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全ての音楽家必見!!基礎練習の本質!!

ワシじゃよ。
皆さんに質問します、

目の前にあるペットボトルの水は、
飲みたいと思った時にいつでも失敗しないで飲めるのに、
なんで毎回ホームランを打ちたいと思っても、毎回は打てないのか?

この理由が分かりますか?
気になった方は読み進めてください!


今回は基礎練習について書いていきます。

まず基礎練習について、
ワシが見る限り、ほとんどの人が本質を捉えていない!
と失礼ながらも声を大にして言いたいです!


ロングトーン、スケール(音階)、アルペジオ、
リップスラー、フィンガリング、エチュード、
大地斬、海波斬、空裂斬、

これらは基礎練習どころか、
非常にクリエイティブな作業です。

つまり、そのクリエイティブな作業をするための、
本当の基礎練習が存在するというのが今回の主張です!

いつも通り斜め上からの視点かもしれませんが、
気になった方は読んでやってください。


ホームランを打てない理由

今回、とても参考にさせていただいた動画があります。
武井壮さんの「オトナの育て方」というものです。

武井壮さんは大学時代、
競技歴2年半で日本陸上競技選手権大会十種競技で優勝した経歴や、

2018年には世界マスターズ陸上競技選手権大会で、
男子の45歳から49歳を対象とする
M45クラスの4×100メートルリレーにおいて、
武井壮さんを含む日本チームが金メダル獲得の快挙を成し遂げるなど、

スポーツマンとしての結果を残しています。


そしてなぜ結果を出せたのか、
そのヒントが動画で語られています。

あまりにも本質的だったので、
それを音楽家に当てはめるとどうなるか、
ガリガリ書いていきます。

いつでも水は飲める、でもホームランは打てない

小学校の時に野球をやっていた武井壮さん、
5年生のとき、こんなことを不思議に思ったそうです。

「毎打席ホームランを打ちたいのに、打てないのはなんでだろう?」

目の前のコップやペットボトルの水があって、
それを飲みたいと思った時に、
飲めなかったことは一度もない。

不思議じゃないですか?
同じことなのに、自分の頭の中で、
「〇〇したい」「水を飲みたい」はできて、
「ホームラン打ちたい」はできないんだろう。

体育の先生、体育大のお兄さんや周りの大人たちに聞いても、
誰も答えが分からなかったそう。

”できること” と ”できないこと”

答えが分からないまま、
ある日、武井壮さんの父親がビデオカメラを買ってきたそうです。

当時ファンだった西武ライオンズのピッチャーの真似をして、
キャッチボールをしていたところを撮ってもらって、
録画したものを見たら愕然。

自分の頭の中では、
そのピッチャーと同じフォームで投げているのに、
全然違うことをしている!


そこで武井壮さんは気づきました。

俺が〇〇したいと思ってできるのは、
目に見えているものを、
自分の身体とかに運ぶことだけしかない。

見て触ることしかない。

武井壮「オトナの育て方」

ボールを投げるときに、手や足は見えていない。
見えていないということは、
つまりここはもう思った通りに動かせていないということです。


もし自分の身体を動かそうとしているイメージと、
実際に動かしたときの身体の位置がズレていたらどうなるでしょうか?

ボールが飛んできて、バットを振る。
でもイメージと実際の身体のコントロールが1cmとか2cmズレていたら…?
頭ではこの高さでバッドを振っているつもりだけど、
実際は2cm高く振っていたら…?

サッカーでもバスケでも、フィギュアスケートでも想像してみてください。
たかが1cm,2cmですが、その差はめちゃくちゃ大きいですよね。


なので武井壮さんは、
自分の身体を思った通りに動かせる練習をしてからスポーツをやろう。
と考えたそうです。


この「スポーツ」を「演奏」に置き換えたら分かります。

身体の見えていない部分が、
毎回±1cmとかのブレで演奏していたら、
それはもう前にいる弦楽器の美しいお姉様たちの鋭い視線が気持ちいい…
じゃなくて恐ろしい。(金管楽器奏者あるある)


