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【Vol.4】学級づくり&授業改善のヒント💡

今日は❶コンセプトを基盤とした学級づくり、❷個別最適化の学習を目指した授業改善のヒントの2テーマを取り上げようと思う。

1.コンセプトを基盤とした学級づくり

(1)はじめに


これから紹介することについて、あくまでも僕自身が実践してきた一事例に過ぎない。そもそも、特別支援教育に「絶対こうだ!」という答えはない。しかし、より良い考え方、より良い指導、より良い支援、があるのは事実である。
 

今回は私が信じて止まないことを少しでもお伝えできたら嬉しいです!


(2)もし、自分の学級が一つの会社だったら?


「もし、自分の学級が一つの会社だったら?」と考えたことはありますか?「あなたの会社は、一体、何の会社なの」と聞かれたら「なんて答えようかなぁ?」とふとした時に自問自答することがあります。

毎月、給料が30万円手取りであるとして、知的の特学で生徒がMAXの8人としよう。すると、一人あたり1ヶ月4万円くらいってことか。毎月、保護者がこの金額を封筒に入れて持ってきたら、自信を持って受け取れるかな?

他には特学の予算は学校の予算の中でも上位につけてるな。例えば年間の予算が60万円としたら、月5万円を経費として使えるな。これだけ予算があれば、個別のパーテーションを買って、個別の学習で刺激を減らした活動に使えそうだな。

今度、小学生が見学に来て、保護者から「うちの子、刺激に弱くて・・・。他の子と一緒に勉強できるかしら?ご迷惑をおかけしたくないの」と言われたら、このパーテーションを使っている場面を見てもらえると納得してもらえるはず、とか。

とにかく、社長になったつもりになって考える。


スタバのコンセプト


例えば、みんな大好きなスターバックスがある。スタバのコンセプトは「3rd Place」なんだって。つまり、自宅でもない、家でもない、第3の場所を提供して、美味しいコーヒーを飲みながら店内でくつろいで幸せな時間を過ごしてもらおう、みたいな思いが込められている。

そうすると、『「3rd Place」に似合う接客って何だろう?』とか、「カップはどんなどんな物にするといいかな?」とか、コンセプトに沿って、様々なことが決まってくる。

最初の接客については「お帰りなさい!」なのか「いらっしゃいませ!」なのか「こんにちは!暑かったでしょ〜!冷たい飲み物でゆっくりしてください!」なのか、言葉の選び方も変わってくる。なぜ、言葉が変わるかというとコンセプトがあるからだ。

じゃあ、自分の教室を思い出してほしい。とある会社のオフィスが教室だと仮定するとこの教室にコンセプトがあるのだろうか?毎日、来店してくれるお客さん、つまり、生徒は満足して家に帰っているのだろうか?家に帰ってきて、サービスを受けた生徒は、「楽しかった!」と親に伝えるくらいの価値を提供できているのだろうか。いつしかそんなことを考えるようになった。

そして、特学は「就職活動」ならぬ「就学相談活動」、そう「就活」がある。公立と言えどどの学校にどんな先生がいて、どんな授業をしていて、そこに預けると子どもはどのような姿になるのか、僕たちは入学前から厳しい目で評価を受けている。

さらに、どんなに素晴らしい学級を作り上げても自分が異動すると全く別の組織になってしまう。よく聞く話によるとA先生が居た時は、とても良かったけど、B先生に代わってから全然良くないなどである。これは教育の世界のみならず、ビジネスやスポーツの世界でも珍しくないことである。

ならば、自分が営んでる学級にわざわざ足を運んで、就学の場を選んでくれた「価値」を考えて仕事をしなければならない。それを定義づけできなければ、それを根付かせなければ、いつか自分が現場を離れた数年後には、全く別のものに変わってしまう。

そんなことを考えると今やっている先生たちと最高の特学を、最高のチームを、何より、最高のコンセプトを創って実践していきたいという想いが強くなった。


まず初めにコンセプを中心に据えた学級運営への転換を図るために考えたのは、僕たちの学級は「学びの主役=学び手」と呼べる学級にしたいということだ。

しかし、肝心のコンセプトがなかなか決まらない。これこそ特学の学級運営で上手くいかないポイントなのだと思う。そう、「お題がないとみんなはりきれない!」のである。

自分の経験を振り返ってみても思いあたることがある。特別支援学校はまさしくこれである、研修ではお偉いさんが口を揃えてお決まりの台詞がある。「特別支援教育はチームスポーツだ!メンバーとの協力が大切!」らしい。そんなことは百も承知である。でも、なぜ、そのメンバーとワンチームになれないのか。

