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感想 シャイロックの子供たち 池井戸 潤ヴェニスの商人に出てくるあの男と、この小説のモチーフは重なる。



「銀行ってところは、出世しなければつまらない。下から見上げるのと、上から見下ろすのとでは、全く違う景色をこの組織は運んでくる。」


この言葉が印象に残った。

本書は、銀行の仕事をモチーフにした短編集です。

銀行は何のために存在してて
彼らは何のために働いているのか?

まるで東国の雪みたいに、ずしりと不信感が降り積もるのでした。
その重圧で息苦しくさえなるのでした。

課長代理の失踪と、100万円の紛失
この二つの事件が、最後には理由やら繋がりやら
疑問が解決します。

この世界は地獄です。
まるでヴェニスの商人に出てくるシャイロックの世界でした

彼らは自分たちの出世のため保身のために生きています

最初に出てきた副支店長に反発する若手が言います

あんなもの売れって本気ですか?


あんなものとは投資信託のことです。
それを売るのが彼の仕事です
彼は大学で株式相場を研究してた。だから、いまの相場が見えている。

もう何年もお客に損をさせている。
そして、これからも株は下がり続ける
つまり、この商品を買うと損をする
なのに、上司はまるでお題目でも唱えるように
少しも疑問を抱くことなく
投信を売れという

それは、投信を売れば自分たちの評価が上がるからだ
しかし、それを買わされた客は損をする。

銀行は何のために存在している。
こんなことを続けていてどうなる?

そりゃ景気が良くなりゃ株価も反転し
10年後にはプラスになるかもしれないけど
これから下がるとわかっている商品を売るって

それは詐欺師と同じような気がした。
それを無自覚でしていることに恐怖すら覚える。

他にもひっかかった点を挙げると
100万の金がなくなった翌日に、支店の偉い人たちが、その金を自腹で出してなかったことにしたこと

つまり、悪すらもなかったことにする
それは保身のため
出世のため

なんか、くだらない組織だなと感じました。

こういうシャイロックの子供たち の話しがたくさん出てくる本です。
映画化されています。上戸彩さん嫌いだから見ません。


2023 3 5


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