なにが言いたいのかというと、
本当の基礎練習とは、
音出し、ロングトーン、音階、発音、リップスラー、教則本、
といったものではなく、

自分の身体を思った通りに動かす練習

ということです。


簡単な実験

具体的な練習の取り組み方は後半に書きますが、
ここでは「自分の身体を思った通りに動かせているか」の、
簡単な実験をご紹介します。

時間の無い方は後半まで飛んじゃってください。

【実験の手順】
①目を閉じて、まっすぐ立つ(できれば鏡の前で)
②目を閉じたまま、腕をまっすぐ横に上げる
③目を開けて、実際の身体の位置を確認する

武井壮さんがこれを実際にやった時、
真横に上げているつもりが、
実際は真横より上に行ってしまっていた。
というのです。

ワシも同じことをやった時、
最初は真横より上に行ってしまいました。

同じように真上でもやってみたら、
左腕だけちょっと内側になっていました。


つまり見えていないところを、
思った通りに動かせていなかったのです。
何十年も共に過ごしてきた自分の身体なのに!


その後、実際に真横・真上の位置を目で確認して、
身体で大体の位置を覚えます。
その記憶した状態で、また同じ実験をすると、
今度はちゃんと真横・真上に出来ました。

「なんとなく」を明確に

このように、真横・真上などを身体に覚えさせたら、
もっというと『脳』に覚えさせたら、
それのちょっと上、ちょっと下、ちょっと開き目、
といった「尺度」が生じて調整することが可能になります。

自分の身体がどう作用しているか、
イメージ通りに動かせているか、
なんとなくできていた時よりも、
明らかにはっきり分かるようになります。


本当の基礎練習というのは、
脳の信号と実際の身体の作用を擦り合わせていく練習
ということになります。


具体的な練習方法

自分の身体を思った通りに動かす練習を、
演奏として習得していくには、
以下の3ステップになります。

① イメージの解像度を上げる
② イメージと身体の見えている部分を一致させる
③ 身体の目に見えない部分を①②と一致させる


この考え方は、
前述の武井壮さんの動画と、
世界で活躍する日本のトランペット奏者、ヒロ野口さんの教本
『迷宮と出口への鍵』
からヒントを得ました。

一番おすすめの教本を聞かれたら、
間違いなくコチラをオススメします。


では、
具体的な練習方法について、
細かく解説していきます。

①イメージの解像度を上げる

簡単な思考実験をします。

もしあなたが異世界に行ったとしましょう。

そこはヴァイオリンやトランペットというものが存在しない世界で、
これらの楽器を渡して
「さあ練習してください」
と言ったら、どうなるでしょうか?

弾き方も音色も音階も、そもそもいったい何のために存在するのかも、
きっとわからないでしょう。
練習しようがありません。


つまり、ワシたちは先人が作ってきた音楽を基にして、
それをヒントにしたり目指したりして「練習」していくのです。

言い換えると、
イメージが無ければ何を目指してどんな練習をすればいいのかが分からない
ということです。


”演奏”や”身体の使い方”の前に、
このステップが最初に来るのは、
人はイメージしたものしか習得できないからです。


そしてその理屈で考えると、
「イメージの解像度」が非常に重要になってきます。

正確なソルフェージュ、理想の発音とタイミング、
2音間のインターバル、流れやフレーズなど、
これらを虫眼鏡で拡大したように見ることができるほど、
あなたの練習の精度が上がっていくのです。

そのイメージを基にして、
身体の動かし方とすり合わせる練習が始まります。

②イメージと身体の見えている部分を一致させる

これは音を出さないで出来るトレーニングなので、
楽器が演奏できない時間や場所でも練習できます。

身体の動きを合わせていきますが、
ここでは「見えている部分」とイメージを、
全てジャストで一致させる練習をします。

”見えている部分”の代表的なものが、
「指(Figure = 形)」です。


そしてやることは、
「音のイメージ」と「指の位置」をピタッと合わせてく
ただそれだけです。


例えば、
・理想の「ラ」の音を伸ばすイメージしながら、そのポジションを押さえる
・音から音への動きをイメージしながら、ジャストで指を動かす
・同じ音のスタッカートをイメージしながら、そのポジションを押さえる
・メトロノームに合わせて、イメージと指をジャストで連動させる


これだけ?と思われるかもしれませんが、
イメージの精度が上がった状態だと、
意外と上手くいってなかったりするんです!

