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脳卒中者の反張膝を分析する


脳卒中者の歩行パターンでよく観察される反張膝は、麻痺側立脚期を安定させる戦略として見ることもできますが、長期的な予後を考えると好ましい戦略であるとはいえません。

当然ながら、この反張膝に対して分析を行い治療に反映する必要があります。

一方で、膝関節は中間関節であるため、特にCKCにおいては股関節や足関節の動きにも依存しやすい関節です。

そのため、分析に難渋するケースは多いのではないかと思います。


反張膝は、主に歩行中のLRからMSt、TStまで観察されることが特徴の1つになります。

膝関節が過伸展していることから、一般的に脳卒中者の反張膝の原因の多くは、”大腿四頭筋の筋力低下”と解釈されることが多いように思います。

そのような分析から大腿四頭筋を鍛えるために、

「膝を軽く曲げて歩行しましょう」だったり、平行棒を把持した状態で膝を曲げていく軽いスクワットのような課題設定をされている場面も多々見てきました。

ここで疑問視して頂きたいことは、反張膝の原因は”大腿四頭筋による影響”なのかということです。

当然ながら脳卒中により大腿四頭筋も弱化筋となりやすいことや歩行時のLR~Mstに大腿骨を前方へ誘導することを考慮すると、1つの考察としては良いかもしれません。


ただ、より生体力学的な解釈で反張膝を分析した内容する必要があり、これらを知ることで介入は大きく変わると思われます。


考察ポイントは大きく2つあります。

1つ目は股関節や足関節コントロールから膝関節を診ることです。


そのためには正常歩行を知る必要があります。

反張膝が観察されるLRからMstにかけて、正常ではどのように動いているかを観察していきましょう。

Perryらの歩行分析では下記のように解釈されています。

LRからMstにかけて

股関節:大殿筋の等尺性収縮により、骨盤帯と股関節の協調的な動きに働く

足関節:下腿三頭筋の等尺性収縮により、下腿前傾にブレーキをかけて足部の動きを安定させる

つまり、これらの動きから解釈すると、

下腿三頭筋の筋収縮によって安定した足部に対して、大殿筋で固定された骨盤帯が乗っかるイメージで股関節、膝関節、足部の安定性が確保されることになります。


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繰り返しますが、このように、

大殿筋、下腿三頭筋のそれぞれが機能することで、固定された下腿に対して骨盤帯が誘導されていき、相対的に股関節と膝関節は円滑な伸展運動が生じることになります。


一方で脳卒中者のLRとMstはどのようになっているのでしょうか?

反張膝に関連する特徴的な所見は下記であると考えています!

1. 下腿三頭筋の痙縮(筋緊張亢進)に伴う機能不全により足関節底屈位(下腿後傾)

2. 大殿筋の随意性低下(筋出力の低下)に伴う機能不全により股関節屈曲位(骨盤と股関節を結びつけられない)


当然ながら上記のように至るまでにICの動きは重要ですが、今回は割愛致します!

では、上記のような所見はどのような状態と言えるのでしょうか?

下記の画像をご覧ください。

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本来なら、安定した足部(下腿)に大腿骨(骨盤帯含む)が乗っかることで膝関節の円滑な伸展を促せましたが、それぞれの筋群が機能しないことで協調的な働きを失い、膝関節のコントロールが不良となってしまいます。

当然ながら、足部が底屈位になることで、膝関節には後方へのベクトルが生じることになるため、これらの動きを助長するものになります!


上記のような解釈すると、大腿四頭筋のみを疑った場合とアプローチが全く異なりますね。

個々の症状によって、最も介入すべきポイントは異なると思いますが、主に大殿筋を中心とした股関節伸展筋の活動や足関節底屈筋群の痙縮抑制は重要に思います。

また、足関節底屈筋群の痙縮は麻痺Stageの高いレベルでもコントロールが難しい場合が多いため、注意深く評価して良いと思われます!


ここまで2つの分析を行ってきましたが、更に注目すべきはCKCにおけるハムストリングスの筋活動です‼︎

まずはこちらの画像を確認ください!

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