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小雨降る神宮で、てっぱちとエイオキが塁上に並ぶその景色を見ていた 【4/24巨人戦⚫️】

小雨をレインコートで凌ぎながら、一塁上のてっぱちと、二塁上のエイオキを見ていた。歴代のミスタースワローズたちは、同じように腰に手を当て、足を動かしながら、ホームの方をじっと見ていた。相手の一瞬の隙も見逃さないのだ、という顔をして。

私は「ぐっち席」でその後ろ姿を見ながら思う。この風景はきっと今しかない。それはとても贅沢な景色だ。

・・・その景色を、同じ試合の中で三回も見た上で、一点も入らなかったとしても。まあ、それでも。

息子は隣で、「全部おんなじ形で終わる!!いつもてっぱちと青木があそこに残る!!」と言って笑う。確かに、と私も思わず笑う。

このチャンスをことごとく生かせない感じが、全くもっていつものヤクルトだ。でもまあ、それがヤクルトなのだ。私はレインコートの水滴を少し払う。

だけど0-7で迎えたお得意の9回裏に、なおみちはしっかりHRを放つ。そうそう、なおみちはいつもこういう時に打つ。いつだったか、地方球場でぼろ負けした日に、同じようになおみちが9回裏にそっとHRを打った試合があった。

(調べたら出てきた)

そうだ、この日の先発はじゅりだった。そしてひたすらにじゅりが打ち込まれた日であった。思い返してみると、点の取られ方ならびに最後の反撃がそっくりである。なんなら相手も巨人である。歴史は繰り返されるわけである。

でも、じゅりはそこから二軍も経験し、中継ぎでも投げ、見事なまでの復活を遂げ、CSを任されるようにもなった。そしてなおみちは去年、レギュラーの座を獲得し、なんだかんだで10本のホームランを放った。大切な戦力として、一軍で戦い続けた。

歴史は繰り返されると言っても、もちろんみんなずっと、同じ場所にいるわけじゃない。そこには成長があり、そして挫折がある。その両方を繰り返しながら、少しずつ、少しずつ、数ミリずつかもしれないけれどもそれでも、前に進んで行く。そして、誰もが終わりに向かってゆく。

村上春樹は『村上さんのところ』で、2015年にこう書いている。

2015年1月15日
(書斎に置かれている青木とバレンティンの首振り人形について語りながら)「この二人が神宮で並んで打っているところを、一度でいいから見てみたいものです。」

今、それが本当にかなったのだ。それはたぶん、夢のような時間だ。青木→山田→バレンティンのこの並びを、きっと10年後、私たちは懐かしく思うのだろう。そんな時間があったのだよな、と。エイオキは本当に、アメリカから帰ってきてくれて、てっぱちとココの間で打ち続けてくれたのだよな、と。

二塁上で三塁を狙うエイオキと、一塁上で二塁を狙うてっぱちの、その後ろ姿を眺めながら私は改めて思う。

ここにいられるこの時間が、やっぱり何より贅沢なのだ。ヤクルトは今日も負けたけれど、巨人はやっぱり強いけど、春雨はまだ少し冷たいけれど、今しかないこのチームを、ここでそっと、見守っていきたいな、と思う。その物語が今年、どんな結末に終わろうとも、なかなかどうして、いつだって魅力的な物語を紡ぎ出すこのチームに、今年も翻弄されながら。



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