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新卒で就職し、音大に6年間通った僕がこれから「音楽」を学ぶみんなに伝えたいコト

SENZOKU.netより転載:

いよいよ、新年度が始まりましたね! 新入生のみなさん、ご入学おめでとうございます。

僕はつい先日、洗足学園音楽大学大学院ピアノコースを修了し、この4月から2度目の社会人生活が始まりました。フリーランスで編集者・ライター、ピアニスト・音楽講師をしている門岡明弥(カドオカハルヒサ)と申します。

ん? 2度目の社会人?

……と、思った方へ。実を言うと僕は学部を卒業してから1度就職し、働きながら大学院に通う“半社会人・半学生”のような生活を送っていました。そのため、社会人になるのはこれで2度目。ここからもう一度、新たな社会人生活が始まるのです。

僕は学部時代を含めると、6年間に渡って洗足学園に通ったこととなり、この数年では多くのことを学びました。それはもう、“学び”という言葉で収まりきらないほど。しかし、先日入学したばかりの新入生のみなさんはこの大学でどんなことを学べるのか、自分の可能性をどこまで広げられるのか、卒業したあとに自分はどう活躍していけるのか……現時点では想像がつかないことばかりではないでしょうか。

期待や不安、さまざまな気持ちが行き交うこの4月だからこそ、6年間に渡る洗足生活の振り返りも兼ねて、新入生のみなさんへのメッセージをここに記します。

伴奏に外部演奏で大忙しだった学部時代

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まず、学部1~2年の頃は右も左も分からないまま、とにかく動き回っていました(笑)。

履修していた授業は多く、その合間に他コースの友達からお願いされる伴奏や、老人ホーム・幼稚園等でのボランティア演奏。さらには友達とグループを組んでの演奏活動など、さまざまなことを並行して取り組んでいたため、とにかく時間的にも精神的にも余裕がなかった気がします。

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そんな中、学部3年になるタイミングで学内オーディションを経て入ったのが「アドバンスト・ポピュラー・スタディ・クラス」。いわば、ピアノコースの中にあるポピュラー音楽を勉強するクラスというもの。

元々僕はポピュラー音楽が好きだったこともあり、ここではDTMソフトを使っての作曲やアレンジを学び、クラシックピアノ+αのスキルを身に着けていきました。たとえば簡単な楽譜をサクッと作ったり、デモ音源を作ったり、キーボードとパソコンを繋いで演奏を録音したり……と、ここで学んだことは本当、今に生きていて。

当然、3年生になってからは日々の課題も増えましたが、なぜか全身にあり余っているエネルギー。それに伴って湧き上がってくる無数のアイデア達。

「……なんか、バカっぽいことを全力でやりたい!!!!」

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そうして音楽と同じくらい全力の限りを尽くしたのが、ヲタ芸。

これは学園祭の「コース対抗パフォーマンスコンテスト」というイベントにピアノコースとして出場した写真で、観客投票により全コース中第3位をいただきました。

元々ヲタ芸は、僕が所属していた門倉ゼミでも取り組んでいたパフォーマンスだったのですが、ピアノ連弾×ヲタ芸×DTM×映像投影という企画はさすがに初めてで。由緒ある前田ホールでパフォーマンスをしたときに湧き上がった歓声は、今でも忘れられません。

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4年生になってからは、門倉ゼミでゼミ長を務めさせていただいたり、前年に引き続きパフォーマンスコンテストに出場したり、自主企画の演奏会にいくつか携わることになったり。僕自身が演奏することはもちろんですが、物事を企画し、形に仕上げていく場面が多かったです

学部時代は音楽に関する技術や知識をたくさん吸収できたことに加えて、音楽を中心として、自分から表現・発信・企画していくことの喜びや可能性を感じられたようにも思います。直接自分で演奏することであっても、そうでなくても。

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「ピアノを演奏する」ことが自分の中心にあると思っていたけど、さまざまなことにチャレンジする中で、そもそも「自己表現をしたい・自分の手で何かを生み出したい」ことが僕の中心だったことに気づいた、とでも言うのでしょうか。自己表現したい気持ちの先に演奏、作曲、企画、ヲタ芸etc.があった……みたいな。

だからこそ高学年になるにつれて、音楽で培ったものを持って外の世界に行ったらどうなるんだろう?といった疑問や興味が強くなっていったことも、鮮明に覚えています。

大学卒業! そして就職…

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外の世界への興味に加えて奨学金を返さなければならなかった僕は、大学4年生になってから就職活動をし、web広告系の企業に就職。結論から言うと、良くも悪くもこの1年間はとにかく大変で(笑)。

まず僕が配属されたのは、自社メディアの記事広告を売る営業部署。当時の業務をざっくり説明すると、企画書を作って提案に行ったり、広告案件の制作進行をしたり、広告の実施期間終了後にはレポート(どのくらい記事が読まれた?どんな人に届けられた?SNSでの反応は?みたいなことをまとめたもの)を作って提出したり。いわゆる“営業”っていうイメージとは似て非なるものかもしれませんが、ちゃんと営業です。

