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感想 槍持ち佐五平の首 佐藤雅美 リアルな時代物小説。勧善懲悪なんて存在しないみたいです。

佐藤雅美さんは時代小説の短編で精彩を放っている作家さんの一人です。

八州廻り桑山十兵衛シリーズや縮尻鏡三郎シリーズは読了ずみで面白かったです。
人間を描いている作家さんです。

本作は実話をベースに書かれた短編集です。
だから、少し読みにくい。
司馬遼太郎さんも資料ベースに小説を書くこのスタイルですが
本作は、さらにリアルです。

ネタバレ!!

表題作の「槍持ち佐五平の首」を例にとって見てみると
ある小さな大名の先廻りが殿様の参勤交代で泊まる宿場で準備をしていると
そこにある大大名の先廻りがやってきて、理不尽に譲れというのです
予約忘れてたんですよね
そこで嫌味をかまし脇本陣に移るのですが
臨時雇の佐五平が大切な槍を本陣に忘れてきた
取り返しに行くと、相手は意趣返しとばかりに
返して欲しくば、この者の首を持参せよと・・・

ひどい話しです。
相手が予約を忘れて
つまり自分のミス
それを彼の藩は譲ってやった
そりゃ嫌味の一つもある
そのドタバタの中、大切な槍を忘れた
そしたら、そいつの首を持って謝罪に来いというのです

大藩だからと何でもありかのか
彼は、佐五平の首をはね
それを持参し、そのいけすかん侍を切る

一種のイジメですね。
赤穂浪士の小さいバージョンのような気がします。

実際にあった事件を扱った短編集ということですので、これは実話です。

小南市郎兵衛の不覚
この作品も興味深い

行き遅れの羽太家の「ふさ」の惚れっぽさが災いして、羽太家と小南家の意地の張り合いに発展し、やがて、双方の家に多大な犠牲を強いることになるというもの。
この「ふさ」という人が誰とでも寝る女。
大身の旗本の娘とは思えないのですが
それで用人は心配し、小南という人に何とか縁談をと頼みます
小南さんは、この羽太で接待され寝てしまった。そして、横で同じように雑魚寝していた「ふさ」さんと不倫関係に
それを目撃され
用人は責任取れと家までお仕掛けて談判
しかし、相手は知らぬ存せず
そのいざこざが発覚し、お上から仕置きが・・・

この騒動、間男の小南が悪いと感じました
娘を手籠めにして知らぬとかありえない
すっとぼけるのです。

だが、悪いのは娘の家族のほうという判決が下る
かなり理不尽です
処罰にも偏りがある
最悪なのは、ただ、二人の行為を見てしまい大声を上げた姪
このせいで罪をきせられます

強姦魔の小南の罪が、目撃者の娘よりも軽いというのも納得できない。
江戸時代の裁判の曖昧さが良く出ていた作品でした。


重怨思の祐定

これはイジメの話しなんですが、かなり陰湿
ようするにコネ入社ならぬ、コネで職をもらった人を
何かと難癖をつけてイジメまくり、お役を辞退させようと村八分
キレて・・・・

下級武士の実態がよく見えた良作


2023 1 22




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