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脳卒中者の痙縮評価! Modified Tardieu Scaleの評価者間信頼性

こんにちは!

理学療法士のyukiです。

脳卒中治療において、筋緊張評価は、ほとんど毎回行う評価項目の1つではないでしょうか?

一般的によく筋緊張評価に用いられているのは、Modified Ashworth Scale (MAS)が行われています。

しかし、MASでは、反射性要素と非反射性要素を区別することが難しいとされています。

一方で、これらの要素を区別する評価方法が存在します!

それが、”Modified Tardieu Scale(以下、MTS)”です。

この評価方法を用いることで、反射性の要素か非反射性の要素かを評価することが出来ます。

ただ、この評価は段階づけで点数化されており、評価者間でバラつきが出てしまうのではないかという点が懸念されています。

臨床においても、なぜその評価を用いているか?はセラピスト間または対象者に病態を説明する上で重要なことだと思います。

そこで、今回はそのような評価者間信頼性(誰が行っても同様の結果になるか)を評価した英文を和訳して紹介します。

本日の論文はこちらです↓


では、内容をまとめていきます。


はじめに

脳卒中は、痙縮を引き起こす主要な疾患の1つです。

脳卒中後の痙縮の有病率は50%と報告されており(1,2)、急性脳卒中後1ヶ月以内に発症すると言われています(3,4)。

痙縮とは・・・

"伸張反射の過剰な興奮性に起因する、伸張反射の速度依存的な増加を特徴とした運動障害"
として最もよく説明されています(5)。

この定義は、痙縮の根本の異常は、伸張反射の過剰な興奮性であり、その結果、受動的な動きに対する抵抗が増加する可能性があることを示唆しています(6)。

 痙縮の臨床測定ツールとしては、AshworthおよびModified Ashworthスケール(MAS)が用いられていますが(7)、速度依存性の痙縮の特徴を測定出来ないことから、その妥当性が疑問視されてもいます(8,9)。 

Vattanasilpらは、Ashworth Scaleは筋痙縮の等級付けであり、”神経および末梢性組織の関与”を区別することができないと述べています(10)。

神経学的要素(反射性要素):過活動の伸張反射によるもの
末梢または生体力学的要素(非反射性要素):コンプライアンスの低下をもたらす腱や靭帯、関節自体を含む軟部組織の変化によるもの(11)

感じられる抵抗感は、神経成分のみだけでなく、生体力学的要因(軟部組織のコンプライアンスや関節の硬さなど)によるものであると報告されています(12)。

これらの問題に対して、

1954年、Tardieuらは痙縮を測定するためにTardieu Scaleと呼ばれる臨床尺度を開発されています(13)。
この尺度はHeldとPeierrot-Deseillignyによってさらに修正され(14)、その後BoydとGrahamによって修正されたことで、現在ではModified Tardieu Scale(MTS)として知られています(15)。


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