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感想 君が手にするはずだった黄金について  小川哲 主人公の名前が「小川哲」で小説家だということなので私小説なのかなと思ったが、ちょっとありえない面白さ。


プロローグの小説家になった動機から引き込まれた。
好きな恋人がいて就職しようと思ったら、エントリーシートが書けなくて
小説風に自分を表現しようとしたのがきっかけなのだが
とにかく理屈をこねまわし
小説と彼女の両立は不可能とかになり
本末転倒というのか、運命の恋人としか思えない彼女と別れる導入部なのだが
ここがやたらと魅力的でうざい

主人公の名前が「小川哲」で小説家なので、たぶん、これは私小説なのかなと思いながら読んだのだが、ちよっとありえない感じだった。

小説家になったきっかけを描いたプロローグが、もはや異常で。
こんな人間いるわけないと思う。
小説にしたら面白いけど。
「あなたの人生を円グラフで表現してください」ってエントリーシートを書かせる企業なんかあるのかな。
恋人の美梨は言う。「就職活動はフィクション。真実を書く必要はないわ」
どういうことなんだ。

その後、小説家になった彼小川哲は怪しげな人物たちと遭遇するという連作短編集。
青山の占い師
80億円を動かす金融トレーダーの友達
偽ロレックスを巻く漫画家

偽ロレックスを巻く漫画家の話しは独特で
売れっ子なのに偽物をしているんです
小川は高校時代の昔の話しを友達たちと漫画家に取材されて知り合いになる
で、色んなことがわかってきて、彼は漫画家としても偽物。奥さんが絵を書いていた。
書いてるネタも誰かの作品をデフォルメしたものとわかります。小川自身もネタや発言を盗まれます。

この嘘だらけの人物に見てとれるのは、ある種の承認欲求なのかと思う
この人は、承認欲求モンスターみたいに見えた。

小川の友達が漫画家に感じた違和感が面白い

デイトナを買う実力もないくせに、偽物で自尊心を満たそうとする精神


これはまともでないと言うのです。


そして、80億円を動かす金融トレーダーの友達
この男は、色んなところで目立ち、資金を集め、投資家に多額の配当を出していた。
だが、資金集めのため、他人の投資方法とかを自分のもののように紹介していた。
才能はあるのだと思う。
だが、資金を集めるためには目立たなきゃならない。そのため自分を嘘で固めた

そこに見てとれるのも承認欲求だった。

この作品群の中には、たくさんの承認欲求モンスターたちがひしめいていて
その姿がとても滑稽であり
物語の面白さに繋がっていると思う。





2023 11 15


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