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感想 そしてバトンは渡された  瀬尾 まいこ  親の数だけ、彼女は愛されていたんだと思った。これは幸福の物語だ。

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女子高校生が、父親が3人います。母親も2人います。
そんなことを言ったら、この子は家をたらいまわしにされた不幸な子だと思ってしまうだろう。

彼女にも両親はいた。
母親は幼い時に死に、父はリカさんという若い女性と再婚。
リカさんが二人目の母だ。
父はブラジルに転勤になる。
リカさんはついていかない。彼女にも残るようにと説得する。

ここで決断を小学生の彼女はする。
仲良しの友達を選ぶか、父を選ぶかだ。
父は、娘の意思を尊重すると言った。

彼女は友達を選んだ。
日本に残ることにした。

リカさんは、数年後、金持ちの男性と結婚する。
とても良い人だ。
しかし、何もすることのない退屈な毎日に飽きたリカさんは家出した。
彼女は3年間、この裕福な男性と家政婦さんと暮らした。

リカさんが、若い男と結婚した。
彼女は引き取られた。
しかし、リカさんは、また、家出し、この若い父親と暮らすことになる。

これが3人の父と2人の母の話です。

物語は、この最後の父である森宮さんとの生活がメインだ。
前半で印象に残ったのは三角関係の話だ。
スポーツ万能の同級生が、彼女に恋した。しかし、彼女はその気がなかった。
この微妙な関係性を作者はとても優しいタッチで描いていて、少女の微妙な心の心理が見てとれた。

この男の子を親友が好きになった。
それで彼に自分の思いを伝えて欲しいというのだ。
できない。それって、失礼な話しだと彼女は思った。
たぶん、理由はそれだけじゃない。彼女のほうも少しは好意を抱いていたのだ。
でも、親友は裏切られたと思い怒りをぶつけてくる。クラスの不良たちが、「最低」と彼女を責めて
クラス中の女子から無視される。

これ女子あるある話しなんだけど、彼女はさほど深刻じゃない。
それは父である森宮さんという存在がいたからだ。
父は、その悩み事を聞くと、自分の話しをして、俺もひどい目にあってんだぜ、馬鹿野郎と慰めてくれて、それから元気になるようにと毎日のように餃子を作り出す。
極端なんだが、この森宮さんの愛情はすごい。
こんなに愛されていたら、どんな危機に遭遇しても立ち向かえると思う。

この物語は、現在と過去をいったりきたりして、彼女の2人の母と3人の父の関係を描いている。
どれだけ3人の父親が彼女を愛していたかという物語だ。


二人目の母親であるリカさんの言葉がいい。
これは親になる意味を語った言葉だ。

「明日が2つになる。未来が倍になる」


それが誰かの親になるということだというのだ。なるほどと思った。
血の繋がりなんて関係ない。互いをどう思っているかが大切なんだと思った。

担任の先生の言葉もいい。

「あなたみたいに親にたくさんの愛情を貰っている子はなかなかいないわ」

この言葉を聞いて、彼女は自分がこれまで、すごく親たちに愛されていたことを知る。
ちょっとウルウルってくる本でした。

2023 3 12
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