繰り返しになるが、お題(コンセプト)がないからである。

そんなことを考えながら、ついにコンセプトができあがった。

僕たちのチームコンセプト

それは「自立した中学生の育成〜自ら考え、自ら計画し、自ら学び、自ら実行する〜」である。このコンセプトを体現するべく私たち大人は「人と接する姿が美しい人」であることを目標とした。

今、振り返ってもめちゃくちゃ良いコンセプトだと思う。一学期の学級懇談会で発表すると保護者もみなさん口を揃えて「最高!」と褒めてくださった。中でも「とんでもない学級に入学させてしまった(笑)どこまでも応援します!」と最高級の言葉までいただいた。

学級目標なんてものは無数にある。でも、どこかお飾り臭くて、教室の目立つところに貼ってあって、居酒屋の無意味なビールのポスターみたく、視聴率は取れず、賞味期限切れのポスターみたいな感じがする。

だげど、このコンセプトだけは違う。「自立した中学生になる!」ということは「自立した大人になる!」ということでもある。「協力!笑顔!」のようなありきたいな学級目標とは違う。

だからこそ、しっかりとコンセプト定義づけておかないと少しずつ変な解釈が生まれてしまう。良かれと思って、子どもの手形なんかとって、意味のないお飾り学級目標が貼られて、やっている感だけ出すことが許されてしまう。時間が経つと子どもたち、先生たちまでも、それぞれの感性や感覚、センスといった何となくで工夫し始める。悪くはないけど、そんな解像度の低いことをやっているうちに学級がどんどん変な方向に進んでいく

だから私はコンセプトを掲げて、陽のあたる道を堂々と笑顔で歩きたい。そして、私がこの学級を去った後にそれを脈々と受け継いでもらって、その伝統を「守りたい!」と思ってもらいたい

自立した中学生の育成!
自ら考え、自ら計画し、自ら学び、自ら実行する


(3)自立とは?

自立って何?


コンセプトの中に「自立」という言葉を使った。自立を促すためにも「自ら」という言葉を4回も使った。この「自立」という言葉は何なのか?ある人は経済的自立と言った。ある人は精神的自立と言った。私は「自分でできることは自分で行い、自分でできないことはお願いして助けてもらう」ことだと考えている。

先日、相談支援員の初任者研修を受講した。その中で東京大学の熊谷先生という方が面白い話をしていたので紹介します。


熊谷さんが地震のため車椅子を置いて移動している様子


自立と依存の関係を考察するために、一つのエピソードを分析しています。
この写真は、2011年3月11日におきた東日本大震災のときに、熊谷が避難している様子です。震災のあったあの日、熊谷は6階建てビルの5階にいました。はじめはよくある小さな揺れだろうと高をくくっていましたが、そろそろおさまるだろうと思う頃になっても不気味に安定して揺れ続けます。そればかりか、揺れは徐々に大きくなり、やがて未体験領域に入りました。本棚は今にも倒れそうにがしゃがしゃと音を立てています。後ろの方で何かがすごいもの音を立てて飛びました。やがて、揺れは後に小さな余韻を残しながら徐々におさまっていきました。
避難誘導のアナウンスが流れて、「そうか、逃げなくては」と、熊谷は我に返りました。いつも使っているエレベーターのところまで行き、1階に降りるために下行のボタンを押しましたが、ボタンが付きませんでした。熊谷はこれでは逃げ遅れてしまうと慌てました。ちょうどその時、同じフロアにいた同僚が駆けつけてくれ、安全装置が作動して。エレベーターが止まっているということを教えてくれました。
熊谷が乗っている電動車いすは重量が150㎏近くあるので、人力では運べないし、それを運んでいたのでは逃げ遅れてしまいかねません。余震が続く生活で、移動手段を奪われるのは不安でしたが、電動車いすを置き去りにして、体だけを運ぶことにしました。写真は、そのときの写真です。

相談支援専門員初任者研修より


依存先について

その時に熊谷さんはこのようなことを考えたそうです。健常者であれば。階段でも、エレベーターでも、ロープでも逃げられる。しかし、車椅子を使っている熊谷さんはエレベーターでしか逃げられない。ここで矢印(ベクトル)に注目してほしいのだが、熊谷さんはエレベーターしか頼ることができなかったため、矢印が太く1本しか伸びていない。

