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なんかみなさんビジネス系の本しか紹介してないから、オススメのSF紹介するよ


推薦図書のタグをなんとなく見てたんですが、ビジネス書や専門図書、啓発本、技術書などが多く、サブカルに属する本を紹介する記事がないなぁ…と思って少し悲しくなりました。
なので、僕が今まで読んだSF作品の中で面白かったものを読みやすさ別に紹介します。ほとんど小説ですが一部マンガもあります。

読みやすさレベル1

レベル1なので、SFをまったく知らない、なんか難しそうって思う人にも薦められるものです。

『ボッコちゃん』星新一

【内容紹介】
著者が傑作50編を自選。SF作家・星新一の入門書。
バーで人気の美人店員「ボッコちゃん」。彼女には、大きな秘密があった……。
スマートなユーモア、ユニークな着想、シャープな諷刺にあふれ、光り輝く小宇宙群!
表題作品をはじめ「おーい でてこーい」「殺し屋ですのよ」「月の光」「暑さ」「不眠症」「ねらわれた星」「冬の蝶」「鏡」「親善キッス」「マネー・エイジ」「ゆきとどいた生活」「よごれている本」など、とても楽しく、ちょっぴりスリリングな自選50編。(Amazonより引用)

とりあえずSFだなんだというジャンル分けはすっとばして、星新一を読んだことがない方、とりあえず読みましょう。国語や英語の教科書にも載ってるくらいですし。
「ショートショートの神様」と言われている通り、瑞々しいアイデアとひねりの効いたプロットを端正な筆致の短編に昇華させる技術は他の追随を許しません。原点にして頂点です。
「おーい でてこーい」「生活維持省」「ゆきとどいた生活」など名作ばかりです。決して宇宙や未来の話だけではなく、ファンタジーやブラックユーモアなども織り交ぜられているのでテンポよく読めると思います。
収録作の中で僕が一番好きな作品は「親善キッス」ですかね。どんなオチが待っているのかと思ったら斜め上の方向に行ったのには思わず笑ってしまいました。


『紙の動物園』ケン・リュウ

【内容紹介】
ぼくの母さんは中国人だった。母さんがクリスマス・ギフトの包装紙をつかって作ってくれる折り紙の虎や水牛は、みな命を吹きこまれて生き生きと動いていた…。
ヒューゴー賞/ネビュラ賞/世界幻想文学大賞という史上初の3冠に輝いた表題作ほか、地球へと小惑星が迫り来る日々を宇宙船の日本人乗組員が穏やかに回顧するヒューゴー賞受賞作「もののあはれ」、中国の片隅の村で出会った妖狐の娘と妖怪退治師のぼくとの触れあいを描く「良い狩りを」など、怜悧な知性と優しい眼差しが交差する全15篇を収録した、テッド・チャンに続く現代アメリカSFの新鋭がおくる日本オリジナル短篇集。(Amazonより引用)

新進気鋭のSF作家であるケン・リュウによる日本で発売された初の短編集です。ピースの又吉さんがテレビで推薦したことで話題になり、帯の推薦文にも寄稿されていたのが記憶に新しいです。

作風としては、作者の出自と大いに関係のある中国/東洋文化と最新のテクノロジーの融合が為され、しかも抒情的に描かれる独特の雰囲気が挙げられます。難しい言葉は出てきますが、物語の重厚さがエンタメとして完璧なのでぜひ読んでいただきたくレベル1に入れました。
突飛なアイデアをよくもこんな情感たっぷりの素晴らしい物語に仕上げるなと感動するレベル。また感動一辺倒ではなく、異文化交流の難しさや親子の隔たりなども描いており読み応え十分です。個人的に文字や言葉といった他者との交流ツールが主題に置かれる作品が多く、僕好みでした。
表題作の「紙の動物園」はそろそろ映像化されてもいいと思うんですが…
一番好きな作品は「良い狩りを」です。妖狐の娘と妖怪退治師の出会いという導入からワクワクしますが、そこからスチームパンク的世界観に冒険していく様はアクション映画のような没入感を覚えました。


