感想 銀河鉄道の父 門井 慶喜 この父あっての宮沢賢治だと思いました。これは賢治と父の物語です。
子供時代、宮沢賢治の銀河鉄道の夜を読んで夢中になった記憶がある。
その後、小学校の図書館にあった注文の多い料理店を読み宮沢にはまった。
この物語は、宮沢賢治の父の話しです。
賢治の父は質屋でした。議員もしており町の富裕層でした。
祖父は、賢治が上の学校に進学する時に
と言い進学を反対しました。文学や哲学などの余計な知識を身に着けると理屈っぽくなるので仕事の邪魔だと考えたのでした。
たぶん、それが正解だった。跡継ぎにするなら。
店番をしていた時、農民の妻が来て亭主が病気だと訴えてきた。
本来なら1円しか貸さないはずなのに、彼は彼女に同情し3円貸した。
騙されたのだ。
店は赤字である。
質屋に余計な学問なんか必要なかったのだ。なまじっか知識があるため農家の貧困に同情してしまう。それでは質屋はできない。
賢治は、質屋は貧乏人を搾取していると考えていたようである。
彼は質屋失格だった。
だから、商売をしようと考えていた。
最初は飴屋、次は人工のダイヤモンド作り。
夢みたいなことばかり口にする。
口を開ければ金をくれと言う。
どう見てもダメ人間だ。
まるで父を財布みたいに考えているように思えた。
実際、財布だつた。
妹のとしとの関係性が濃密だ。
彼女は賢治の書く童話が好きで、そこに才があるのに気づいていて、だから書くようにと提案した。
童話を書いたのは、彼が大人が苦手だからだ。
つまり、家業である質屋が彼を童話作家に導いたのだった。
そのあと押しをしたのは妹だ。
賢治の父は息子を溺愛している。
甘やかしすぎだと思う。
賢治が子供の時、感染病になり入院した時に
父はつきっきりで看病した。祖父に怒られてもやめなかった。
そして、父は自分も病気に感染し入院した。
賢治の父はそういう人だった。
跡取りとしての適性がないとわかっても、彼は賢治を支援し続けた。
いつも賢治のことばかり考えていた。
かなり過保護であったと思える。
でも、この父が賢治に学問の道を与えたのだった。
そして、童話作家になることも支援した。
本が出た時、散歩と称して親戚の家に行き賢治の本を配ったりした。
とんでもない親ばかなのです。
この父と、妹のとしがいなかったら、賢治は、あの素晴らしい作品群を作れなかったと思う。
かなりいい加減なバカの上に、ヘンテコな宗教にのめり込んで
家族の恥だったのです。
そんな賢治を見捨てなかった父親はすごいと思う。
正直に言うと、あの偉大なる宮沢賢治の素顔が、こんなクソ人間だったことに落胆しています。
ヘンテコな宗教にのめり込むところとか知りたくなかった。
2017年下半期 直木賞受賞作。
2023 11 1
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