今回は周囲のスタッフに体ごと運んでもらい何とか被害に遭わずに済んだそう。しかし、何かに頼る(依存する)という選択肢があまりにも少なかったため、自立していると思っていたけど、何かに頼る(依存する)という力もまた重要であるというエピソードである。

一見、自立とは誰にも頼らずにやることだと思われている。しかし、人間は一人では生きていけない。仕事でもそうである。分業しながら、効率よく仕事を進めているはずだ。

毎日、何でも一人でやっていたらどれだけ時間があっても足りない。時にはお金を使ってタクシーに乗り、時間や労力を買うことだってある。そう、タクシーに依存することだってある。

そこで、熊谷先生は自立という言葉について「自立とは依存先の分散」と定義している。


自立とは

依存先の分散を自立だとする考え方は、発達過程をとらえる上でも重要な視点です。
生まれたばかりの乳幼児は、養育者や保育園など、依存先が限られています。健常な子どもの場合、成長するにつれて、近所の人や、友人、先輩や後輩、様々な道具など、健常者向けにデザインされた社会資源に、スムーズに依存先を分散させていくことができます。養育者への依存度はどんどん浅くなり、やがて、養育者が他界しても他の資源に依存して生き延びることが可能になります。
しかし、障害のある子供の場合、自分に合った社会資源が十分に開発されていないために、この分散がスムーズに進まず、年老いた両親か、隔離的な施設にしか依存先がない、という状況に置かれ続けることになります。

相談支援専門員初任者研修より

さて、話を元に戻そう。自立した中学生を育成するにあたり、まずは自分のことは自分でできるようになってほしいと願っている。そして、できないことはお願いして助けてもらってほしい。それは同時に愛される人になるということでもある。

そして、自ら考えて、自ら計画し、自ら学び、自ら実行するというプロセスを通して、目標をクリアしながら、夢を叶えてほしい。最終的には一度っきりの人生を意志ある足で歩いてほしい。陽のあたる道の真ん中でね。君たちが歩く道は、いつだって、どこだって、周りの人たちを笑顔にするんだから。何かあれば、先生の番だね。卒業したって人生の一部を共にした仲間だから。

2.個別最適化の学習を目指して

(1)これまでの課題

次に個別最適化の学習について説明しようと思う。とにかくコンセプトが大前提にあって、それから、諸活動が成り立つと考えている。そして、その上に評価がある。

今回は個別最適化の学びついて語りたい。数年前、社会の授業を教えている時が一番辛かった。めちゃくちゃ面白いと言ってくれる生徒からずっと寝ている生徒までいたからだ。

どれだけ良い準備をしても、毎回、同じ現象が起こる。これは一体なぜなのか。今考えると答えは明確で「授業1コマにおける子どもたちの学びの経験値を最大化できていない」からである。

いつかの研修で「授業はできる子に合わせないと質が下がる」や「事前のアンケートやテスト結果を見ながら、みんなが分かる(平均値)ように模索するのが大切」みたいなことを語る先生方がいた。

それほどのことを言うのだから授業を見に行ってみよう、と思って教室を覗いて見た。そこには僕が辛かった時の光景と同じであった。確かに授業は考えられていて面白い。

だけど、「本当にこれで良いのだろうか?」と思った。誰かにとっては120点の授業でも、誰かにとっては0点の授業。つまり、受け手を選ぶというスタイルである。たぶん、日本のほとんどの授業がこれに当てはまる。

そこで課題を洗い出してみた。どうやったらみんなの満足度を高められるのだろう。落ちこぼれも、吹きこぼれもない授業・・・。

そんな時、以前勤めていた社長さんから連絡があった。今度、社長の方々が集まる勉強会に熊本大学の苫野先生が来るから一緒に行こう、と。その当時、苫野先生のことを知らなくて、その後の「食事をご馳走するから!」という甘い蜜に誘われてホテルの講演会会場に向かった。

講演会が始まり、あぁ〜ここで青森山田高校の黒田監督と話ところだなぁ。また、こんなところで話が聞けるなんてラッキーくらいの気持ちだった。会が始まると目から鱗の内容だった。

「僕は公教育とは何かが分かってなかった!」というのが率直な感想だ。その後、苫野先生と名刺交換をさせてもらった後、めちゃくちゃ質問攻めをかました。新幹線の時間があったそうだが、親身になって応えてくれた。かっこいい!


これらが苫野先生に質問したことに対する答えをまとめたものだ。これで繋がった。落ちこぼれも、吹きこぼれも出ない世界。そして、毎時間、子どもたちが学びに120%で向きう環境が作れるかも。もう、寝てる暇ない!

