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だから、私は空を目指した。【終】
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遠のく意識、光の道の中、私が辿り着いた先は天国でも地獄でもない、山の中だった。
遠くに見える少年と少女。
少年は年相応で、子供らしい雰囲気。
少女は年不相応で、大人びた雰囲気。
未奈は、茶屋に立ち寄る。
軒先の長椅子に腰掛け、お茶と団子を注文する。
粒餡たっぷりの餡団子を頬張る。
甘ったるさを少し苦めのお茶で流す。
夏の日差しと、山の標高のお蔭で少し涼しい風
だから、私は空を目指した。【陸】
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バスでの一件以降、結奈とは会話らしい会話をせず、未奈は少しあの頃と変わった景色を眺めていた。
最寄りのバス停に着くと、すぐに父の実家が見える。
インターホンを押すと祖父が出てきて「よく来たな……おお未奈、大きくなったな」と、出迎えてくれた。
居間に通されると、懐かしい匂いがした。
祖母の仏壇に結奈と共に手を合わせると、祖父がお茶を運んできた。
「それにしても、よく
だから、私は空を目指した。【伍】
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翌日になって未奈は病院で身体中をくまなく検査するため、1日だけ入院することになった。
結果は異常なし。どこにも悪いところは見られず、至って健康体だった。
自宅に戻り数日経った日曜日、未奈はふと思い立った。
「ねえ、お父さんに会いに行っていいかな?」
母は驚いたような顔をしたが、すぐ真顔に戻って口を開く。
「お父さんの実家、覚えてる?」
「うん」
「もしかした
だから、私は空を目指した。【肆】
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「僕が飴玉に夢中で、埋まってた石に躓いてよろけた時、未奈が僕を庇ったんだと思う。未奈の声が聞こえて、僕が転んで笑ってたら、未奈が居なくなってたんだ」
奏雨はそう話を切り出す。
未奈はそれをじっと目を逸らさず聞いていた。
まるで刑事の奏雨が逆に取り調べられているような、異様な構図。
「あの時の僕はガキで馬鹿だったからさ、未奈が道から転げ落ちただなんて考えもしなかった。置い
だから、私は空を目指した。【参】
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見慣れた町並み。少し変わった様子はあるが、道路も電柱もそのままだ。
ミナにとっては今日のこと。記憶の上では山の峠を越えてからすぐ帰ってきたくらいの感覚だった。
だが、すぐに時の残酷さを目の当たりにした。
見覚えのない建物、長屋通りだった路地がなくなり、大きなマンションに姿を変えていたり、知らない公園ができていたり、ミナはとにかく驚くしかなかった。
小さな道は姿を変えていて
だから、私は空を目指した。【弐】
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蘇る記憶などない。さっきまで小学生で、子どもで夏休みを謳歌していたのだから。
そんな恐怖にも似た感覚がミナを襲う。
茶屋の廃墟は本当に時間の経過でそうなったのか。
時間の経過?
自問自答の末の混乱。
カナウは何処へ行ったのか、カナウは生きているのだろうか。ならばカナウも大人になってるはずだ。
再び茶屋の辺りを捜索すると、獣道のような小道が見えた。
道なりに進んでいくと大き
だから、私は空を目指した。【壱】
――少し、いいか?
そう引き止められたカナウは足を止める。
それに釣られるように、自然とミナも立ち止まった。
――君たち……何処へ行くんじゃ?
男はアロハシャツに麦わらのハット帽子、薄いサングラスを掛けていた。
「僕らは旅をしている。夏休みの自由研究。山の向こうの湖を目指してるんだ」
「そ、そうです。ちゃんと保護者の許可も得ています」
――そうか。まあ気をつけてな。特に少女の方は。