『ひきだしにテラリウム』九井諒子

【内容紹介】
ようこそ、ショートショートのワンダーランドへ。
笑顔と涙、驚きと共感。
コメディ、昔話、ファンタジー、SF……
万華鏡のようにきらめく掌編33篇。
Web文芸誌マトグロッソでの、
2011年8月~2012年12月の約1年半の連載分全篇のほか、
「えぐちみ代このスットコ訪問記 トーワ国編」「神のみぞ知る」、描き下ろし作品も収録。(Amazonより引用)

このマンガがすごい!2016などで1位を獲得している漫画『ダンジョン飯』などを著作に持つ九井諒子氏によるショートショート漫画集です。

『ダンジョン飯』や『竜のかわいい七つの子』などのようにファンタジーを得意とする漫画家さんというイメージがある久井氏ですが、この『ひきだしにテラリウム』では、そのタイトル通り、"引き出しを開けてみたらこの世界とは違う箱庭世界があった"ってな感じで、すぐそこにあるような日常感と一歩間違えば非日常に足を突っ込んでしまうような危うさを持ったザ・ファンタジーではない不思議な世界が広がっています。
基本的にコメディタッチの話が多くクスクス笑ってしまうのですが、説明や会話が極端に省かれた寓話のような話もあり、作風の幅の広さに驚かされます。
すごいところは作品によって画風を変えているところ。童話のような世界観の絵柄もあり、コミカルなものもあり、少女漫画、劇画、なんでもござれの玉手箱のような本です。


『家族八景』筒井康隆

【内容紹介】
幸か不幸か生まれながらのテレパシーをもって、目の前の人の心をすべて読みとってしまう可愛いお手伝いさんの七瀬――彼女は転々として移り住む八軒の住人の心にふと忍び寄ってマイホームの虚偽を抉り出す。人間心理の深層に容赦なく光を当て、平凡な日常生活を営む小市民の猥雑な心の裏面を、コミカルな筆致で、ペーソスにまで昇華させた、恐ろしくも哀しい本である。(Amazonより引用)

正直読みやすさレベル2に入れようか迷いましたが、宇宙や最新技術、物理学といった学術的な記述が無いこと、文体が平易で読みやすいことなどからレベル1の方へ入れました。ただ内容は読みやすいわけではないです。
他人の心を読み取れるテレパス能力を持つ主人公の女性がお手伝いさんとなって様々な家庭に入り込んでいく連作短編集で、人の心の描写がとんでもなくキツいです。しかも感情の流れを文章で再現するが如く、家族間のお互いに対する心に秘める思いが改行なしでダァーッと綴られるため主人公の苦難が手に取るようにわかります。群像劇とも読めますし主人公がどう家庭に介入していくのかのサスペンスとしても読めるでしょう。

筒井康隆御代と言えば、星新一、小松左京と並んで「SF御三家」と称される巨星です。この御三家なかなかバランスが良くて、星新一が無駄のないすっきりとしたショートショート、小松左京がバリバリの理学系SF、筒井康隆が既存の枠に留まらないナンセンスを得意とするという三者三葉の作風で、とりあえず三人の作品を読んでみて、気に入った作家の作品を読んでいくのも一興だと思います。

読みやすさレベル2

ちょっとSF面白いかもって思ってくれた人向け。ここから宇宙とか異世界とか異星人とかが出てきます。

『火星の人』アンディ・ウィアー

【内容紹介】
有人火星探査が開始されて3度目のミッションは、猛烈な砂嵐によりわずか6日目にして中止を余儀なくされた。だが、不運はそれだけで終わらない。火星を離脱する寸前、折れたアンテナがクルーのマーク・ワトニーを直撃、彼は砂嵐のなかへと姿を消した。ところが―。奇跡的にマークは生きていた!?不毛の赤い惑星に一人残された彼は限られた物資、自らの知識を駆使して生き延びていく。宇宙開発新時代の傑作ハードSF。(Amazonより引用)

