くろき。

思いつきと、旅と音楽と食と酒のこと。 一つの言葉から浮かんだ短編。

くろき。

思いつきと、旅と音楽と食と酒のこと。 一つの言葉から浮かんだ短編。

マガジン

  • 浮かんだことばの羅列。

  • 短編小説

    思いついた言葉から紡いだ短編。

最近の記事

さとの路

秋の風が 肩を撫でる 冬の街が 泣いている 隙間に入った神様の 声を拾った母の歌よ 泣いてる 笑ってる あなたの背中の 春を感じる 温かさよ  もう行こうよ 次の町へ さとの畔道の その向こうへ 戻らないと言い捨てた あの夏の 三角形の星をなぞる 満ちている 愛へ続く場所 過ぎてゆく 日々の尊さよ のびてゆく さとへ続く路

    • うたう、奏でる、静かな午後に

      波が揺れる こころの奥 しずかに溶けゆく ひだまりのなか 今日はうたおう ささやくように 今日はうたおう 旅するように ずっと遠くに やさしい風が待ってるから 沈んでゆく空を誘って うたう静かな午後 空が描いた 水色の影 ちいさな背中を 追いかけていた 今日はうたおう あなたの歌を 今日はうたおう 奏でるように ずっと遠くで やさしい声が聞こえるから 消えないように 耳を澄ませながら 祈る静かな午後 透き通った 思い出の向こ

      • ヒイラギモクセイ

        今日ももうおわる なにしたっけな 花の香りって最近嗅いでないよな 公園に生えた木に登って 名前も知らぬ実を食べたいよな そういうことがしたい そういうことがしたいんだ 無邪気な君といつまでも いつまでも夢の中 真実なんて知りたくないや 知りたくないな 何も言うなよ 信じられるもの一つあればそれでいい なんてさ嘘だろ 今日は君が隣にいない それが事実だろう  やりきれないよ 優しい顔するなよ 許しちゃうだろ 君のその顔に弱いんだ僕はいつも

        • 古い箪笥のおどり

          古い箪笥のおどり 優しい声でこんにちは 潮風にゆれる 古い箪笥のおどり 時を刻んだその肌 おばあちゃんのにおい 不思議な世界で生きている ずっととおくでみまもっている   古い箪笥のおどり ぼくのこころも踊り出す たらったったったららら 古い箪笥のおどり 長い舟出のそのまえに たらったったったららら ゆらゆらゆれる船にのって まだみぬあの子のゆめをみてる 古い箪笥のおどり おおきな海につつまれて かわいくうたってる 古い箪笥のおどり

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        • 2本
        • 短編小説
          3本

        記事

          回遊魚

          僕を見つめていた 瞳は深く どこまでも続く 海のまんなか  戻ることない ゆめのなか どこまでも泳いだ 止まるとすぐに 死んじゃうんだ僕は 泳ぎ続けたよ まっすぐきたよ 少し冷たい 世界のすみっこ  君がつぶやくこと ひとつひとつを 拾い集める 海のまんなか ゆめのなか 照らしていた 光は沈んでゆく 止まるとすぐに 死んじゃうんだ僕は 泳ぎ続けたよ まっすぐゆくよ ぬくもり残る 世界のすみっこ 遠く浮かんでいる ひかりの柔らか 僕に微笑む 海のま

          空白

          悲しみは 怒りに変わり 他人にぶつけて 自分に返り その衝撃と痛みを味わい どうしようもない苦しみに嘆き 他人を巻き込み一緒に堕ちて そうして 疲れ果てた心に ぽっかり 空白が訪れる。 そこに誰かの優しさが染み ふとこぼれた言葉が染み 穏やかな空の青さが沁み 自分の弱さを知り 人間の弱さに気付き 人を許し 自分を赦し 「もうみんな疲れたよな」 と、 ふっと肩をおろして 目を背けていた想い出を 丁寧にひとつずつ拾いあげ そうしてあと

          詩 | 海をわたる。

          そよそよ ゆらゆら たぷたぷ  揺れている きみがとおくへ行ったようで さみしくなる しずんでは ういている 海のあお ずっと深く もぐってゆく ずっととおくを見つめている 透明なおもいでと 青くにごった 深いところ ずっと彷徨っている 魂は透明だ 魂は透明だ ______________________「海をわたる。」

          詩 | 海をわたる。

          短編小説 | アイスコーヒー。

          【アイスコーヒー】 氷で冷やした、または氷片を入れたコーヒー。 ________________________________________ 冷めたコーヒーを復活させるには レンジで温めるんじゃあいけない。 1度冷めると淹れたての状態には もう戻らないと知っている。 そして、 氷の溶けきったアイスコーヒーもまた 別の飲み物に成り腐る。 あの日、 君と別れたあの喫茶店で、 別の飲み物に成り腐ったヤツの水面を じっと見つめていた。 「嫌いになったとかじゃない

          短編小説 | アイスコーヒー。

          短編小説 | カレーの魔法。

          【カレー】 粉末状の香辛料を混ぜ合わせて風味をつけたソース, あるいはそれを使った料理のこと。 ______________________________________ ただいま。 今日の夕食は、なあに。 カレーだよ。 やった、じゃあ明日の朝も食べられるね。 明日は早起きしちゃおうかな。   それからお昼はね、 カレーうどんにしちゃおう。 おネギなんか散らしてさ。 それからそれから それでもちょっと残ったらさ、 つぎ足して作っちゃおうよ。 きっとコク

          短編小説 | カレーの魔法。

          短編小説 | 日常。

          【日常】 いつも同じようであること。ふだん。平穏な____。 _________________________________________ 毎日、同じことの繰り返し。 それが人生のあるべき姿なのかもしれないと ある時を境に思い始める。 大人になってしまったな、と思う。 ある種諦めに似ている。 大人になる条件は いかに美しく諦められるかどうかだよ、 と、すれ違う大人たちの背中が 語りかけてくる。 まだ大人になりたくないと 子供の無邪気さに縋って、 子供に憧れ続け

          短編小説 | 日常。