見出し画像

感想 タイム・オブ・デス・デート・オブ・バース  窪美澄 雰囲気とかすごく良かったのですが、最後、少し失速したような印象。



2022年第167回直木賞受賞作家、窪美澄最新作!
というのもあり
この本の表紙も興味深く
手にとったのですが・・・、少し期待外れでした。

都心の古ぼけた団地で5歳上の姉・七海と暮らすみかげ。未来に希望が持てず「死」に惹かれる彼女の前に団地警備員を名乗る老人が現れ、日常は変わり始めていく。


この団地、まさしくスラム。
住んでいる人は貧乏人と年寄りばかり。
築年数も長く潰れかけ

主人公の みかげ はイジメが原因で普通学校を退学し夜間高校に通う女子高生
週3でパン工場で働いている
父とは死別、母は男を作り出て行った。
姉がデリヘルで働きギリギリ生きてこれている。

そんな彼女に、ぜんじい という爺さんが声をかけてきた。
団地の警備員になれ

もちろん、ボランティア
仕事は独居老人を訪問し安否を確かめて、ポカリと食料を配布すること
年寄り見守り隊みたいな感じ

みかげは、少し変態気味で 人の死んでいるところが見たいと思っていた。
実際、下の階の子供の母親の死体を自ら見に行く

そんな彼女が、ぜんじい や 他の高校生の警備員と交流し成長していく話し

雰囲気はとてもいい
みかげ の純粋キャラがいい感じです。

姉が、デリヘルに勤めていると気づいた時
それがどんな仕事なのか興味があるが聞けなくて怖くて
事実を知った時、とても困惑するところがいい。

そんな姉の貯金を失踪した母が盗み
ぜんじい が取り返すシーンが一番盛り上がるところ

この小説が残念に思える点は
起承転結の転のところが弱いと感じたからでした。

本来、団地が取り壊しになる
そこで盛り上がるはずが
何か、空回りになっていて
訥々に発生する ぜんじい が倒れるというイベントもとってつけたような感じでした。

最後まで残っている浪江さんというお年寄りの言葉は印象に残った。

自分の人生が、こんな風に終わるなんて思いもしなかった。


50年近くも住んでいた団地を紙切れ一枚で追い出される

この先、もう何も良いことなんか起こらないのではという絶望感

行政の杓子定規が対応には腹がたつ
警備員の人たちが、引っ越し先を探したりとかするなんて変です
実際、こういう独居老人ばかりのマンションが取り壊されるとなると、たぶん、行政が介入すると思う。でないと取り壊し反対の声がすごいことになると思う。

何か最後のほう、意味もなく善人が連発で死ぬのは印象悪い
最後は、少しだけあったかいラスト欲しかったのですが。



2023 1 29



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?