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音楽家の拡張した世界

ワシじゃよ。

先日、東洋経済オンラインで、
音大卒の貧困を取り上げた記事が出ていました。

なかなかアクセスを集めているようですが、
某オーケストラのドラマの影響なんでしょうか。

実際に音大を卒業して、今も業界にいる身として、
この記事ついての個人的な感想・意見と、
音楽大学の在り方について書いてみます。

「音大卒」と「手取り12万円」は関係ない(笑)

音大を卒業したことや音楽の夢を持ち続けたことで、
手取り12万円の生活を続けている、みたいな内容ですが…
これじゃあよく言われるところの「売れないバンドマン」です。

別に音大卒じゃなくても、手取り12万円の方もいるでしょうし、
むしろそれであくせく働かずに、
質素に生活するのを自ら選択している方もいます。

音大や業界の厳しさを貧困と結び付けたような印象を感じますが、
何十年も一生懸命音楽に身をささげて、
それからどうするかは自分次第じゃないでしょうか?


と、バサッと切り捨てるのも何だか寂しいので、
音楽高校・そして音楽大学を卒業して、
実際にこの業界に身を置いているワシが感じている、
ネオ・ミュージシャン論を書いていくぞい。

音楽家は貧困になっていく

ワシの職場の大先輩たちは、
高校生の時から演奏して金を稼いでいたらしい。

キャバレーとかダンスホールとか、
いわゆるバブルの時代で羽振りがよく、
稼いだ金が酒やらギャンブルやらで消えて、
それでもお金が回ってくる。

麻雀で車を賭けて人から人へ所有権が移っていく…
そんな時代だったらしい。


それから数十年経って、
暇つぶしのインフラが整ってきた現代。

・より早く
・より手軽に
・より快適に
・より効率的に

コンテンツの過剰生産によって
ただただ快楽を安く受動的に享受できることが増えたと思います。


音大からオーケストラに就職できるのが、
学年に1人2人とかいたら多い方です。

コンテンツの市場競争で後れを取っているクラシック音楽業界。
それだけ一芸を磨き上げた人たちでさえ、
オーケストラに就職したとて裕福ではないケースが多いです。

業界が他の職種よりも利益が出にくい構造になっていて、
相対的に音楽家という職業自体が貧困に向かっている、
それどころか加速している印象を受けます。

技術はあくまでも手段

音大としてもそうですし、
業界の思潮としてもそうなのですが、

専門性を磨き上げるために
音楽大学へ進学する

こういう考え方が非常に多いと思います。

ここから考えられる音楽家の思考回路は、
「上手ければ人は喜ぶ(=喜んでお金を出す)」
ということに尽きます。

そして無我夢中で専門性を磨き上げたその先には何を得られるのか。

それは
専門家を喜ばせる音楽
なんじゃないでしょうか。

あなたが音楽をする理由

高い金を払って音大に進学して、専門家(同業者)に認められることが、
オーケストラへの就職確率を高めること、
つまり音楽家としての生存確率を上げることに繋がっています。

これが現在の音楽業界の構造です。

音楽家として生きようと思うときに、
業界内でのチキンレースに巻き込まれてしまうのですが、
本当にあなたのやりたいことはもっと別なんじゃないでしょうか?


誰のために
何のために
どんな世界を作るために
どんな自分でいるために


こういう自己認識をみんなが真剣に考えたら、
夢の言語化(=種類)が格段に増えると思います。

夢が生み出す拡張した世界

夢の言語化が増えたらどうなるでしょうか?

例えば、
・クラシック音楽ファンの母数を増やしたい
・地元に生演奏というコンテンツを提供したい
・もっと気軽に多くの人に演奏する楽しさを味わってほしい
・地域に根差した音楽コミュニティを作りたい
・もっと上手に演奏したいという人のお手伝いをしたい
・ゲームみたいに町にBGMを流したい
・それぞれの人の人生の唄を作曲・演奏してあげたい
・目の前の人の推しの曲を演奏して、周りの人にも伝える手伝いをしたい


もしこういった向社会的・利他的な夢が増えたら、
自分の実力だけでなく、他人を活かすことも視野に入ります。

夢の実現にむけて、誰かの強みを借りることもできます。
才能のある人に追いつかない自分の演奏技術をカバーして、
何らかの方法で誰かを喜ばせることができるかもしれません。


プロになるために音楽に向き合うのではなく、
誰かのために音楽に向き合える。


演奏家として食っていくという夢は素晴らしい事だと思いますが、
それは音楽を使って世の中や誰かを幸せにするという
向社会的行為のごく一部でしかありません。

音楽家を目指す人の視野が広がれば、
自分が演奏しなくても仕掛け人として夢を叶えるという選択肢も見えてきます。

音楽大学の在り方

毎年何百人もの学生が、
音楽大学を卒業していきます。

一般企業に就職する人もいれば、
音楽関係の企業に就職する人もいる。
演奏活動を続ける人もいる。

どんな仕事をしていこうと、
よりよい世界を作る、誰かに貢献する、
自分の心の中から湧き出る夢を実現する。

もし音大が音楽だけにとらわれずに、
これからの人生を課題に学生に向き合えたら、
この記事のように
「自分には音楽しかない」
なんてネガティブで閉鎖的になる人が減るかもしれません。

音楽ができなくても、夢があればできること

音楽家とは演奏するだけでなく、
音楽周辺の技術で社会に豊かさをもたらす仕事をする人たちです。

そうやって広い視点で自己認識が広がれば、

プロデュース
マーケティング
ブランディング
PCスキル
編集スキル
構成能力
渉外能力
心理学・哲学・数学

こういった自分が興味あったり得意なことで、
周りの人と共同して音楽のマーケットを広げられる。


音楽家の拡張した世界とは、
演奏だけでなく音楽全体を用いて、
社会を豊かにしあえる世界だと思います。


今回は夢ばかり語るワシだったな。
ほなの!


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