映画「オデッセイ」の原作としても有名ですね。
不慮の事故により火星に一人取り残されてしまった宇宙飛行士の顛末を描いた物語。火星というテラフォーミング(生活できないような惑星の環境を人間が住めるように変化させること)されていない惑星に独りぼっちという絶望的な環境からどう生き残っていくのかが主題なのですが、主人公のワトニーは決してへこたれることはせずむしろ楽しんで火星でのサバイバル生活を送っているように見えるのが本作のポイント。ワトニーの視点と、ワトニーを救うための計画を練るNASAの人々の視点とが交互に語られるので、読者はワトニーのように決して一人ではないと確信しながら読み進められるのも気持ちいい部分です。火星でジャガイモって育つんですね。

『神のロジック 人間のマジック』西澤保彦

【内容紹介】
ここはどこ?何のために?世界中から集められ、謎の“学校”で奇妙な犯人当てクイズを課される〈ぼくら〉。やがてひとりの新入生が〈学校〉にひそむ“邪悪なモノ”を目覚めさせたとき、共同体を悲劇が襲う―。驚愕の結末と周到な伏線とに、読後、感嘆の吐息を漏らさない者はいないだろう。傑作ミステリー。(Amazonより引用)

ここでミステリ要素の強いものを。
特殊設定のミステリを多く書いている西澤保彦氏の作品です。謎の施設に集められた少年少女たちが世界の謎に挑むお話で、今だと『約束のネバーランド』あたりを想起させると思います。
基本的に閉鎖空間での話であり殺人も起こるため、重い空気が終始漂っています。専門用語でいうクローズド・サークル(閉鎖空間で殺人が起こる状況)のため、犯人探しはもちろん「なぜ逃げられない状況で犯行に及んだのか」の解明も頭を悩ますことになります。そして殺人の謎も世界の謎を解明されたとき、最後に突き付けられる衝撃の事実には空いた口が塞がりません。


『宇宙人ゴーホーム』フレドリック・ブラウン

【内容紹介】
徳山で科学者たちが対火星人研究をしていたなんて傑作だな、マック。小憎たらしい火星人たちがやってきてテンヤワンヤな人間世界の絶妙な描写にひたらすら引き込まれる作品。これはオチがどうのこうのよりも、第二章の「火星人のいる風景」がメインだと思うね。自分はそれ程本を読む人間ではないけど、1955年の作品なのに新しい感じがした。(Amazonより引用)

フレドリック・ブラウンといえば一般的に短編の名手として語られることの多い作家ですが長編も同じように味わい深いです。
この『火星人ゴーホーム』は超簡単に言うと「火星から地球に火星人が来て、めちゃくちゃ遊んで帰る」だけの話です。普通宇宙人が地球に来るってなると侵略しにきたのかな?と思うでしょう。でも、この作品に出てくる火星人はただ地球人をからかうだけ。テレビやラジオのスタジオに入って番組をむちゃくちゃにしてみたり、情事にふける家に入って興を削いでみたり、とにかく地球人が火星人に翻弄されまくる話です。ただそれだけのことなのに語り口が軽妙で可笑しみがあります。出てくる火星人が、なんだかバーでたまたま隣に座ったジゴロみたいな面倒くさい性格のやつらばっかりで、でも憎めないんですよね。

読みやすさレベル3

SFを読んだことがない人にとっては読みづらそうなもの、また物語が壮大すぎてついていけない人も出てくるかもしれないもの、そもそも世界観が理解不能のものなどがレベル3です。でもSF好きとしては避けては通れない作品ばかりなので、もし興味があれば一読してみてください。

『星を継ぐもの』 ジェイムズ・P・ホーガン

【内容紹介】
【星雲賞受賞作】
月面調査員が真紅の宇宙服をまとった死体を発見した。綿密な調査の結果、この死体は何と死後五万年を経過していることがわかった。果たして現生人類とのつながりはいかなるものなのか。やがて木星の衛星ガニメデで地球のものではない宇宙船の残骸が発見された……。ハードSFの新星が一世を風靡した出世作。(Amazonより引用)