(2)学習環境をデザインする

苫野先生と出会って、コンセプトを実現するための方向性は分かった。だげど、どうやって実践していくのかが分からなかった。だけど、自分なりに何となく答えみたいなものはあった。



僕は考え方のヒントを与えて、子どもたちに任せて、やらせて、フィードバックするというスタイルだ。それを言語化している考え方を発見した。発見したというより、大学時代に勉強してないんかい、という話だ。やっぱり教育って面白い。

こうやって、説明できるように体系化しておくことで、どんな先生が異動してきても、誰と組んでも同じ方向性で指導ができる。そう思えた。いや、正しくは「教育学部出身なのに今更かい!」と完全に学問を舐めていたツケが回ってきた。

だけどね、ほとんどの先生は知らないし、やってないから。もちろんやっている先生もいるけどね。人数にするとほんの僅かだと思う。「偉そうに言うな!」って言われるのは承知だけど、これは事実。

とにかく、自分がやっていることを自慢したくて、資料を作っては、小学校や他校の特別支援コーディネーターの先生、研修会、保護者説明会で発表しまくった。すると「あの人、あんなに若いのに何者なの?」みたいな賞賛のような、一線を引かれるような、言葉をたくさんもらった。こういう時に若いは役立つ!

これらは僕にとっては最高の褒め言葉である。いつか独立してプライベートな教育機関を創った時にあの人の元なら子どもを託してみたいって思わせるCMみたいなものかな。

究極を言えば、教師という同じもの同士じゃなくて、コンセプトを実現するために頑張れる同じ志をもった同志を集めるってのが本音。

まあ、何でもいいのだけど、コンセプトを実現する手がかりが見えてきた。


(3)授業1コマの学びの経験値を最大化にする挑戦

今年度から新たなテーマとして「授業1コマの学びの経験値を最大化する」ということを合言葉にしている。

振り返れば、予備校で勤めている時にこれを無意識にやっていた。そして、何か子どもたちもノッテくれそうな名前にしたい。

ちょうど進路の話で盛り上がっていたので、こんな授業にしてみた。



とりあえず、一学期はこんな感じでやってみた。二学期はこれをブラッシュアップしていく予定。

本来ならば授業の様子とか、勉強マップとか、記録表とか、賞状とか、板書とか、教材とか、見せたいんだけどね。

それは、いつか出版という夢が叶った時に掲載しようと思う。今の時代、個人情報がうるさいから・・・。

最後にこの挑戦を通して、コンセプトが浸透してきたって思える出来事があった。それは連絡帳での一コマ。

おはようございます。久しぶりの宿題も帰ってすぐ終わらせていました。

生徒A保護者

昨日の志望校別対策の授業が楽しかったようで、色々と教えてくれました。最近は授業が楽しいと言うようになってきて感心しています。

生徒B保護者

今日もレベルアップで追い越されないように燃えているようです。勉強でこんなにやる気になっているのは、初めて見るので嬉しいです。

生徒C保護者

テストモードになっているのか誕生日プレゼントは学習スキル?ドリル?がほしいとのこと🌟勉強に目覚めた?(笑)と思いましたが、やっぱりK-popグッズでした(笑)

生徒D保護者

つまり、勉強意欲よりK-popです。BTSしか勝たん(笑)

今よりも「少しでも前へ!」そう思って駆け抜けた一学期でした。僕は僕の理想に向かって、これからも冒険を続けようと思います。


“プロフィール”
特別支援教育に携わる30代。一児のパパ。ジブンの脳内で起こっている出来事をカタチにしたいと思い、noteを始めました。将来、ジブンのコンセプトを再現できるプライベートな教育機関を設立するのが夢です。趣味は読書、音楽鑑賞、勉強、カフェ。

2010.4 某大手学習塾 勤務開始
2015.3 某大手学習塾 退社
2015.4 某特別支援学校 勤務開始
2019.4 某中学校特別支援学級 勤務開始

【Now】
・特別支援学級担任 
・特別支援コーディネーター
・サッカー指導
・「児童発達支援管理責任者」の資格取得予定
・教育論文執筆予定

【Future】

🌟携わった子ども一人ひとりにとって「かけがえのない存在」になる!
🌟ジブンism=「   」をカタチにした、プライベートな教育機関を設立する!
🌟ジブンの考えをカタチにした子ども、保護者、教師が幸せになる特別支援教育に関する本を出版する!
🌟最高の学級を作り、最高のチームティーチングを実践する!

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