がむしゃらに頑張る社会人生活はとても濃密でしたが、どこか心に違和感を持ち始めたのは「やっぱり自分自身の手でコンテンツを生み出して、表現したい」と再認識してしまった頃から。営業の仕事は自分でコンテンツを作る仕事ではなかったので、自由に動き回って自己表現していた学部時代とのギャップが大きかったことはひとつの要因だったかなと思います。人一倍、表現することへの飢えが強かったというか、やりたいことしかやりたくなかったというか。今思うととても自分勝手過ぎて、お恥ずかしい限りですが……。

もちろん、営業だったからこそ学べたこと、成長できたこと、今に繋がってること。たくさんあります。ただ、当時の僕は不器用で。

無理をしながら働き続ける中で心と体のバランスが崩れていき、気づけば心療内科のお世話になっていました。この頃は会社の皆さんはもちろん、周りのお世話になっている方々にも本当に心配や迷惑を掛けてしまい、今思い返しても明るい日々ではなかったと感じます。

働きながら大学院に通うことに決める

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自分の手で生み出して表現したいけど、それ以前に、そもそも音楽は自分にとってどういう存在だったのか。音楽に関して、やり残したことは一切なかったと言えるのか。それを踏まえた上で、自分は一体何がしたいのか。

多くのことを考え、迷い、最終的に選んだのは働きながら大学院に通うという決断でした。もちろん正社員ではなくなってしまったけど、編集者・ライター、ピアニスト・音楽講師としてのキャリアはここが起点となり、半社会人・半学生の生活がスタートしたのです。

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大学院では演奏・指導の技術向上はもちろん、“音楽家”の定義について考える論文を書いたり、音大生の生き方を考えるオンラインマガジンを立ち上げてみたり、働きながら音楽活動を続ける卒業生を集めたキャリアイベントを開いたりもしました。細かく書くと長くなるので割愛しますが、音楽に関する学びを深めることに加えて、現代における“音楽家”の生き方について改めて考える機会をいただいた2年間だったと思います。

1度社会人を経験したこともあり、大学院で過ごす時間はとても充実したものでした。必死に音楽と向き合い続ける同期のみんなや、授業や日々のレッスンで熱心に指導してくださった先生方、多くの人との出会いも、大切な宝物です。

大学院を修了した今、思うことがあります。

音大に入ったから、今の自分がある

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迷いながらもその時々で最善だと思う道を選んで、立ち止まって、また進んで。目の前のことに1つずつ向き合っていった結果、現在はフリーランスで編集者・ライター、ピアニスト・音楽講師としての活動をしていますが、音大に入っていなかったら絶対に今の自分はありません。

音楽と向き合ううえで培ったものは、たくさんあります。たとえば長い時間練習を続ける集中力や忍耐力。どうすればお客さんに喜んでもらえるかを考える企画力。円滑に現場が進むように準備を進める計画力・コミュニケーション力。そして、楽譜に書いてある情報を元に時代背景や表現方法を読み取る読解力や想像力……など多岐に渡り、今の僕はそれら全ての土台の上に存在している(直接的な音楽表現に限らず)実感があります。

これから音大で学ぶ人たちは「音楽で食べていきたい」という気持ちを持って入学したと思います。でも、決して音楽以外のことに目を向けちゃいけない訳じゃない。表面上では音楽と関係ないことに見えたって、そのおかげで音楽表現がより豊かになったり、「音楽 × ○○」のような自分だけの領域が生まれることだって大いにあるから。

だから、音大に入ったから音楽しかやらなければならない!ではなくて、興味があることや好きなことは全部チャレンジしてみて、そのうえで自分自身の可能性を探っていけばいいのではないかと思うのです。本気で取り組んでいれば、必ずどこかの誰かは見ていてくれるものだから、やってみたいことは思いっきりやってみて大丈夫。(※人に迷惑は掛けちゃダメだけど)

最後に…


あれこれ偉そうに言ってしまいましたが、僕だってまだまだこれからなんです。発展途上もいいところ。だけど、大学院の修了式に出たとき「この大学に入って本当によかった」と心から思えたことは確かです。

新入生のみなさんが、それぞれこの4年間で何を学びたいか。いろんな形があると思うけど、きっとどれも正しくて。何事も自分の目で見て、耳で聞いて、心で体験して。他の人のことなんて気にせず、好きなものは好きって言えばいいし、嫌いなものは嫌いって言えばいい。そのうえでやりたいことはやりたいって言えばいいし、やってみて違うなって思ったら角度をちょびっと変えて再チャレンジしてみればいい。

結局のところ、なんでもやったもん勝ちです。世の中の状況はまだまだ落ち着きませんが、こんな今だからこそできることを探って、後悔のない4年間を過ごしていただけたら嬉しいなと思います!

▶▶洗足学園音楽大学:https://www.senzoku.ac.jp/music/

▶▶洗足学園音楽大学(Twitter):https://twitter.com/senzokuondai

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