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感想 君といた日の続き  辻堂ゆめ ノスタルジーなタイムスリップ癒やし系と思いきや、ミステリー的な結末に満足


辻堂さんというと推理作家という印象なのですが・・・
本作は、タイムスリップもの
つまり、SF小説です。


ある雨の日
死んだ娘くらいの年の少女と出会う主人公
彼は、妻とも離婚し、コロナ下でリモートワーク中

この少女が37年前
つまり昭和時代からタイムスリップしてきたという設定

47才の彼とは同級生
それも知り合い
その時期、ある少女が変態に拉致監禁され殺されるという事件が
その被害者らしい

ラストシーンが秀逸
さすが推理作家というどんでん返し

彼女の正体は?
どうして彼の前に現れたのか?

ミステリー的要素もあり楽しい

つまり、昭和の少女が現在に降臨したということです

昭和の時代の風潮としては、これからの未来どんどん良くなっていく
右肩上がりの成長が、気持ちをポジティブにしていた。

しかし、少女の見た世界は、少し期待外れ

確かに科学技術は発展した
でも、思っていたのとは何か違う

これはよく、昭和の気質と平成の気質とかで社会学の本で取り上げられる命題です
平成生まれの人間は、社会に出てすぐ、リーマンショックや東日本大震災
アベノミクスで少し経済が良くなり安心していると
いきなりコロナ渦

右肩上がりの経済どころか
斜陽の季節
少子高齢化に増税

期待が持てない未来

ちぃ子の表情がそれを表現しています。

夢見ていた未来が実現していないと知った時の、怯えと失望の滲んだ顔。



でも、冷静になると、ちぃ子は10才
僕が10才の時、そんなことを感じていたのか
感じ取れたのか

ないない
これ平成生まれの人間の肌感覚



ちい子が昭和から来たのがわかるシーンですが
昭和的な感覚や情報も何かピンとこない

ポケベルや固定電話、テレビの番組の話し
何か表面的で肉感がなかった

だから、読んでて少し白けた。
この作者、知識だけで昭和を書いてないか?
読者である僕と同程度の知識しかないのではないか?

気になったので作者のことを検索してみた
30才女子


作者の写真



だからか・・・

昭和の臭いを出すには微妙な年齢だった。
仕方ないことではあるが惜しい。

もっと、このタイムリークという設定を十二分に活かせていたら
たぶん、この作品かなり名作になった予感がある


一つだけ気にいっているシーンがある
二人で美容室に行くシーン
彼女が「聖子ちゃんカットに」と美容師に言う
そこを彼がぼかす

ここは笑えた。
10才の女の子が聖子ちゃんカットはない

だいたい、松田聖子は知らないと思う

もし、作者が40代後半のおっさんなら、こういう小ネタ100連発できたはず。
肉感のない描写は、チャーシュー抜きのラーメンみたいなものである。





2021 1 19




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