世界中でベストセラーとなったSF小説の金字塔。SFの面白さが詰まった名著ですが、なにも知らない人が手を出すと一瞬で飽きると思われたのでレベル3に入れました。
まず冒頭部分が本当に素晴らしい。これ以上の魅力的な始まりってあるんでしょうか。「月で見つかった人間の死体は死後5万年が経過していた」……意味わかんないでしょ!!
この謎に対して様々な憶測が浮かんでは消え、いろんな科学的見地からの推理合戦が繰り広げられます。ここらへんはミステリ的でもありますね。そして次々と明らかになる新事実に新たなロマンが想起されていくところはフィクションだとわかっていても本当にこんなことがあるんじゃないのかと思わせられるほど。作り話だと忘れてしまうくらいのリアリティとそれを裏付ける科学要素の説得力がすごいです。

ちなみに今作は「巨人たちの星シリーズ」の1作目で『ガニメデの優しい巨人』、『巨人たちの星』、『内なる宇宙』と続きます。


『ラヴクラフト全集 1』H・P・ラヴクラフト

【内容紹介】
幻想と怪奇の作家ラヴクラフト。その全集第一巻! 彼の生みだしたクトゥルフ神話が怪しく息づく傑作「インスマウスの影」そして「闇に囁くもの」、デラポーア家の血筋にまつわる恐るべき秘密を描いた「壁のなかの鼠」、彼の知られざる一面を垣間見せるブラック・ユーモアの「死体安置所にて」の全四編を収録、怪奇小説ファン必読の書!(Amazonより引用)

正直これをSFとして扱うか微妙なんですが、まぁ変わり種ということで。
サブカル好きにはお馴染み、クトゥルフ神話の生みの親、ハワード・フィリップス・ラヴクラフト先生の全集です。
クトゥルフ神話の記念すべき嚆矢となった「インスマウスの影」と古の神々を詳らかに活写した「闇に囁くもの」が収録されています。
自分で神話を作っちゃうほど(そしてそれが魅力的すぎて後続の作家たちが体系を作り上げちゃうほど)ヤバい人だったラヴクラフト先生ですが、そのストーリーのリーダビリティも一級品で、神話として体系づけられる元となった異世界の描写が中二病をこじらせて自分の思考に閉じこもったオタクのようで妙に親近感が沸きます。ホラーの枠に留まらず宇宙にまで飛び出して異形の影を現出せしめた功績は、今もアニメや漫画、ゲームなどのフィクション作品に影響を色濃く残しており、未だにクトゥルフ神話のファンブックや解説本が出るなどの人気ぶり。この隆盛を先生に見せたかったなぁと思う今日この頃。


「ゴルディアスの結び目」小松左京

【内容紹介】
少女マリア・Kに取り憑いたのは悪魔なのか、それとも──。彼女の精神の内部へ入り込んだサイコ・ダイバー伊藤が見たのは、おぞましい"闇"の世界だった! 解こうにも解けない人間の心の闇は、"もう一つ宇宙"への入り口なのかを問う表題作をはじめ、「岬にて」「すぺるむ・さぴえんすの冒険」「あなろぐ・らう゛」等、宇宙創造の真理に鋭く迫る"ゴルディアス四部作"を収録。(Amazonより引用)

おそらく今回紹介した本の中では(おそらく)一番レベルが高い小説。
しかし分量は一番少ない。だって一冊の本じゃなくて一個の短編ですから。

僕がこれを読んだのは小松左京氏の著作ではなく『日本SF短篇50 II』というアンソロジーだったのですが、あまりにも衝撃的すぎて他の作品の印象が薄くなってしまうほどでした。
サイコ・エクソシストとでも呼ぶべき主人公の身に起こる不可解で不愉快な神秘体験が綴られていく本作は、映画「インセプション」や「ザ・セル」などのように人の心の中で入り込む物語です。しかし数々のトラウマを抱えた少女の心の中は異様な光景となっていて、哲学や物理学、宇宙学、量子力学、心理学などの要素が複雑に絡み合い、描写され、引き返せないところまでいってしまいます。
ラストの展開は筆舌に尽くし難く、暴風吹き荒れた後の凪めいた静謐な海のような余韻を残して幕を閉じます。人の気持ちを推し量る心理学と、極めて理知的に科学的根拠から世界を紐解く物理学、一見相容れない存在のような学問の果て――主人公は少女の心の奥に何を見たのか――


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