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おっくんの笑顔が「本当に」チームを救う、それは優しい一勝だ【8/6阪神戦◯】

半月ぶりに戻ってきた東京には、ようやく夏が来ていた。暑いねえ、と、言いながら、ビールを飲む。神宮には、夜の風が吹き抜けていく。

どれだけ負けている試合でも、この空気があればなんとなく、救われるような気がしていた。それは、去年も、一昨年も。

だから5回裏、花火が上がるのを見上げながら、「まあ、良いか、負けても。花火は今年もきれいだし」と、私は思った。久々の神宮は、目の前の試合が負けていてもやっぱり、私の好きな場所だった。

だけど今日のヤクルトは、久々に、「花火の時間を過ぎてから」逆転をした。エイオキの内野安打があり(本当になんだったんだ体調不良!)、打てる捕手ムーチョの2ランがあり、たいしは相手のタイムリーエラーを呼び込んだ。(エラーは呼び込むものである)

そして、2点差で迎えた9回表の無死満塁の大ピンチを、今日は守備で乗り切った。おっくんは、素晴らしい守備を見せてくれた。

おっくんは、キャンプでも、練習でも、いつも声を張り上げている。表情豊かに、チームの雰囲気をよくしてくれる。それはファンにとっても、とても大きな存在だ。ひどく負けた翌日に、にこにこ練習しているおっくんを見ると、なんだか救われたような気持ちになる。

でも今日みたいな試合を見ていると、優しさは強さだ、と、改めて思う。マクガフのピンチに真っ先に声をかけに行き、穏やかな笑顔で励ましたおっくんが、そのあとマクガフのピンチを救った。おっくんとマクガフは、とても良い笑顔でうなずきあった。

ピンチを迎えたマクガフにしても、こんちゃんからは「性格がいいんでほっとけないんですよ。困っていたら、助けてあげたくなるんです」と言われ、ムーチョからは「僕が見てきた外国人選手の中でも一番優しいなって思います。この前も山田哲人の誕生日にプレゼントを買ってきたり、なかなかそこまでできないですよ」と言われるくらいの、ナイスガイだ。

そしてもはや言うまでもなく、今日ようやく勝ちがついたブキャナンだって、最高のナイスガイだ。(マクガフとブキャナンは私や子どもたちもとても親切にしてもらったことがある)

世界は善意だけでできているわけでもないし、ソラーテはホームランを打ってくるし、代打の鳥谷さんはいつだって怖い。相手は相手の物語を抱えて全力で向かってくる。そして、チームの中にだっていつも競争がある。おっくんのショートというポジションは、もちろん確立されたものじゃない。

だからもちろん、厳しい心がないと、その世界では生き延びていけない。

だけど私はその世界でもなお、優しさを持つ選手たちがやっぱり好きだ。あらゆる感情がもちろんあるだろう中で、それでもチームを鼓舞し続けるおっくんの笑顔や、てっぱちの1000本安打も誕生日までも祝ってくれちゃうマクガフの心根の優しさが、とても好きだ。

そしてそういう人たちが、活躍できるヤクルトというチームが好きだ。厳しい世界で、お人好しみたいに戦い続けるこのチームが好きなのだ。

「厳しい心を持たずに生きのびてはいけない。優しくなれないようなら、生きるに値しない」と、『プレイバック』の中でフィリップ・マーロウは言う。その通りだよな、と、今日のヤクルトを見ながら私は思う。

こういう一勝は、いつだって心に染み入るのだ。それはとてもとても、優しい一勝だ。


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