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感想 ボス/ベイカー 上田未来 彼の放った弾丸で友達が死んだ世界と生きていた世界。その瞬間、世界は2つに別れてしまう。

 


作者の上田さんは、小説推理新人賞出身。
ミステリー的な展開と、この並行世界という形に興味を持ちました。
新人にしては文章は読みやすくサクサク読めました。

ミステリー的というよりはSFハードボイルド小説でした。

主人公の元自衛官が、家族の復讐のため拳銃を手に入れる。

この拳銃は気まぐれで使えるときと使えないときがあるという欠陥品

彼は、復讐をやめて家業の鍵屋の技術を利用し友達と作ったチームで窃盗をやり
義賊を気取っていた。

友達に誤解され殺されそうになる。
そこで反撃

彼の放った弾丸で友達が死んだ世界と生きていた世界。
その瞬間、世界は2つに別れてしまう。


並行世界BOSSとBAKER 。
BOSSは友達が死に、彼がチームのボスになる世界。
BAKERは友達は死ななくて、二人で足を洗いパン屋になる世界。

この二つの世界が同時進行で動き出す。
登場人物は、ほぼ同じだから
物語としては、真反対な設定なのに
磁石みたいに方向性が集約されていき
同じようなハラハラドキドキなハードボイルドな展開になる。

そこが本書の魅力。

最後は、物語が統合し力の強い流れに飲み込まれていくのだが
この強引なハッピーエンドは興ざめだった。

僕は、この結末があまり好きじゃなかった。
きれいに着地させようとして、せっかくの面白さを殺してしまったように思える。


ビートルズの曲『ストロベリー・フィールズ・フォーエバー』が登場する。
かなり、ひつこく繰り返し出てくる。

こういう歌詞がある。



目を閉じれば生きるのは簡単
見えるものはすべて誤解を生む
それなりの人になるのは難しいけど
上手くやれるさ
僕には全くどうでもいい事だけど



この誤解がそもそもの分岐点だった。
この物語の面白いところは、この誤解をうまく使っているところにあるように思えた。
その不信感が、物語をハラハラドキドキの展開に導いてくれる。





2023 2 19



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