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短編小説 | 日常。


【日常】
いつも同じようであること。ふだん。平穏な____。


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毎日、同じことの繰り返し。
それが人生のあるべき姿なのかもしれないと
ある時を境に思い始める。
大人になってしまったな、と思う。

ある種諦めに似ている。

大人になる条件は
いかに美しく諦められるかどうかだよ、
と、すれ違う大人たちの背中が
語りかけてくる。

まだ大人になりたくないと
子供の無邪気さに縋って、
子供に憧れ続けている私は
一体どこへ向かっているのか。

「向いている方が前」ならば
下を向いて俯いても、それが前だというのか。
それなら私は永遠に救われないし
救われないままがいい。

旅に出たいと思う気持ちと
じっとしていたいと思う気持ちは
大抵、同時に訪れる。

矛盾している感情は歪で美しく、
人間らしくてとろみがある。

対局の感情を同時に持っているような
複雑さを持った人間でいたい。

どんな場所もすり抜けられるような
とろとろした人間でいたい。

日は常に昇るとは限らない。

それでも昨日昇ったんだから
今日も昇るだろうと思う。
昨日までの日常は今日からも繰り返すと、
無意識にそう信じている。

変わらない日々はこれからも続くんだと、嘆く。

楽しい、寂しい、切ない、

お腹すいたなあ。

会いたい、眠たい、
描きたい、奏でたい。

終わろうか、始めようか。

音楽でも聴こう、コーヒーでも飲もう。
もう諦めた、悔しい、切ない。

ふわふわ、とろとろ、もやもや、
モフモフ。

モフモフしたい。

大人が頑張って、子供でいようとする。
違う。
大人も子供もいない。いるのは常に自分だけなのに。
一体何になろうとしているのか。

日常はこれからも無邪気につづいていく。
いつ終わるのかは知る由もない。



外は雨。

昨日とは違う空気におしりの辺りが
少しそわそわしている。

私も宇宙の変化に敏感なただの生命体なんだと

凛としてみる。


_______________________『日常。』


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