いつもの夏休み②

「ばあちゃんち行ってくるよ〜。それじゃ8月15日」

『いつもありがとうねぇ本当。おばあちゃんも喜んでると思うよ。15日までおばあちゃんのことよろしくね』



家を出る。眩しい。


建物。眩しすぎて見えない太陽。家。ワンッ。家。建物。家。人。建物。車。車。ピーポーピーポー。車。建物。建物。バス。建物。フオォン。駅。


毎日のように見る風景を後にして電車に揺られる。

ばあちゃんちの最寄りの駅は私の地元の駅から30分かからないところにある。


ガタッ…ガタン…。ビル。ビル。ガタッガタンッ。建物。ビル。建物。建物。家。家。公園。畑。家。家。畑。建物。富士山。家。家。家。家。…ガタン…ガタン…ガタッ………駅。


着いた。

目立つようなものがないばあちゃんちの最寄りの駅。

10:28に駅に着き、ばあちゃんちまで行くバスは10:40発。

それを逃すと12:32発。

ばあちゃんちに行くバスは一時間に一本が基本。

14〜16時はバスがない地域。

なのでバスを1本逃すと大変致命的である。

とはいっても10分あれば余裕で辿り着ける場所にロータリーがあるのでのそのそと歩く。

暑い。

そして駅を出て、ばあちゃんちに行くバスに乗車。

まもなくドア閉まりまぁす。

プシュー


ケンタ。ミスド。大好きなケーキ屋さん。八百屋さん。広場。なんかでっかいオブジェ。本屋さん。スーパー。公園。でかい公園。車。車。車。車。ガソリンスタンド。車。車。家。家。家。家というか古民家。古民家。ほおずき。古民家。ほおずき。家。家。川。テニスコート。畑。畑。車。畑。あっばあちゃんちの団地の群れ。畑。お寺さん。畑。畑。木。畑。でかい看板。でかい看板。木。木。木。ばあちゃんちのマンションだ。木。木。ローソン。

着いた。


太陽の熱烈な歓迎が死と隣り合わせであることに身をもって体感していた。


木。木。木。ミーン…ミーンミンミンミンミーン…木。木。ジージー…ジー…木。木。車。…………ガザガザガザザザザッ!!!うわぁセミファイナル!!!木。木。人。木。人。こんちにはー。ばあちゃんち。

着いた。



ピンポーン

ハーイ



中からいつもの声が聞こえてくる。



「ばあちゃん来たよー」

吹き抜ける風。畳とお線香の匂い。

『はいはい、よくまあこんな暑いのに来たもんだ。いつもありがとさまです』


ばあちゃんちは高い丘の上にある。

団地の周りには何もないが木がたくさんあり、窓がたくさんあるばあちゃんちは、カンカン照りのなか歩き茹で上げられたタコのようになっていても、とても心地よかった。


そのあとはいつもどおりのこと。

手を洗う。うがいをする。お仏壇に行く。チーン。じいちゃんにあいさつする。

この時間ごろはちょうどお昼どき。


「ばあちゃん、お昼ご飯なに?」

『おそうめんでもゆがこうかねぇ』

「やった!おそうめん!!」

『おそうめん食べて少ししたらヨーカードー行こう。たくさん買っても大丈夫?』

「了解!重たいもの何でも持てるからばあちゃんは気にしないで大丈夫だよ」

『いつもありがとうねぇ。助かるよ。それで帰ってきてから迎え火をしようか。日が落ちてるときにしたほうがおじいちゃんも涼しいときに来たいだろうし』

「確かに。そうしよ。お腹すいた!!おそうめん!!」

『はいはい。ほんとはおまえの歳ならおまえがアタシに作るんだよ』

「だってばあちゃんのご飯好きなんだもん」

『まったく、仕方ない子だねえ』


これが私のいつも通りの過ごし方だった。



2024.8.3.

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