAの慢性時期に関しては、6点以上の改善で臨床的に意義のある有意な改善を認めた(MCID)と解釈することができます。


この数値を知っておかないと、治療により本当に効果があったかを適切に解釈することができません!

適切に解釈ができないと、それまで続けてきた治療が本当に効果があったかどうかを適切に評価することができないと言えます。


そのため、各評価でMCIDはおさえておきましょう!


そこで、今回の記事は、脳卒中者に対する6分間歩行テストのMCIDに関する2018年のかなり最近の論文からのデータを和訳してまとめています。

では、紹介する論文はこちら↓


このnoteについて
論文のImpact Factor:2.893
参考文献数:18本(pubmedにてリンク)

では、早速いきましょう!



はじめに



6分間歩行テスト(6MWT)は、脳卒中者に対してよく用いられる歩行評価指標の1つです。
本来は心疾患や呼吸器疾患の患者を対象とした最大酸素消費量の検査として開発されましたが(1,2)、6MWTは有効性(3-8)と信頼性(9,10)の高い評価法であり、Academy of Neurologic Physical Therapy(神経理学療法学会)で脳卒中者や神経疾患患者の継続的な指標の一つとして強く推奨されています(11)。


結果指標の重要な心理測定的特性は、変化に対する”感度と反応性”と言われています!
それぞれの定義はLiangらにより以下のように定義されています(12,13)。


感度:変化が重要であるかどうかに関わらず、変化を測定する能力。測定誤差や患者の変動を超える変化量のこと。

反応性:重要な変化を測定する能力

これらのそれぞれの指標は下記の数値で表されます。

感度:最小可検変化量(MDC)

反応性:臨床的に意味のある変化量(MCID)


これらの数値は、臨床のスコアの変化を解釈する上で重要な指標になります。

MDCは、変化のスコアを解釈する上で便利ですが、安定している患者では変化が測定誤差や変動しているという情報しか得られないため、不十分な解釈であるとされています。

その点、MCIDは臨床的に重要な指標を示す変化となるため、臨床評価の変化においては重宝されます。


これまでの先行研究で6MWTにおいては、

MDC
慢性期例で29m
回復期例で54m

と推定されています(7)。

MCIDに関しては慢性閉塞性肺疾患、肺疾患、冠動脈疾患、線維筋痛症、高齢者で14.0mから156mと推定されています(14-17)。


一方で、脳卒中者に対する6MWTのMCIDは十分検討されていないのが現状です。


そこで、本研究の目的として

脳卒中者の6MWTのMCIDを推定すること



対象と方法


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