0.1秒でもズレていたら、
身体を思った通りに動かせていないと思ってください。

つまりこれこそが、
身体の「1ミリ」のズレを修正して、
脳に身体の使い方を記憶していくトレーニングなのです。

これは本当にゆっっっっくりやってみると実感しやすいと思います。
スローモーションを極めて、
ドットやピクセルのレベルで合わせられたら最高です。

楽器によっては指じゃなくて、
腕とか脚とかになるかもしれませんが。

「三苫の1ミリ」は称賛しても、
「あなたの1ミリ」は許しちゃダメです!

③身体の目に見えない部分を①②と一致させる

次は目に見えない部分を合わせていきます。
ここでようやく音を出していきます。

口の中、舌、肺周り、筋肉各所、
首肩背中、姿勢、息、重心、など

こういう目に見えないものは、
ちゃんと動いているかを目視できません。
なので、アウトプットで判断するしかありません。

だから音を出して、イメージとすり合わせることで、
総合的・全体的・包括的といった感じに脳に記憶させていきます。 


ここでやることはただ一つ、
イメージに限りなく近いアウトプットができているか。
それを確認・調整していくだけです。

注意しなければならないことは、
「首の位置が…」
「アパチュアが…」
「舌の動きが…」
といったように、

目に見えない部分の”絶対的”なポジションは探さないこと。

あくまでも
「理想のアウトプットができているか」
だけにフォーカスします。


ここの理屈はワシの持論なので大変恐縮なのですが、
一応ご説明させていただきます。

アウトプットだけにフォーカスする理由

「今日は調子が悪い」
「寝違えた」
「顔(唇)がむくんでる」
「腰が痛い」

人間の身体は毎日調子の波があります。
同じコンディションの日なんてまずありません。

良い時もあれば悪い時もありますが、
その時にできる最大のアウトプット品質を提供しなければなりません。

状態変化を避けられないのであれば、
体調が毎日変化する前提でトレーニングを積んでおけばいいんです。


目に見える部分を、
イメージと脳の信号をジャストに合わせる軸とし、
目に見えない部分は、
ただひたすらアウトプットに合わせる。

上手く伝えられませんが、
見えない部分はアウトプットを軸に、
脳と身体に任せて運転させる感じ。


教習所で初めて車の運転をして、
カーブに差し掛かった時に、
「ハンドルは目で切るんだ」と言われたことがあります。

決してX-MENのサイクロプスになれと言っていたわけではないと思います。
(レーザーが出るまでハンドルを見たら、教官をドキドキさせちゃいます)

曲がった先を見ておけば、
脳が自動的に適切な量のハンドルを切るので、
「ハンドルはどのくらい切ればいいんだろうか?」
なんて考えずに、行き着く先を見なさいというのです。


演奏に当てはめるなら、
行き着く先はあなたの脳のイメージや理想の音、
ハンドルは身体の連携するシステム。


身体全体のコントロールは、
頭の中のイメージに向かって、実際に演奏した音を聴いて調整していく。

舌が、アパチュアが、肺周りの筋肉が、
といった"見えない各所"のフォーカスではなく、
身体全体のシステムとして脳に任せちゃう。


説明がわかりにくくて申し訳ないですが、
ビール1杯ご馳走いただけたら、
30分くらい直接熱弁させていただきます!

まとめ

非常に長くなってしまいましたが、
大事なことは3つ。

① イメージの解像度を上げる
② イメージと身体の見えている部分を一致させる
③ 身体の目に見えない部分を①②と一致させる

この順番で、身体を思った通りに動かす練習をすることが、
「基礎練習の本質」です。

見えている部分はしっかりジャストにイメージと合わせ、
見えていない部分はアウトプットとイメージの差で調整していく。


教則本はこれらを実践していく際の、単なる媒体です。
教則本をこなすことを目標にするのではなく、
身体を思った通りに動かして、演奏技術の根幹を鍛える、
そのために存在するといってもいいのではないでしょうか。


斜め上の視点からの論理展開でしたが、
楽しんでいただけましたでしょうか?

ほなの!




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